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コンプライアンス重視の組織を作るのは難しい①~組織変革の視点から~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

20/03/05

コンプライアンス重視の組織を作るのは大変難しいということを、組織変革という視点から話していきたいと思います。

昨今、企業不祥事に対する社会的な関心が増え始め、企業不祥事を防止するためにコンプライアンス教育やその制度作りをしている企業は大変多いです。このような活動を通じてコンプライアンス重視の組織を作りたいという企業は増えましたが、やはり組織はなかなか変わらないという話もよく聞くようになりました。今回から複数回に渡って、そもそも組織を変えるにはどうしたらよいか、つまり組織変革のマネジメントについて考えていきたいと思います。

今日はまず変革の前の段階で、組織は本質的に変わりにくいというテーマでお話していきたいと思います。組織の変革は長年研究されていますが、変わりにくいというのは1つの統一した見解のようです。そのメカニズムについて少し話します。

皆さんも経験則であると思いますが、組織変革が難しいということは学問においても様々に指摘されています。例えば経営学の視点から話しますと、組織がある一定の方向に進んでいる場合、その方向性を変えることはなかなか難しいということが明らかになっています。物理学の分野においては、このようにどこかの方向に運動している物体は、外から力を加えない限り、その状態を続けようという現象のことを慣性と言います。「慣性の法則」というように、組織も同じように、ある状態を続けようとする慣性の法則みたいなものが働きます。これは経営学においては組織の慣性の法則ということで、「組織慣性力」という形で定義付けられています。

例えば会社や学生の皆さんのサークル活動やアルバイト先でもいいのですが、「ここは絶対に変えなければ、会社や部活がやばい」と強く思って行動しても、例えば「○○さんがOKと言わない限りダメでしょう」とか「今まで続いているルールとかやり方をあえて変えるのは混乱するから止めよう」など、どういうふうに変革するかではなく、そもそも変革すること自体(組織の何かの状態を変えること自体)に対して反対が生じてしまうという経験があるのではないでしょうか。まさにこれこそが組織慣性力の現れと指摘することができます。聞いてみると「ああ!」と思う人は多いと思います。

では組織慣性はなぜできるかという話です。組織慣性を作る要素はよく研究されており、様々にあると言われています。例えばその1つの大きな要因としては既得権益者の存在が挙げられます。今の組織構造で利益を得ている人々にとっては、組織構造そのものが自分達の利益に直結するわけです。従ってそれを変更しようものならば、それは利益を失うことに直結してしまいます。そうなると彼らは組織構造の変化に対して非常に頑強に抵抗するわけです。実際に多くの組織変革の事例を見てみると、既得権益者の存在というのは組織を変える大きな壁になることが少なくありません。特に失敗事例においては、こういう既得権益を持っている人々が反対して変革ができず、結果、組織自体、企業でいうならば倒産してしまう例も少なくありません。

よく企業の事例では、過去の成功のレガシーが捨てられないというのもその1つになるなというふうに思います。しかし組織変革の阻害要因は、今の既得権益者のみに限りません。例えば組織が長年の経験で培った組織特有のものの見方ですね。世界のとらえ方や価値観すらも時には阻害要因となってしまいます。組織というのはそもそも個人と一緒で、様々な経験と学習を通じて特有のものの見方や価値観を形成していきます。企業の中に存在する成功の法則や固定化された概念、例えば技術的に良いものは必ず顧客にうけます、といったことは、まさにそれにあたるかと思います。確かにこれらのものの見方や価値観が企業の置かれた環境に対して非常に合っていれば、それは企業にとって大きな強みとなるわけです。

ただし、企業の置かれた環境というのは常に変化します。ある時期に適合的であったものの見方や価値観が、時代と共に変化した新しい環境では不適合となる場合は少なくありません。かつてはこのやり方でお客さんが来たのに、と悩んでいるお店のインタビューなどがありますが、まさにこれは過去の成功の法則が今の社会に通じなくなってしまった1つの現象と言えます。このような場合は、組織は自らのものの見方や価値観を変化させなければなりませんが、これが難しいのは、過去の経験と学習の積み重ねからできたものというのを人間はなかなか捨てられません。そうなると過去の成功経験・学習の結果が仇となってしまい、企業が組織を変えられずに衰退していくストーリーは非常に多いです。

例えば新しい技術が生まれてきても、過去の自分達を支えてくれた技術に固執してしまい、結局市場を失ってしまうという例はイノベーターのジレンマなどでよく触れられていますが、この例ではないかと私は考えます。

今日のまとめ:
組織というものは、変化させようと思っても、現状を続けよう、今のままでいようとする組織慣性力が働いてしまいます。もしコンプライアンスが根付いた文化に変えたいと願う場合は、まずこのような現状を続けようとする力を理解し、これを変えるステップが必要となります。明日はこの組織の慣性力を加味して、組織の変革マネジメントとしてどういうものが考えられるかについて話をしていきたいと思います。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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