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幸福・成功のための哲学33幸福の方程式2

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

20/03/26

 松下幸之助・稲盛和夫の哲学においては、「幸福」や「成功」が中心的なものとなっている。
 前者の幸福の例でいえば、例えば、松下幸之助では、「繁栄による平和と幸福」(PHP)の研究のために、周知のように、「PHP研究所」を設立し、様々な活動を行っている。ここでは、幸福とともに繁栄と平和とが掲げられている。他方、稲盛和夫では、京セラの経営理念として、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」として、物心両面の幸福を中心的なものとして考えている。

1 幸福と成功の方程式―続きー
(1) 幸福の方程式
 これまで説明してきた心の法則を前提として、どうしたら幸せな人生が送れるのかについて、日常的な実践上の指針として、心の法則を方程式の形で簡潔に再構成した「幸福の方程式」は、図のように表すことができる。

図 幸福の方程式
happiness33-1.png

 この式では、幸せになるために、この方程式それ自体が心の法則のうち最重要で包括的な根本法則である「因果律」を示している。すなわち、まず因として、「考え方」、「積極性」と「実践力」の三つを示している。次に縁として、「縁」を挙げている。そして、これらの因と縁との相互作用により、果としての幸せが得られる、ということを示している。なお、それぞれの構成要素の説明は、以下で詳しく行っている。

(2) 考え方
 幸福の方程式におけるこの「考え方」に関連する主な心の法則は、前述の一切唯心造、因果律、慈愛、本心良心及び空の法則などである。
① 考え方の重要性と一切唯心造・因果律
② 考え方の動機としての慈愛
③ 考え方の判断基準としての本心良心 ***ここまで前回***
④ 考え方と六自の精神・六思力・三断力
 この場合、幸せで成功した人生を送るために、物事を考えるときに、「自由、自主、自立、自律、自尊及び自燈」という自己が持つべき六つの精神(「六自の精神」)が必要である。

図 考え方(六自の精神と六思力)・自己リーダーシップと三断力
happiness33-2.png

 そして、これに加えて、図のように、正しい考え方についての六つの視点として、前述のように、「長期的に、全体的に、多面的に、本質的に、倫理的にかつ無我的に考える力」である「六思力」が大切である。さらに、これらを前提として、現実の社会では、前述の実践力としての「三断力」(判断力・決断力・断行力)が必要となる。そして、物事の本質を正しく見抜き、正しく適切な方向性を導くために、常日頃から六思力を基礎とする直観力を磨き続けることが非常に大切である。

⑤ 自己実現と自己完成
 幸せな人生を送るため、どのような「欲求の取扱」がよいのであろうか。
 これに関して、大きく西洋的な「自己実現型の考え方」と東洋的な「自己完成型の考え方」の二つが考えられる。なお、私達が持つ欲求は、生命力の現れであり、それ自体は、善でも悪でもない。その「欲求の満足のさせ方」が問題なのである。すなわち、社会全体の繁栄や平和への貢献などのためになれば善、反対にそうでない場合には悪となる。それゆえ、社会貢献となるような大きな欲求を持つことが大切であろう。このように、欲求の充足を自由にコントロールできるように、自己の精神力を高め、自分の利害のためだけではなく、より広く社会のためにもなるような欲求充足の仕方をしたいものである。
 前者の「自己実現型の考え方」は、「マズローの欲求5段階説」として有名なものである。そこでは、一番基礎的な食事や睡眠などの自己の「生理的欲求」から始まって、最高のレベルの「自己実現」で終わるものであり、わが国を含めて、西洋などで主流の考え方である。これは、西洋的な物質文明で重視される社会的な地位、名誉、財産など自我すなわち(「自我的理性の欲求」である)自己の利害を中心的なものと考え、必ずしも無我的・利他的な社会貢献などがその中心的・中核的なものとして含まれているわけではない。例えば、トランプ大統領も自己実現型の考え方であるといってもよい。
 これに対して、東洋的には、昔から「自己完成型の考え方」がある。これは、精神文明で重視されるように、自己を中心として考える自己実現の上に、さらに無我的で利他的な考え方を基礎とする「自己完成」ないし「自己超越」・「自己拡大」を設定するものである。そこでは、自己のためという利己主義的な考えというよりは、無我的理性の欲求である利他主義的な考えに基づき、世のため人のためという一層の人格の向上が見られる。言い換えれば、それは、明確に自己の利害を超えて、慈愛や利他という他者を思いやる精神に基づき社会に貢献することを欲求とするものである。すなわち、簡単にいえば、図のように、「自己の進化向上による幸福のための自己実現と社会貢献を常に同時に達成していく状態が自己完成である」。

図 自己実現と自己完成
happiness33-3.png

 例えば、利他をビジネスの基本と考える稲盛和夫は、自己完成の考え方である。前述の本心良心を中心として考えた場合には、後者の自己完成型の考え方と整合性がある。社会貢献を考え、行動すれば、人類の進化向上がなされ、お互いに幸せで、安定した平和な社会が実現できる。

⑥ 労働観と自己完成
 人間の欲求と関連して、どのような「労働観」があり、幸せになるために、どれが望ましいのであろうか。これに関して、一般的に、図のように、三つの考え方がある。

図 労働観と自己完成
happiness33-4.png

㋐ 労働対価説
 「労働対価説」とは、どちらかといえば、唯物論的で西洋的な考え方で、本業としての労働は、経営者と従業員ないし資本家と労働者というような関係を前提として、トップ・ダウン型のもので、本来辛いものであり、生活の糧を得るための職業として、「嫌いな仕事」をいやいやながら使われて働いているという「やらされ感」のある考え方である。すなわち、対価としての給料を得るために働くという利己的なものである。このように、この考え方は、どちらかといえば、お金を最高価値基準とし、「お金に使われている働き方」である。この観点からは、対価のために半強制的に行わざるをえない労働は苦痛であり、したがって労働時間は短いほど、そして給料は高いほど良いというものである(「労働苦痛説」)。この考え方の下では、一般に自主的、積極的に仕事をせず、消極的に対価(給料)に見合った最低限のことをすればよいと考えるので、自己の最大限の能力の発揮は見られないし、責任感や使命感もそれほど強くはない。そして、これは、西洋を中心としてわが国においてもよくみられる考え方である。この立場に立った場合には、多くの時間働かなくてはならない人生は地獄のようなものであろう。

㋑ 労働職人説
 「労働職人説」とは、どちらかといえば、東洋的な考え方で、本業としての労働は、トップ・ダウン型とボトム・アップ型との中間的なもので、例えば、陶工、大工などの職人や専門職の人などによく見られるもので、確かに生活の糧を得るための職業として働くという側面はあるものの、同時に仕事は善であり、自己の仕事を作品と考え、良い仕事をすることに、自己の誇りを持ちながら働くという自らの意思や自主性があり、積極性、「やり甲斐」や「やる気」のある考え方である。そこでは、仕事において良い結果を出すことや責任を持つことが重視される。ここでは、自らやる気があるので、仕事に対する創意工夫が見られ、仕事と共に自らの技能や人間としての成長も同時に感じられるものである。
 この観点からすれば、労働は、確かに一面において辛い側面はあるが、それをあまり苦痛とは考えず、むしろ自発的に良い仕事をすることに喜びや満足を見出す側面も同時に持ち合わせている。それゆえ、良い仕事をするために、労働時間は短いほど、また給料は高いほど良いとは必ずしも考えないものであり、仕事による技能の向上や自己の人間性も成長している、と考えるものである。このような、どちらかというと東洋的な考え方を持つ人もかなりいる。これは、自己実現の考え方と整合的な考え方である。この考え方の下では、一般に自主的に仕事をしているので、それなりの自己の能力の発揮がなされている。

㋒ 労働使命説
 「労働使命説」とは、本業としての労働は、基本的にボトム・アップ型のもので、自己の信念や哲学として社会をより良くするために、「社会貢献や社会を繁栄させることが自分の夢や使命である」と自覚し、その仕事が好きで、奉仕の心で働くという人の働き方である。そして、自己の仕事を、社会をより良くするという社会貢献のために、必要とされる自己に与えられた使命や生き甲斐(「天職」)と考えて、働くという利他的なものである。簡単にいえば、例えば、マザー・テレサや稲盛和夫のように、仕事とは社会に役に立つことであり、それを通して、人を喜ばせることが自分の夢や使命であるという「天命追求型」の生き方である。この観点からすれば、労働は辛い側面も多いが、笑顔で迎えられ、喜ばれ、心の交流がなされ、共生しているという自他一如的な状態にある自分に与えられた使命を果たすことに、心の安定と幸せをそこに見出すものである(「労働快楽説」)。
 それゆえ、これは、仕事を、お金を得るための職業としてではなく、自己の夢として、自ら燃えながら、魂を込めて行うものであり、自己の使命を主体的に果たすという信念に基づくものであるために、労働時間の長短や報酬の高低をあまり問わない。時には、例えば、「ねむの木学園」の宮城まり子や「しいのみ学園」の曻地三郎などのように、自分の夢を実現するために、私財を投げ打って、それを行うことも珍しくはない。つまり、これは、お金に使われるのではなく、反対に「お金を使う働き方」である。これは、前述のように、社会貢献という利他的なものであり、自己完成の考え方と整合的である。この考え方の下では、やり甲斐のある仕事を、使命感を持って行っており、モチベーションが高く、「やる気」があるので、勤勉で誠実な自己の最大限の能力が継続的に発揮され、人間としてさらに成長がなされる。と同時に、もし他者との協働である場合には、それぞれの能力が生かされ、シナジーが発揮され、社会の繁栄にも貢献することとなる。このように、社会に貢献できる人の人生は、とても尊く、自己の進化向上によって幸せにもなれるものである。

2 むすび
 成功・幸福のための哲学においては、幸福に生きるために、「幸福の方程式」を活用することが大切である。

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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