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大学発スタートアップのアクセラレーション・プログラム②

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

19/12/27

【今回のまとめ】
・アクセラレーション・プログラムのポイントは「セレクト」。多くの母数を受け入れ、そこからブラッシュアップする過程で選別が進み、最終的に有望案件が世に出るのである。その支援を切れ目なく行える「エコシステム」を地域が保有することが重要だ。


 前回は、米国MITで取り組まれているアクセラレーション・プログラムについて紹介した。今回は、台湾交通大学によるアクセラレーション・プログラムについて紹介したい。
台湾交通大学は、台湾を代表する科学技術系の大学である。2013年にIAPS(Center of Industry Accelerator and Patent Strategy)という組織が設置され、アクセラレーション・プログラムを開始している。これまでに、シリーズA(スタートアップが最初に実施する本格的な資金調達)以上のステージにある企業を、既に100社以上輩出している。ちなみにIAPSは、毎年150社以上のペースでスタートアップを輩出しているとのことである。
また直近では、5M米ドル規模のファンドを組成し、シリーズA前(シード期〜プレ・シリーズA期)にある大学発スタートアップに対し、1件あたり10〜20万米ドルのギャップファンド的な資金提供を行い、3〜6ヶ月間、集中して支援することで事業化を促している。そもそもこのステージはアーリー過ぎて事業の姿が見えていないため、一般的なVCでも投資が困難である。従って、そのギャップを超える役割をファンドが担うのである。
台湾交通大学の活動は、台湾全体の大学をカバーしている。これは、台湾交通大学の産学連携の仕組みが非常によく機能しており、実績も上がっているため、政府がIAPSに対して特別予算を措置し、IAPSを拠点として台湾全体の大学発スタートアップを奨励しているのである。
 IAPSは、新竹(台湾のシリコンバレーと呼ばれ、交通大学も立地)に本部を置いているが、それ以外に台北市内のTTA(Taiwan Tech Arena)という複合施設内と、新台北市にもう1箇所、計3箇所の拠点を設置し、スタートアップ支援の活動を行っている。やはり台北のほうが、ビジネスの専門家のサポートを得やすいという理由による。
IAPSは、現在、計8種類の支援プログラム(アクセラレーション・プログラム)を運営している。それらは、アーリー段階からVCが投資を始める前段階まで、技術と事業のステージに分けて、支援範囲が設定されている。
 例えば、「死の谷」と呼ばれる研究からビジネスに転換する初期段階のギャップを超えるために、「Fog Computing Alliance」というコンピューター分野の支援や「教育省のRSCプログラム(これまで84もの研究室のプロジェクトを支援し、うち10%程度がスタートアップとして成長)」、「iCAN」と呼ばれる研究をスタートアップへと転換させるための支援プログラム、等々を提供している。
また、死の谷を超えた後のステージには「Taiwan Tech」という技術系スタートアップの海外展開支援プログラムや、「医療デバイス・アクセラレーション・プログラム」あるいは「Spin Accelerator(スポーツテックに特化した支援プログラム)」などの分野特化型の支援メニューを提供している。
 ちょうどTTA内のIAPSを訪問したとき、イスラエルの団体と共同で「Spin Accelerator」のキックオフ・イベントが行われており、台湾のみならず、英国やニュージーランド、インド、イスラエル、日本などから約30団体が参加し、活発な交流が行われていた。そこから約2ヶ月半の間、各チームはメンターの指導を受けながら事業アイデアをブラッシュアップし、1月に再び台北のTTAに集まって、投資家に最終プレゼンテーションを行うのである。
 IAPSの責任者の台湾交通大学・ファン教授は、「セレクト」という言葉を頻繁に口にする。アクセラレーション・プログラムの参加者の多くは、大学のラボに所属する大学院生やポスドクだが、彼らを動機づけして初期段階「死の谷」を超えるプログラムに多数応募させ、そこからブラッシュアップ&セレクトを繰り返すと、最終的に有望なスタートアップの卵が残り、そこで初めてベンチャーキャピタルなどプロの投資家にバトンタッチができる。すなわち、大学のアクセラレーション・プログラムは、あくまでも初期段階に横たわるギャップを乗り越えることに注力することで、民間投資家との役割分担を行っているといえる。このことは、スタートアップが生まれて育つために不可欠な「切れ目のないサポート」が提供されているとも言え、地域に「エコシステム」が適切に機能している姿そのものである。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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