QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タグイノベーションマネジメント

ISO56002

永田晃也 技術経営、科学技術政策

20/03/17

 今回は、「ISO56002」についてお話してみたいと思います。ISOと書いてアイソウと読んでいますが、これがスイスのジュネーブに本部を置く民間法人であるInternational Organization for Standardization―国際標準化機構が作成している国際規格を意味していることはよく知られています。ISOの国際規格が広く知られるようになったきっかけは、品質マネジメントシステムの国際規格として1987年から発行されはじめたISO9000シリーズが世界的な注目を集めて成功したことや、その後も環境マネジメントシステムの国際規格として1996年から発行されはじめたISO14000シリーズが普及したことにあると言えるでしょう。今日ご紹介するISO56002は、イノベーション・マネジメントシステムの国際規格として作成されたISO56000シリーズのうち、その中心となるガイダンス規格として2019年7月に発行されたものです。
 その内容に触れる前に、国際標準とか国際規格といった言葉について整理しておきたいと思います。この点については『特許研究』の2008年3月号に、当時、日本規格協会の理事であった塩沢文朗さんという方が「標準をめぐる国際動向」という論文を寄稿しており、その中で概念的な整理が行われています。それによると、まずISOなどでは「標準化」について「実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通に、かつ、繰り返して使用するための記述事項を確立する活動」と定義しているということです。そして、この標準化を行った結果、生まれた取り決めが「標準」であり、これを文書化したものが「規格」であると整理しています。また、規格には、その遵守が法令等によって義務付けられている「強制規格」と、義務付けられていない「任意規格」があるとされています。
 ところで、こうした標準化の活動を各国が独自に行うと、国ごとに異なる規格が生み出され、国際的な取引の障害になる虞があります。このため、WTO(世界貿易機関)が設立された際、その設立協定の付属書として「貿易の技術的障害に関する協定」(TBT協定)という標準化に関する協定が1995年に発効しました。これによって各国の国内規格は国際規格との整合性を図ることになりました。また、同じく付属書に含まれる協定として1996年に発効した「政府調達に関する協定」では、各国の政府が調達基準を設定する際に国際規格を基礎とすることが定められました。これらの協定が存在することから、企業は国際規格に配慮せざるを得ない訳です。
 マネジメントシステムの国際規格は任意規格であって、それを遵守することが法令によって義務付けられている訳ではありません。ただ、品質ISOや環境ISOのように、企業の活動が国際規格に適合しているかどうかを認証機関が審査し、適合していれば登録証を発行するという認証制度が設置され、実際に多くの企業が認証を受けるようになると、認証を受けることが社会的信頼の獲得につながるようになってきます。
 さて、イノベーション・マネジメントシステムの国際規格ですが、そのISOでの設計には2013年から59カ国の組織が参加したと言われています。日本からは一般社団法人のJapan Innovation Network(JIN)が代表として参加したそうです。昨年7月に発行されたガイダンス規格ISO56002の日本語版は、日本規格協会グループのWEBサイトで販売されています。
 詳しく内容を解説することはできませんが、全体の構成としては、まず組織的な運用体制、リーダーシップ、計画、支援体制のあり方などについて説明した上で、この計画-PlanにはじまるPDCAのサイクルに沿った記述がなされています。Doに当たるイノベーション活動は、機会の設定、コンセプトの創造、コンセプトの検証、ソリューションの開発、ソリューションの導入という5段階に亘るものとされています。Checkはパフォーマンス評価、Actは改善です。
 私個人の感想を申し上げれば、ここに書かれていることは常識的で、計画的にイノベーションに取組もうとしている企業にとって新規の課題を提起するものとは思えませんでした。もともとイノベーションという活動は規格外のことを意味しているのですから、そのプロセスにおいて「繰り返し」行うべき標準的な活動を抽出すれば、それは常識の域を出ないものにならざるを得ないと思います。前述の塩沢論文によると、日本ではマネジメントシステム規格が無用な認証制度を増殖させる可能性があるとして反対する声も大きいということですから、この国際規格の意義や普及について私は懐疑的です。

今回のまとめ: ISO56002とは、イノベーション・マネジメントシステムの国際規格です。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ