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戦略的提携(4):戦略的提携がもたらすメリットとは(その3)

目代武史 企業戦略、生産管理

20/01/24

今日は戦略的提携を脅かすリスクについて考えてみたいと思います。今日、戦略的提携は企業経営にとって重要な戦略的選択となっています。その一方で、戦略的提携を成功に導くためには、乗り越えるべき課題も多いです。効果的な提携を結ぶための第一歩は、パートナーとして適切な相手と組むことだと思います。ところがこれはなかなか簡単ではありません。そこで今回は、戦略的提携のパートナー探しにおける逆選択の問題について取り上げてみたいと思います。

逆選択とは、良い経済取引やパートナー探しをしようとして、合理的に振舞おうとする時、かえって悪い選択をしてしまう現象のことです。

こういった悪い選択が起こる状況は、いわいる「情報の非対称性」が存在する時であることが知られています。情報の非対称性とは、経済取引においてお互いがもっている情報の質や量に格差がある状態のことを言います。例えば中古車や中古住宅の取引では、一般的に売り手の方が、その車や物件に関してより多くの情報を持っています。例えばその車や物件の事故歴や不具合情報などです。これは買い手よりも売り手の方がよく知っているということになります。このような状態を情報が非対称であると言うわけです。こうした情報の非対称というのは、中古品の売買だけではなく、世の中の至るところに存在します。例えば生命保険や健康保険、投資信託などの金融商品は、その仕組みや規制が大変複雑で、保険会社、証券会社などの売り手と一般の買い手の間には、金融商品に関する知識や相場に関する情報に非常に大きな開きがあります。同じく専門知識を求められる領域には医療があります。病気の治療に関する知識には、医師と患者の間に大きな知識の差があります。そこで、ビジネスの現場に目を向けると、例えば中国や東南アジア、南米など海外市場に進出する時に、現地パートナーと組むことが良くあるのですが、その候補が良い相手かどうか見極めるのが難しいのです。

現地の事情が良く分からないからこそ、現地パートナーを求めるわけですが、そのパートナーが必要な顧客情報やノウハウを持っているのか、現地政府とのコネクションを持ているのかどうかというのは、ある程度現地事情に精通してないとわかりません。そうすると、その情報がないからパートナーを求める、ところがパートナーの質を確かめるためには、ある程度の情報を持っていないといけない、という大変難しい状況に落ちいってしまうわけです。逆選択はこういった情報の非対称性が存在する場合に発生します。

この逆選択のエッセンスを理解するために、中古品の取引の事例で考えてみたいと思います。例えば、中古車は程度の良いものから悪いものまで色々あり、中古車ディーラーは、その車の真の価値を知っていて顧客には、その価値が分からないということが多いです。もしディーラーが儲けを大きくするために顧客の希望よりも価値の低い中古車を売ろうとしたとします。顧客側は、「どうもディーラーが信用できない。安物を売りつけようとしてるんじゃないか?」と考えると、ディーラーが提示してくる値段よりも安い値段でしか取引しようとしません。そうするとディーラーはもっと程度の悪い車を進めてくるということになるわけです。そうすると結局、もともと質の高い車を売ろうしていたディーラーは、そういった取引からは早々に撤退し、もともと質の悪い車を売ろうとしていたディーラーしか残らなくなるということになります。

このように情報の非対称性が存在する状況では、売り手と買い手が疑心暗鬼に陥ることで悪い選択しか残らなくなるという逆選択の状況が発生します。これは戦略的提携におけるパートナー探しでも起こりうる問題です。

例えば海外で日本式の居酒屋チェーンを現地企業と組んで開業するとします。色々なパートナー候補が寄ってきますが、問題になるのは彼らが提案する経営資源やノウハウといったものは信用出来るかどうかです。もし信用できないならば、こちらとしても利益配分の割合を引き下げたり、経営ノウハウなど情報開示の範囲を制限したり、提携の条件をやや厳しくしたりするということになろうかと思います。

そうすると、真に能力のある良好なパートナー候補がいれば、そういった会社はより良い条件を求めて、このビジネスから離れていってしまう可能性があります。逆にあまり能力の高くない候補は、その条件でも残るということで、相手が信用出来ない状況がある場合に、あまり信用の出来ない候補だけが残ってしまうという可能性があり得るわけです。

こうした逆選択の状況を回避しようという場合には、提携の締結における情報の非対称性を解消することが必要になります。例えば双方が信用出来る第三者が提携を仲介し、不安を解消するような取り組みが必要になってきます。海外における日本企業と現地企業の戦略的提携において、少数株主として総合商社が参加したりすることも多いですが、それはそうした仲介機能を果たすということが一つの役割として期待されています。

今日のまとめ:
戦略的提携を成功に導くための第一歩は適切な相手とパートナーシップを構築する事にあります。しかしパートナー選びにおいては逆選択というネガティブな現象が発生する事があります。この問題は相手の能力や経営姿勢などが信用できない場合に発生する為、本資質的には情報の非対称性を解消する事がカギとなります。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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