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評価の難しさ②

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/02/04

前回は、なぜ「評価」は難しいのかということで、評価の難しさに触れ、さらに「認知バイアス」というヒトの脳のクセが色々な影響を与える、とご説明しました。本日はこの「認知バイアス」の続きをお話していこうと思います。

前回は、評価をするにあたって、どんな順番でメンバーの仕事ぶりを検討するのかという「比較の順番」が影響を与えることをご説明しました。評価を行う側に影響を与える認知バイアスには、他にも「想起印象のバイアス」というものがあります。「想起」というのは「想い起こす」という意味です。専門用語では、「利用可能性ヒューリスティクス」と言います。人はすぐに思い出しやすい、つまり、脳が即利用可能な記憶ほど、頻度や確率を高く見積もる傾向があります。しかもそれだけではなく、その情報が重要な事柄に関するものであると思いこむ性質まであるのです。言いかえると、「思い出しやすいものほど、頻度や確率、重要性を高く見積もりがちである」ということです。

これを分かりやすく示すものとして、1つクイズをお出しします。歯科医院、コンビニエンスストア、そして美容室の3つのうち、日本国内に最も多く存在するのはどれでしょうか。

ちょっと考えてみてください。

2019年9月の時点で調べたところ、歯科医院の数は全国で6万軒弱、コンビニエンスストアは5万5千店程です。美容室はなんと全国で24万件以上あり、圧倒的に美容室が多いです。ちなみに、福岡の大名地区は、1平米あたりの美容室集積数が全国で飛びぬけて1位なんだそうです。

皆さんのお答えはどうだったでしょうか。このクイズを出されると、多くの方が「コンビニエンスストア」とお答えになります。というのは、毎日の生活の中で利用する回数が圧倒的に多いからです。生活動線を思い出した時に、あそこにもここにもコンビニがある、と。逆にコンビニエンスストアよりも歯医者さんに多く通っているという人はほとんどいないでしょう。美容室も同じく、ということで、コンビニエンスストアの方が思い起こしやすいということになります。このように思い出しやすい情報について、頻度や確率を高く見積もるというのはこのパターンのことです。

この想起印象のバイアスが評価に影響するのは、ただ数や確率を多く見積もるというだけではなく、ヒトは思い出しやすい情報は「重要性が高いものでもある」と勘違いしがちなためです。

より具体的には、ヒトは自分が普段から接する機会が多いメンバーを高く評価しがちになります。逆に目立たないけれども、よくよくデータを吟味してみるとチーム全体に大きな貢献をしている、といったタイプのメンバーは、よほど評価する側が意識をしていないと正しく評価してもらえないことになります。あるいは、会議の時間を間違えるとか、メールの返信がなかなか遅いなどちょこちょこ細かいミスをするけれど、口は達者で人前でしゃべるのは得意なので、ここ一番のプレゼンテーションではいきいきとして目立つ仕事をする、そういったパターンの場合は、彼女あるいは彼のミスによって普段迷惑をかけられている同僚からすると、不相応に思われるほど高い評価を受けたりします。なぜかというと、これも想起印象のバイアス、すなわち利用可能性ヒューリスティクスの影響で、評価者である上司は、細かいミスや日常のやり取りの直接的な影響はあまり受けず、この人をどれぐらいの評価にしようか、という時には目立つところというのがまず想起されますので、その印象に引きずられるからです。

しかし、言うまでもなく、大きく目立つ仕事だけが本当に組織にとって「良い仕事」であるとは限りません。また、仮にあるメンバーが「大きな仕事」を成し遂げたようにみえたとしても、実は彼女あるいは彼がその業績を挙げられたのは、そのための下準備やサポートを別のメンバーがやってくれていたおかげ、ということも多々あります。

従って、評価をする立場にある人は、ヒトは思い出しやすいものについ引きずられてしまう、という認知バイアス、利用可能性ヒューリスティクスの存在をしっかり理解をして、自分がパッと思い出せるような業績や成果には偏りがあるはずだという事をつねに意識する必要があります。また、その裏返しとして、いわゆる「縁の下の力持ち」的な役回りのメンバーについては、特に注意してその人の貢献を掘り下げるようにすべきでしょう。

そうしなければ、前回お話したように、最終的には組織の在り方に影響が及びます。評価する立場にある人が利用可能性ヒューリスティクスに対して無頓着な組織では、俗な言い方をすると「大声で自分の手柄をふれまわり、上司の覚えめでたい人」が高く評価され、逆に、目立つ成果には繋がりにくいけれど、それによってチーム全体が大きな利益を受けるといった類の、まさに縁の下の力持ちの仕事をしてくれる人が不当に低い評価をされがちになります。そのような組織では前者のタイプの人達が存在感を強める一方で、目立たないけれども実はその人がチームの要といったタイプ---昔のサッカー日本男子代表でいう、森保一選手(現・サッカー日本男子代表監督)のような、非常に目立たないけれども、彼がいることでチーム全体によくボールが回ることで高い評価を受けていました---こういったタイプの仕事人が、その仕事ぶりに見合う評価を得られず、場合によってはいなくなってしまうかもしれません。

今日のまとめ:
ヒトには思い出しやすい情報の頻度や確率、更には重要性を高く見積もる「利用可能性ヒューリスティクス」というバイアスがあります。これによって、目立つ成果を上げた人が高く評価をされがちな一方で、「縁の下の力持ち」的な役回りの人はその貢献が見過ごされやすくなるので、評価をする立場にある人は特に注意が必要です。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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