QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

ハラスメント防止と組織~より良い部下とのコミュニケーションを行うには~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

20/03/19

今日はコミュニケーションの観点から、パワーハラスメントの防止策について考えていきたいと思います。パワーハラスメント対策の法制化がなされ、職場におけるパワーハラスメント防止策を講じることが、事業主の義務となりました。部下を持つ実務家の皆さんにとっては、自らの行動や指導がハラスメントにならない、あるいは誤解を生じさせないために、部下とのコミュニケーションにより一層気を配るシーンも増えるのではないかと思います。そこで今日は、より良い部下とのコミュニケーションを行うには、どのような視点が必要かについてお話したいと思います。

先日、私は部下とのコミュニケーションに悩んでいると、友人から相談を受けました。友人曰く、新人の部下を指導しているが、自分の気持ちが伝わらないらしいのです。話を詳しく聞くと、自身の経験を基に何度も社会人として大切にすべき様々なことを教えているが、全くもって消極的な対応しか見せないそうです。彼は彼なりに工夫して、自分の過去の経験や先輩から言われたセリフ、または得心したことなどを書き出して、わざわざ指導ノートまで作り、沢山の時間をかけて説明したにも関わらず、説明していることの重要性が伝わっていないというものでした。このような経験は皆さんにもあるかと思います。自分が若い時にはこんなに丁寧な説明はなかった、こんなに説明したのにと、非常に嘆いている様子でした。

この友人の悩んでいる気持ちに対して、察するところはありますが、コミュニケーション、または、コミュニケーション学の立場からすれば、これはコミュニケーションの典型的な失敗例の一つということが出来ると思います。どこが失敗なのかと言うと、彼の中には「自分の伝えたいことの意味や内容」が糸電話を通るように、そのまま聞き手に届くという想定がある点に失敗があると思います。簡単に言えば、彼にとって「先輩から言われてためになったこと」「得心した言葉」が、彼の思う内容やイメージ通りに聞き手に伝わるという暗黙の想定があるのです。しかし実際のコミュニケーションは、自分の言葉が思った通りに伝わるということはありません。

近年のコミュニケーションに関する研究では、同じモノや同じ言葉、振る舞いなどを聞いても、聞き手が異なれば違う印象や内容を感じ取ってしまうことが指摘されています。時には、話し手が意図もしない、考えもしないような意味や内容が、聞き手によって付加されることすらあると言われています。これは、自分の過去の経験や学習を基に、我々がこの世界のモノや言葉に対する意味を判断するからと説明出来ます。同じモノを見ているのにも関わらず、学習や経験によって意味が異なるなんて、少し不思議に思う方もいるかもしれません。ただし、身近な日常生活においては、このような経験があることは決して少なくありません。

私の息子の例ですが、私の息子が小さい時に、一緒に動物のDVDを観ていたことがありました。息子は動物の中で、「犬(ワンワン)」「猫(ニャーニャー)」と呼んで、学習して認識していました。ですので、動物のDVDを観ながら犬が出てくればワンワンと指差し、猫が出てくればニャーニャーと指差し、とても嬉しそうにテレビを観ていました。このDVDが中ごろに差し掛かった時、犬と猫のコーナーが終わり、チンパンジーやゴリラを映すコーナーにかわりました。犬と猫しか知らない息子は、突然出てきた初めての動物に非常に戸惑っていました。息子は小さな目をまん丸にしながら、凄く長く考えた後に、チンパンジーやゴリラをどう判断したかというと、彼はおもむろに指を差して「パパ」と言うわけです。つまり、彼の経験や学習の中で、チンパンジーやゴリラに最も似た存在はパパ、要するに父である私であり、同じ映像を観ているのにも関わらず、DVDの中の動物、ローランドゴリラだったのですが、彼の中ではパパという全く異なる意味付けがなされたということです。これは映像であり、小さい子供の事例ですが、言葉の意味付けでも同じような現象はよくあります。例えば、「頑張れ」というセリフが、人によっては励ましの言葉であっても、他の人によってはプレッシャーの言葉となってしまうことがあります。この違いは恐らく、聞いた人が過去どのような経験やシーンの中で頑張れという言葉を掛けられたか、この経験の違いによって生じるものだと考えられます。

近年のコミュニケーション研究では、コミュニケーションの意味と内容は、話し手と聞き手が双方で調整しながら作り上げるものだと言われています。従って、より良いコミュニケーションを行うためには、相手の仕草、表情、時には双方に質問をし合いながらコミュニケーションし、両者が共同して、協力し合って、共通理解を構築していくという行為が非常に重要になると言われています。ここで強調したいのは、「双方」ということです。聞き手も相手の真意を汲み取る努力をしなければならないということです。この双方の努力があってこそ、より良いコミュニケーションが生まれると思います。

今日のまとめ:
パワーハラスメントを防止するためには、上司と部下のより良いコミュニケーションが大切になります。より良いコミュニケーションを行うためには、相手の仕草、表情、時には双方が質問を掛け合いながらコミュニケーションし、聞き手と話し手の両方つまり、上司と部下が共同して共通理解を作り上げる必要があると言えます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ