QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

幸福・成功のための哲学31空の哲学

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

20/03/03

 松下幸之助・稲盛和夫の哲学においては、「幸福」や「成功」が中心的なものとなっている。
 前者の幸福の例でいえば、例えば、松下幸之助では、「繁栄による平和と幸福」(PHP)の研究のために、周知のように、「PHP研究所」を設立し、様々な活動を行っている。ここでは、幸福とともに繁栄と平和とが掲げられている。他方、稲盛和夫では、京セラの経営理念として、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」として、物心両面の幸福を中心的なものとして考えている。

1 空の法則の意義 -続き-
 心の法則の第10は、「空の法則」である。これは、人生で日常的に経験する苦しみをどのように考え、また、それに対応していけばよいのかを示すものであり、消極的な感情としての苦しみは、例えば、台風のように、縁起の法によって確かに一時的に現象として現れているが、それ自体の実体ないし自性はなく、永続的に存続する性質のものではない、ということである。このように、「現象を空と観る」ということは、概念によってそれを固定的な実体として設定しない、ということである。このことを明確に自覚して、消極的な考え方を捨て、常に積極的に生きることが、幸せや成功をもたらすこととなる。

2 苦境とその対処法 (1) 苦境とその対処法の概要
 それでは、人生における苦境は、どのように「対処」していけばよいのであろうか。
 これに関して、この「苦境の対処法」としては、図表のような方法が考えられる。

図表 苦境の対処法
happiness31-1.png

 すなわち、苦境の対処法として、その苦境などを受容する方法(「受入法」)と拒否する方法(「拒否法」)とがある。通常は、前者の苦境を受け入れることが多い。しかし、後者の苦境を受け入れない方法も考えられる。しかし、この苦境を受け入れない方法は、現実からの逃避であり、通常の生活はなり立たない。この方法は、非現実的であり、現実を直視しそれに対処しようとしないので、結果として幸せにはなれないであろう。
 他方、前者の苦境を受け入れる方法には、さらに次の二つのものがある。第1は、「消極的受入法」すなわち苦境を消極的に受入れ、事実のみならず、心も悩ます、ないし時々心も折れてしまうものである。この方法は、現状に失望し、悩み、消極的な対応しかせず、自信と自尊心を失わせることとなり、幸せにはなれないであろう。他方、第2は、「積極的受入法」すなわち苦境を積極的に受入れ、事実だけは事実として完全に受け入れる(完全受容する)けれども、心は悩ませない、つまり心は折れないようにするものである。そして、このような状況の下においても、未来の視点から「せっかく生じた試練なので、必ず何らかの意味がある」と考え、その試練をより良い未来の自己の成長や進化向上のための学習の機会であると積極的に捉え、未来志向的に将来に向けて、今何ができるのかを冷静に考えて、その対処に最善を尽す方法である。なお、このような状況の下で、将来に不安を感じ、取越苦労をする人は、まだ心に余裕がある人である。すなわち、本当に真剣に現実に対処している人は、ちょうど熊や虎などの猛獣と突然遭遇したときのように、その一瞬に生死を懸けて、真剣に現実に対処する。すなわち、緊急事態に遭遇し、それに真剣に対処しているときは、一般に悩みなどの雑念はなくなる。
 すなわち、この方法は、苦境の時こそ未来志向的に折れない心と夢を持ち、積極的な暗示を活用し、その夢を苦境克服のためのエネルギーに変換し、夢の実現を楽しみとして、その苦境に挑戦し、創意工夫をしながらそれを克服していく努力を継続するものである。そして、苦境のときに夢に向かって忍耐力を持って、出来ることを行う人は、絶望を感じることはない。

(2) 苦境の対処思考
 苦境に陥ったときに、それに上手く対処するために、どのような「思考方法」を取ったらよいのであろうか。

① 複眼思考 まず第1の考え方は、「複眼思考」である。これは、図表のように、現在自分が置かれている状況を常に一歩下がって一段高いところから客観的に見るものである。

図表 単眼思考と複眼思考
happiness31-2.png

 すなわち、これは、現在の自分の不幸や不満などを単眼的に見るのではなく、それと同時に、社会全体として客観的に見た場合に、様々な条件や環境について現在の自分がどの位恵まれているのかを、複眼的に見て、現在の苦境を克服するためのエネルギーに変える方法である。別の表現をすれば、無い方を見るネガティブな見方から、有る方を見るポジティブな見方へ思考の転換を行うことによって、心豊かになり、生きて行くエネルギーを得ていく方法である。つまり、無の世界から有の世界への視点の転換をするものである。このように、実際に生じている事実と自分が感じている現実との違、は、単に視点の違いによるところが大きい。普段私たちは、自我的な自分の利害得失という観点から単眼的にしか事実を見ていないことが多い。
 すなわち、単眼的に見れば、たとえ自分が現在恵まれていない状況である、と考えられる場合でさえ、例えば、東日本大震災を思い浮かべれば理解できるように、これを「複眼的に眺め、逆転の発想」をすれば、自己を取り巻く条件や環境として、現在これだけの状況で済んでおり、まだ見捨てられていないことや生きていること自体、恵まれた状況であることが理解できる。同様に、健康で通常の家に住み、3度の食事ができ、愛する家族や親しい友達がいることなど様々なことで、自分は非常に恵まれており、まだ現在の自分に出来ることがある、ということに心から感謝し、それを、苦境を切り拓くためのエネルギーに変えていくことができる。このような感謝は、前述のように、物を貰ったり、親切をして貰ったときなどに感謝をする不完全感謝に対して、現在自分が置かれている恵まれた条件や環境に対する完全感謝である。この感謝は、満足などと共に、幸せへの片道切符である。このようにあるある精神に基づき、自分が非常に恵まれた環境にいるという自分自身の状況を、複眼思考で意識的に、客観的に眺めることが、どのような状況の下に置かれたとしても、幸せに、そして苦境を克服するためのエネルギーを得、それを「解毒能力」として活用するためには、大切なことである。

② 包摂思考
 第2の考え方は、「包摂思考」である。これは、まず苦境などを含めて、すべての現在自分に与えられた状況は、未来の視点から何か必ず意味があり、すべて学びの対象であり、未来においてより良い自分(自己の進化向上)となるために、せっかく生じたものである。すなわち、この苦境を乗り越えると、人間として1回り大きく成長し、将来においてさらに良い人生が待っているとポジティブに捉え、素直にそれを包摂し、現状を肯定し、常に明るく努力をする、という考え方である。換言すれば、どのような過酷の運命の下においても、心を折らずに、自己の進化向上のために、「今日この瞬間に新たに生まれた」ものと考え、その状況を全面的に受け入れ、希望を持ち続け、生き抜こうとするものである。
 また、これに関して、例えば、進化論的に説明すれば、すべての生物は、「順境のときに退化し、逆境のときに進化する」と一般にいわれている。そして、儒教的にいえば、「窮即変、変即通」(窮すれば即ち変ず、変ずれば即ち通ず:『易経』)ということでもある。つまり、苦境は、見方を変えれば、より良い将来に対する現在の関門であり、自己の大きな進化のチャンスでもある。このように、包摂思考に基づき、苦境にへこまずに、それを肯定し、未来の視点から、それをより良い未来へのチャンスとしてポジティブに捉え、感謝しかつ信念を持って、突破口を切り拓いていくことこそが大切である。
 このような苦境の時には、普段見えない物事の本質や真理が良く理解できるようになる。そして、そのことに関する哲学が完成し、人生に対する覚悟ができる。ここで「覚悟とは、自分の命の使い方にスイッチを入れることである」。これが不動の信念となって、常に工夫を加えながら努力を重ねることによって苦境を乗り越え、運命を切り拓いていける。

5 むすび
 成功・幸福のための哲学においては、苦から解放され、幸福に生きるために、「空の哲学」を活用することが大切である。

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ