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評価の難しさ①

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/01/22

前回は、「評価」というプロセスには4つの機能「マッチング」、「基準の伝達」、「期待の伝達」、「組織文化の構築」があり、それらを通して組織におけるメンバー間の関係性やコミュニケーションのあり方が左右されるという話をしました。誰もが大事だと思う「評価」ですけれども、これを効果的に、つまり、高く評価すべき人を高く評価し、そうでない人にはそれなりの評価をする、そして、それらの評価を受けた人がそれを妥当なものとして納得するようにしようと思うと、これは非常に難しいものです。実際、「評価なんて簡単だ」と言う方はなかなかいないのではないかと想像します。そこで本日から何回かは、「評価の難しさ」がどこから来るのかについて、少し考えてみようと思います。

「評価の難しさ」にはいくつかの次元、軸があります。まず、「評価」というプロセス自体そもそも複雑で、様々なファクターが絡み合うものである、ということがあります。例えば、「誰が評価するのか」については、直属の上司だけではなく、360度評価などで部下や同僚による評価を受けることもあります。場合によっては、取引先や顧客からの評価が、組織内での評価に直接的に反映されるケースもあるかと思います。

あるいは「何を基準に評価するか」という問題もあります。外回りの営業で獲得契約件数がそのまま評価基準になる、といった比較的シンプルなケースもあるかと思いますが、それ以外にも運不運に左右される成果ではなく、むしろ個人の努力がストレートに反映される行動面をみる、例えば、契約にいたった件数よりもアポイントメントを取るための電話をかけた件数を評価するなどが考えられますね。それ以外にも、勤務態度や資格の有無、はたまたTOEICの点数や、過去の経歴を評価に組み込むといったやり方もありえます。

また、評価される対象となるメンバー一人ひとりの状況をどれだけ勘案するか、といった問題もあります。典型例としては、外回りの営業なのか、それともバックオフィスの経理職なのか、この2つを同じ基準で評価することは妥当とは言い難いと思います。あるいは育児、介護による休業や時短勤務をどう評価に組み入れるかという問題もあります。

この他にも、評価プロセスの複雑性を挙げていくときりがありませんが、問題はこうしたさまざまな論点について「これが正解だ」という唯一の解が存在しないことです。誰が、どんな基準で、どれだけ個々の状況を勘案して実際の具体的な評価に落とし込むか、これはそれぞれの組織が置かれた状況、そしてその組織がどんなビジョンとバリューを大切だと考えるかによって千差万別の解があると思います。このように非常にたくさんのファクターが絡み合い、かつそれらを1つの仕組みに落とし込む際の「正解」が無いというか、実装可能な形が無限にありえるので、それが本当に最も効果的かを探求するのが現実的ではない、という「複雑性」が「評価」を難しくしている第一の要因となります。パラメータがいくつもあるので、それを1つに収束し難いということです。

ただ、考えなければならないファクターが多いというだけであれば、極端な話ですが人工知能にデータをとにかく沢山入れて、どれが一番満足度が高いかとしてしまえば、最適解が出せそうなものです。しかしそうはいかない。その理由が、第2の要因で「認知バイアス」というものです。「認知バイアス」というのは、ひらたく言うとヒトの脳のクセのようなもので、一見どうでもいいようなことによって不釣り合いなほど大きな影響を受けてしまう心理的なパターンのことを指します。

例えば、複数の部下を持つ上司が人事考課を行おうとしたときに、誰から評価を行うか、面談をAさんからするのかBさんからするのかといったことは、AさんやBさんの仕事ぶりそのもの、そこに対する評価とは関係のない、言ってみればどうでもいいことです。「認知バイアス」はこういったところでも左右をしてくるもので、「比較のバイアス」というものがあります。ヒトは何かを比較するとき、その順番に大きく影響を受けるのです。

このため、Aさんについて評価をするにあたり、その人が対象となる評価面談の直前に、大変優秀なメンバーと面談が組まれていたか、それとも、それほど評価が高くないメンバーとの面談が組まれていたかによって評価は実は影響を受けてしまいます。じゅうぶん優秀な人であっても、部内一のエースを面談した直後だと「あの人と比べるとやっぱり見劣りしてしまうな...」と半分無意識に感じてしまい、それが知らずしらずのうちに評価に影響するわけですね。

それでは、一旦全員と面談を行って、各個人の評価は行わずに印象だけ持ちかえり、全員の面談が終わった後にトータルのバランスをみながら個々の評価を決めるようにしたらどうでしょう?すると今度は別のバイアスで、「最初バイアス/最後バイアス」といったものに影響されます。これは、いくつもの一連の情報をまとめて処理しようとすると、ヒトは最初と最後の情報に対して強い印象を覚えがちである、というものです。最初に面談をした人と、最後に面談をした人の印象は鮮明に覚えてるけれども、どうしても中の方の人の印象が弱まってしまうということになります。

今日のまとめ:
評価の難しさの背景には幾つかの要因があります。1つは「複雑さ」で、さまざまなファクターが絡み合い、しかも唯一の正解がないことが評価を難しくしています。第2の要因は「認知バイアス」というヒトの脳のクセで、例えば、評価を行う順番という本質的ではない理由によって評価が影響を受けてしまう「比較のバイアス」などがあります。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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