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ゴーン逃走と日産・ルノー

村藤功 企業財務 M&A

20/02/17

今日はゴーン逃走と日産・ルノーというお話をしたいと思います。去年の年末に、日産のゴーンさんは関空とトルコを経由して、レバノンに逃げました。楽器箱の中に入っていたとかレバノンにフランスのパスポートを見せたとかで、日本の検察官や裁判官は慌てて保釈を取り消し、15億円を没収しました。15億円は我々庶民にとってはとんでもない金額で、無くしては困る。しかし、その15億円を捨ててでも逃げたという人です。それでICPOの手配書がレバノンに渡されたけれども、レバノンとしては自国民を日本に引き渡すわけにはいかないだろうという事で、どうも日本に帰ってくる見込みはもうありません。

逮捕されたのは随分昔ですよ。一昨年の年末に逮捕されていますから、1年以上も経っているわけです。しかし、1年経って何をしたかと言うと、まだ公判も始まらないのです。今は、公判前整理手続きをやっていた所です。今年の春ぐらいから公判を始めようと言っていたら逃げちゃったのですが、被告人がいない所で刑事裁判をしては駄目という規則があるので、いないって事はもう始まらないと公判前整理手続きもストップになってしまった。

そもそも、何の罪で日本の特捜はゴーンさんを有罪にしようとしたと思います? 金融商品取引法の有価証券報告書虚偽記載2件。それから、特別背任が2件。サウジルートとオマーンルートの2つあったわけですけれども、CEO予備費から山のようにお金をサウジとかオマーンに送ったのです。これは日産の車の販売のために送られたとすると、そんなに悪い話じゃないかもしれません。しかし、どうもオマーンルートでUS$15mm送られた中のYS$5mmぐらいは、ゴーンさんの家族がヨットを買ったりとか、息子が運営しているショーグン・インベストメンツに送られたりしたらしいと検察は見ているようです。

これら4つの犯罪の他に、フランスではベルサイユ宮殿内の大トリアノン宮殿を再婚の披露宴に使ったとか、それから、リオのカーニバルとかカンヌの映画祭へ知人の招待をルノーにさせたとか、それから、オランダの日産ルノーの合弁会社に不正支出させたとかもあります。でも会社のトップって、会社の営業のために色々接待費を使います。どのくらいまでだったらやって良くて、どのくらいまでだったらやってはいけないのでしょうか。リオのカーニバルとかカンヌの映画祭にお客さん招待するぐらいだったらいいのかもしれないけれど、ベルサイユ宮殿で自分の披露宴やっていいかどうかくらいになると三角になってきますよね。そして、オランダの合弁会社から不正支出、これはバツでしょう。

日本の公判で証明しようとしていた犯罪には入ってこないようですが、どうも他にも色々やっているといわれています。やったのかやってないのか色々証明しようと思っていたのが、何一つ証明されない事になって、ゴーンさんはレバノンに行っちゃって自由に日本を非難しているという状況なわけです。日本としては困ったことに、ゴーンさんが日本を非難する内容の一部には、一理あります。弁護士がいないのに取り調べしていいのかというと、日本以外は皆、弁護士つけることになっています。弁護士をつけては駄目という日本は、どうもおかしいと思います。それから、1年も逮捕から経っているのに、まだ公判も始まらなくて凄くプロセスが遅いのは、多分ゴーンさんの言う通りです。だからといって逃げていいかと言うと、もちろんそんなことはありません。逃げてしまったら逃げるが勝ちみたいになってしまうじゃないですか。よく楽器箱に隠れて逃げたなと思うけれども、そんな事できるのだったらGPS付けろとか、X線で保安検査を何でしなかったのだとか、逃げたらちゃんとそれが犯罪と言えるように刑法も改正しなきゃいけないと言って法務省が慌てているみたいです。

そういう事で公判は止まってしまいましたが、ゴーンさんに逃げられちゃった日産とルノーは今どうなっているのでしょうか。日産は、最初は西川社長がゴーンさんの後任になって、指名委員会設置会社にしたわけですけれども、結局ゴーンさんの下で一緒に色々やっていたじゃないかという事で、去年の秋に辞任に追い込まれました。今は、指名委員会が内田さんという新しい社長に引き継いで、内田・グプタ体制に変わりました。ルノーはボロレCEOとミシュランのCEOをやっていたスナール会長が後任になったわけですけれども、ボロレCEOについては結局ゴーンさんの下で働いていたじゃないかとか、あまりルノーの中でも良く言う人はいませんでした。去年の秋、もうボロレも駄目という話になって、今デルボスさんが暫定でやっていて、今年の7月からデメオさんに変わります。デメオさんはフォルクスワーゲン傘下のセアトというスペインの会社でCEOをやっていたイタリア人です。日産でもルノーでもゴーンさんの配下にいた人達が消えちゃって、新しい人に変わったのです。自動車業界はCASE対応で大変だったわけですけど、その間に日産もルノーも業績が大変悪化してしまい、これから何とかして挽回しないといけません。しかし、世界の自動車業界が激変する中で、一体どうやってこれからの競争に勝つのかわからない状況です。

今日のまとめです。去年の年末にゴーンさんが逃げてしまって皆吃驚していたわけですけど、ゴーン問題はどうも明らかにならない内に終わってしまった。一方、日産とルノーのトップから西川さんとボロレ氏が失脚しちゃって、今は新たな内田社長とデルボス氏、7月からデメオ氏が後任になる予定です。ゴーン問題で両者とも相当出遅れたので、これからCASE対応で相当頑張らないとやっていけない状況になっています。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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