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BtoBビジネスで飛躍するキーエンスの戦略とは何か

岩下仁 マーケティング

20/02/26

今日はキーエンスという、近頃注目を集めているBtoB企業についてお話したいと思います。以前にも少しお話をしましたが、BtoB企業とはBusiness to Business、つまりターゲットが一般消費者ではなく企業相手である企業のことです。キーエンスは、そのBtoB企業の代表格の1つです。大阪市に本社を構えセンサーを開発する会社ですが、優れたマーケティング戦略でなんと7期連続で最高益を達成しているのです。ターゲットが一般消費者ではないということで、私たち一般消費者には馴染みがないのかもしれません。しかし、キーエンスは非常に驚異的な利益率を実現しており、今日はその秘密について話を進めていきたいと思います。

キーエンスのビジネスの特徴はファブレス、つまり自社で工場を持たず製造を他社に委託している点が挙げられます。工場を保有していませんので無駄な固定費がかからず、営業利益率はなんと54%、売上高原価率は18%です。こういった驚異的な利益率を誇るため、年収は35歳でなんと平均2088万円となっています。利益率が高いから年収もそれだけ高いというびっくりな数字ですが、キーエンスがこういうビジネスを実現出来ている理由は、単にファブレスを行っているだけではなくて、4つのユニークな秘密があるからです。

秘密の1つ目はデータベースとマーケティングです。キーマン情報や現場の悩みを数十年かけて蓄積しまして、それを元に営業と製品開発という2つの戦略を絶えず更新しているのです。まず営業面では、お客さまへの電話は週に何回が最も商談に結びつきやすいかというデータを製品分野毎に毎週集計し、妥協せずに無駄を省きます。いわゆる昔からの飛び込み営業とった非効率な営業は一切しません。続いて、製品開発面でも重視するのはデータです。開発担当者の元には毎週、全世界の営業マンが顧客の工場に足繁く通って作成したニーズカードと呼ばれるカードが大量に届きます。例えば機器のサイズを今の半分にとか、ペットボトルの不良を検知できるカメラが欲しいなど、営業マンがヒアリングしたお客さまの悩みを細かく記載します。開発担当者は膨大なデータをもとに、まだ世に出てきていない機能をキーワードに開発を進めるのです。これが実際にお客さまのハートを掴んでいます。ある中国企業は他社がカタログベースの説明に終始する中、キーエンスだけはニーズを捉えた提案を自らしてくると高く評価しています。

秘密の2つ目は高速サイクルです。営業マンと開発担当者はほとんど顔を合わせません。資料の提示のみで新製品の説明を済ませるケースがほとんどなのです。社内会議の時間を惜しむことで、他社が同様の製品を出すまでに1つでも新製品を多く作ります。この高速サイクルの背景にあるのが、1974年の設立時から一貫するファブレス経営です。生産委託先との取引は現金決済のみで行う一方、キーエンス向けの製品が大半を占めるようにして、生産委託先の仕入れ値や品質をしっかりとコントロールしています。

秘密の3つ目は即日配送する仕組みです。キーエンスが大量の在庫をあえて抱える格好なのですが、顧客の大半はいざという時であっても納期が遅れず、頼んだ機器が即日配送される点を高く評価しています。そのため、多くのお客さまはキーエンスの機器が多少高くても気にしないわけです。

秘密の4つ目は海外の販売先の特性です。キーエンスの海外の販売先は約8割が中小企業であって、競合他社が限られています。中国などでは中小企業の自動化が始まったばかりで、センサーなどを売り込む余地はまだ多く残されています。実際2019年3月期の海外売上高は11%に増えて、全体で53%に増えています。

ファブレスを実現するだけではなくて、他社にされていない取組みをすることによって、競争優位性を築いているといえます。一方で、懸念事項もいくつかあるようです。同社の有価証券報告書を見てみますと、すぐに気づけます。平均勤続年数の短さと平均年齢の若さです。勤続年数は12.2年、平均年齢は35.9歳です。同業他社であるオムロンよりも5年短いのです。辞める人々は特に営業マンが多いと言われています。常に競合他社よりも素早くお客さんのニーズを捉えて彼らのニーズを満たすような製品を提供するのは、決して楽な仕事ではないということが伺えます。これだけ徹底して取り組みを行っているという裏には、やはり営業マンの努力や会社の社員たちの努力があるわけですから、やはりハードだというのはそうなのかもしれないです。そういったことの結果として、非常に高い営業利益率になっているということが言えると思いますね。

今日のまとめです。今回はBtoB企業において、飛躍しつづけるキーエンスについて取り上げてきました。BtoB市場においてもデータベースとマーケティング、高速サイクル、即日配送といったユニークな取り組みを行うことによって成長し続けることができると言えます。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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