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日本の労働力市場の構造変化について(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

20/01/02

最近、人手不足という言葉を聞かない日もないぐらい、労働力の不足が日常化しています。人手不足が原因で中小企業が倒産したという話も珍しくなくなっています。勿論、好景気など短期的な要因も影響する事から全てが人口の問題ではないと思いますが、中長期的には人口動態変化が労働力需給の重要な要素であることは間違いありません。そこで、今回と次回、日本の労働力人口とその構造について考えてみたいと思います。

潜在的な働き手の人数を表す概念として、生産年齢人口というものがあります。これは15歳から64歳までの人口の事で、ざっくり言えば、中学を卒業してから65歳で定年退職する年齢の人が該当する事になります。この生産年齢人口は、ほぼピークであった1995年から2015年までの20年間で約1000万人、率にして11%減少しました。高校や大学に行く人、或いは専業主婦など外で働く意思の無い人達も含まれていることから、この数字がそのまま労働力市場における供給減少に繋がる訳ではありませんが、人手不足の一つの背景になっている事は間違いありません。

しかし、実際に人手不足が声高に叫ばれるようになったのは、アベノミクスの始まった2013年以降、企業業績が回復した比較的最近の数年間のことです。それ以前は、経済が停滞気味で、正社員になるのが難しいといった、むしろ労働者側にとり困難な時期が続きました。実際に、生産年齢人口が大幅に減少しているにも関わらず、労働市場への供給である労働力人口の減少はこの2015年迄の20年間で70万人程度にとどまっていました。つまり、低迷する景気の下で企業の求人も限られる中、必要とする人材の調達にはそれ程困っていなかったことが伺われます。それではこの時期、生産年齢人口の大幅な減少はどうして労働力人口の減少にそれ程繋がらなかったのか考えてみたいと思います。

労働力人口の構造変化を見る為に、労働力人口を生産年齢にある15歳から65歳までの男性、女性、そして生産年齢を卒業した65歳以上の3つの階層に分けてみましょう。そうすると、生産年齢にある男性の労働力人口は、1995年の3690万人から2015年の3310万人まで、380万人も減少しています。この比率は11%で、生産年齢人口の減少率とほぼ同じ減少率です。特定の階層の人口に対して実際に労働市場に参加する人の比率を労働参加率とか労働力率と言いますが、これが85%のまま変わらなかったこととも呼応しています。これに対して、人口減少率の点から言えば、生産年齢にある女性の労働力人口は1995年の2530万人から2015年には2230万人へと300万人程度減っていてもおかしくありませんでした。ところが、実際の労働力人口は2550万人へと逆に20万人(約1%)増加しているのです。これは、生産年齢にある女性の労働力率が58%から67%へと上昇したからです。この事が全体の労働力人口がそれ程減らなかった原因の1つです。

全体の労働力人口を支えたもう1つの要因は、生産年齢を卒業した高齢者人口の増加です。この階層の人口は1995年の1810万人から2015年には3370万人へと1560万人も増加しました。そのため、1995年には450万人であった高齢者の労働力人口も2015年には740万人へと約300万人増加しています。

この2つの要因から全体の労働力人口はこの間、それほど大きく減少しなかった訳ですが、では、こうした労働力人口の構成変化は労働力の質や労働生産性の点ではどのような影響を及ぼすでしょうか。生産年齢の男性と比較した場合、高齢者はあまり無理が効きませんから、労働時間の面で制約がありますし、体力・気力等の質の面でもハンディキャップを抱えていると思います。生産年齢の女性についても、労働参加率が上昇したということの背景には、小さい子供を抱えたお母さん等の労働参加が増えていることがあり、労働時間の制約という面では似たような状況が考えられます。

こうした中で、以前と比較して全体の生産性を落とさない為にはどういう事が必要でしょうか。いくつか考えられると思いますが、先ずは労働人口が大きく減少した生産年齢にある男性の労働生産性を高めるという事があります。さらに、社会的制度設計を通じてハンディキャップを抱えた高齢者が働きやすい、或いは働く意欲を持続できるような取組が考えられます。さらには生産年齢にある女性が安心して仕事を継続・再開出来るような社会環境の整備も必要です。これらの3つが、いずれ劣らぬ重要性を持っていると思います。働き改革等の実施はこういった要請に応える施策です。

労働力人口の構造変化を見ることによって、施策が何を目的としているのかも見えてきます。

今日のまとめです。過去20年間に生産年齢人口が1000万人も減少しました。しかし、より高い割合の女性の労働市場への参加と高齢者労働力の増加が、生産年齢の男性の労働力減少を補って、全体の労働力人口の全体はほぼ維持されました。一方、全体の生産性の維持向上の為には、生産年齢にある男性の労働生産性の向上努力と並んで、女性や高齢者がより力を発揮出来るような職場内外の環境整備・制度設計が必要となる事が労働力人口の構成を見ることで明らかとなります。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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