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日本の労働力市場の構造変化について(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

20/01/03

前回は、これまでの日本の労働力市場の構造変化についてお話しました。生産年齢人口が減っているけれども、女性の労働参加率の上昇や高齢者労働力人口の増加で、全体の労働力人口はほぼ維持されてきたという内容でした。今回は、今後20年に予想される変化について考えてみたいと思います。

2015年までの20年間に、生産年齢人口は1000万人減少しました。しかし、元々全員が労働参加していたわけではなく、全体の労働参加率は72%でした。また、逆に高齢者人口は1560万人増加しましたので、これらの人が以前と同じ比率で労働参加する事を想定して計算すると、実は想定される労働力人口の減少は300万人程度だったわけです。そして、女性の労働参加率が現在のレベルに上昇したことで、ほぼ埋め合わせができているはずでした。実際には、高齢者の労働参加率が若干低下したために、全体で労働力人口は70万人程度減少しましたが、いずれにせよ、その程度の減少で留まった訳です。

それでは、今後の20年間についても同様に、労働力人口の維持は可能なのでしょうか? 前回同様、労働力人口を3つの階層に分けて考えてみましょう。生産年齢人口は2035年までの20年間で、2015年までの20年間の1000万人を上回る1200万人減少することが想定されており、それは率でも前回の11%を上回る13%の減少に相当します。生産年齢と高齢者の各階層の労働参加率を2015年時点のもので変わらないと考え、さらに高齢者人口の増加を勘案して計算すると、労働力人口は2035年には2015年比で700万人減少することが想定されます。これは同様に2015年までの20年間、各階層の労働参加率が変わらなかったとした場合に想定された労働力人口の減少300万人の倍以上です。

それでは、逆に考えて、20年後も労働力人口が維持されるためには、それぞれの階層の労働参加率はどれだけにならねばならないでしょうか。まず、生産年齢の男性の労働参加率は、1995年から2015年の20年間で85%とほとんど変化しませんでした。生産年齢人口には高校生・大学生なども含まれることを考えると、この85%というのはほぼ上限かもしれません。そうした前提に立つと、今後20年間にこの階層の人口が3890万人から3290万人へと600万人減少するのに伴って、労働力人口も510万人程度減少することが避け難いことになります。

次に、生産年齢の女性の場合、過去20年間に労働参加率が58%から67%に上昇しましたが、これを更に上昇させるためには更に多くの既婚女性や子育て中の女性に労働参加してもらわねばならず、ハードルは高いと言わざるを得ません。それでも現実的か否かは別として、仮に生産年齢女性の労働参加率を男性と同じである85%まで17%引き上げると仮定すると、この階層の労働力人口は67%のままとした時に想定される413万人の減少から、171万人の増加に転じます。それでも男性と合わせた生産年齢全体では、依然として約340万人の減少となります。

残る期待は65歳以上の高齢者ということになりますが、2035年までに見込まれる高齢者人口の増加は410万人と、前回の20年間の1560万人を大きく下回ります。その結果、仮に生産年齢の女性の労働参加率が男性並みの85%になっても、残りを高齢者が引き受けるためには労働参加率が31%まで高まらねばなりません。生産年齢女性の労働参加率が2015年レベルから男性と同レベルのほぼ中間の75%に留まった場合には、高齢者の労働参加率が37%まで高まらないと、全体の労働力人口を維持できません。

このように3割台への上昇が期待される高齢者の労働参加率ですが、2015年までの20年間では逆に25%から22%へと低下しています。尤もこの低下は、年齢別人口の山を形成する団塊の世代が2015年時点では65歳の定年年齢を超えたため、高齢者人口が急増すると共に、未だ再就職が決まっていない人が多かったという特殊事情で説明し、今後の労働参加率の上昇も楽観視する向きもあります。現に、2018年の労働参加率は25%%に戻っています。しかし、注意深く見ると、2018年にかけて労働参加率が上昇しているのは高齢者女性で、大きく低下した男性の労働参加率の回復は鈍いままです。2035年といえば団塊の世代は80台後半に差し掛かることになり、そうした意味でも労働参加率30%台のハードルは非常に高いと言わざるを得ません。

つまり、生産年齢女性の労働参加率の更なる上昇と高齢者の増加と労働参加率の上昇によっても、今後の日本が労働力人口を維持することは難しいと判断せざるを得ません。このことは、これまで採られてきた、女性や高齢者の労働参加率の向上や従来型の労働生産性の低下防止・維持のための政策では日本経済を支える労働力の確保は限界に突き当たることを物語っています。AIなどへのより積極的な取り組みや、賛否は有るにしても移民労働力の活用など、新たな政策の方向性が必要な時期になっているということが言えるでしょう。

まとめ:2035年までの20年間に見込まれる生産年齢人口の減少の影響は、前回の20年間の減少の影響を大きく上回り、これまでのように女性の労働参加率の向上や高齢者の増加で労働力人口の維持を図ることは困難です。これまでの参加率向上策や生産性向上のための政策とは一線を画す、新たな方向の対応策が必要となっていると言えましょう。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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