QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タグ社会心理学・組織心理学

感覚遮断実験

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

20/03/25

今日は、「感覚遮断実験」についてお話します。
「感覚遮断実験」とはその名の通り、視覚や聴覚といった感覚を遮断してしまう実験になります。

多くの職場では、働いている人、一人一人に部屋が割り当てられているのではなく、おそらく広いスペースに沢山の椅子と机が並べられていて、職場の人達と並んで作業するといったスタイルが多いのではないかと思います。そういった職場の環境では、すぐ近くに誰かがいるため、分からないことが出てきた時にすぐ誰かに尋ねることが出来たり、働く人達の仕事に対する満足感が高まったり、職場の環境としての長所が沢山あると思います。

その一方で、他の人達の会話や電話の音といった雑音を騒音と感じて仕事に集中出来ないといった短所もそれなりにあると思います。大学の先生の作業スペースは、多くの場合個室になっており、その研究室にこもって仕事や研究に集中される先生が多いわけですけれども、先生達の中には「作業をするには個室がいいよね」という反面、「個室だと他の先生達とのやり取りが減るから寂しい」、「一人部屋にこもっていると音が無くて落ち着かない」という声を聞く事もあります。

どういった職場スタイルで仕事をするかについては、一長一短があると思いますが、私達人間の感覚というのは、意識的にも無意識的にも仕事をする中で、または日常生活の中でも大事なものになっています。今日はそういった感覚を遮断してしまうと、人の体にどんな影響が出てしまうのかというのを実験した「感覚遮断実験」をご紹介します。

「感覚遮断実験」は、1950年代にカナダの大学で行われた健康な男子大学生を対象とした実験です。すこし過酷な実験なため、健康な方が対象でないと大変なことになってます。実験室の中に設置してあるベッドでただひたすら寝るという実験でした。ずっと寝てるだけでいいアルバイト料が貰えるということで大学生にとってはいいお仕事で恐らく実験参加の募集をした時には人気があったのではないかと思います。一見良いアルバイトではありますが、実験参加者は健康な人に限定されており、大変な実験になっています。

まず、実験室は半防音室で、空調の音だけが聞こえる状態で過ごしてもらいます。そして、実験に参加した男子大学生は、実験中はベッドで寝て過ごすわけですが、その間は半透明のゴーグルを付けるように指示されます。半透明のゴーグルを付けることによって、明るい/暗いの違いは分かりますが、物の形などはハッキリとは分からない状態となっていました。また、手袋をはめて腕は長い筒で肘ぐらいまで覆われていました。そのため何かに触ったり、爪や指を弄ったりすることが出来ません。更に実験中は、食事やトイレの要求は出来ましたが、時間の確認や人との会話は禁止されました。このような、音の少ない部屋で目を覆われて、手も動かない状態でご飯やトイレは出来るけれども、今何時なのか等知ることも出来ず、人との会話も出来ない状態で、人はただひたすらどこまで寝ていられるのかということを実験したのです。

どのくらい状況に耐えられると思いますか。

実験の結果、状況に耐えられたのは2、3日だったそうです。実験に参加した学生達の報告によると、実験が始まってから最初の内は、自分の趣味のことなど割と楽しいことを考えていたそうですが、そのうちだんだんと集中力が無くなっていきイライラするようになったそうです。落ち着かない状態になってしまったため、腕にはめた筒を打ち付け合ったり、インターホーン越しに実験者と会話をしたがったり、何かしらの刺激を求める行動をするようになっていったそうです。その他にも脳波を測定していたのですが、実験参加者は実験が進むにつれて、半ば朦朧とした状態になり、意識水準の低下が見られたそうです。あと、幻覚を体験するようにもなっていたそうです。幻覚についてはどんな幻覚を見たのかをスケッチさせてみたところ、割と単純なものだと光の点や線が見えたと言ってスケッチする人もいれば、幽体離脱をしているような状態のスケッチをする人もいたそうです。

日頃、わたしたちはいろんな刺激を受けて生活をしたり仕事をしたりしている中で、時々静かな場所に行きたいとか、落ち着いた場所を求めたりすることもあります。沢山の刺激から離れることは大事ですが、刺激が何もない状態がずっと続いてしまうと、それはそれで心と体に不調をきたすのだというのがこの感覚遮断実験から分かりました。

では、今日のまとめです。
私達は、外の色んな刺激を受けながら生活をしています。適度な刺激を受けることで、私達の脳や心や体は正常な状態を維持していくことが出来ます。刺激が多すぎると私達は穏やかな環境を求めるようになります。しかし反対に刺激が無さすぎるというのも困りものなのです。今日は、「感覚遮断実験」についてお話しました。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ