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大学発スタートアップのアクセラレーション・プログラム①

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

19/12/26

【今回のまとめ】
・近年は、イノベーション創出を加速する「アクセラレーション・プログラム」が大学でも行われるようになっている。そこでは、「教育」の観点から、アントレプレナーのマインドセットとスキルセットを獲得する工夫が盛り込まれている。


 以前の放送で、既存企業が実施する「アクセラレーション・プログラム」、つまり、短期間でイノベーティブな製品やサービスを世に出そうとする取り組みが増えていることを紹介した。実は、大学でもそのような動きが増えている。今回と次回は、その大学のアクセラレーション・プログラムの取り組みについて紹介したい。
 例えば、米国のMITでは、毎年6月〜9月初旬にかけて、MIT Delta v(デルタ・ブイ)というアクセラレーション・プログラムを行っている。これは、約100の応募チームから、有望な20程度のチームを選抜し、チームは約10週間で起業アイデアをブラッシュアップし、最終日(デモ・デイと呼ばれる)にベンチャーキャピタルなどの投資家にプレゼンし、投資獲得につなげるものだ。
 参加者の内訳は、院生(修士)63%、院生(博士)10%、ポスドク10%、学部生16%という構成で、大学院生が中心的な参加者である。また、約半数はビジネススクールの学生で、また、工学からが1/3を占めている。
 ちなみに、100もの応募チームから20チーム程度を選抜する際、「チーム・ファースト、アイデア・セカンド」で選抜しているという。これは、アイデア自体は、ブラッシュアップし始めたら様々な要因によって方向転換(ピボット)するため、そのような変化への耐性や不確実への寛容性を含めて、チームの質を重視しているのである。
 各チームは、大学から2万ドルの予算を与えられ、出張やプロトタイプ製作などのコストを賄う。
 チームのメンバーは、10週間を共に過ごしながら、起業の初期に発生する出来事をリアルに体験し、そこから様々なことを学ぶ。特にMITのプログラムで重視されているのが、「ピア・ラーニング」という考え方だ。これは、同じ境遇で過ごす仲間同士が、お互いの多様な経験をシェアし学び合うことに価値があるとの考えに基づいている。
 そのために、10週間もの間、チームが過ごす共有スペースが重要となる。例えば毎週1回、立食形式で食事を取りながら、お互いに成功・失敗を語り合う時間を設けている。さらに、チームを超えたコミュニティ/交流づくりのため、ソーシャル・イベントもしばしば開催される。例えばチャールズ川でのカヤッキングやBBQ、期間中全3回の全員でのディナーも交流に一役買っている。
 このアクセラレーション・プログラムの担当者は、「カオスな状態が重要だ」と語る。起業家は、困難に直面しても耐えて乗り越えなければならず、従って、混沌とした環境でもがきながら苦労する体験から「挑戦への耐性」を獲得し、それによって、より高い目標に向かって挑戦できる人材を育成できるのである。
 もちろん、学生たちが自ら学ぶだけではなく、週に2回は専門家によるメンタリング(相談)の時間も設けられている。また、1ヶ月に1度は「ボード・ミーティング」と称する疑似的な取締役会に出席し、投資家や成功した起業家など8〜10名の外部専門家に対して、事業の進捗をプレゼンテーションし質疑応答を行う。
 この10週間のプロセスを経て、チームは最終的に「エスケープ・ヴェロシティ」、すなわち重力に引き戻されずに飛び出せる「脱出速度」を得て、スタートアップとして自走することを目指すのである。
 以上が米国MITのアクセラレーション・プログラムだが、アントレプレナーシップの教育・研究で有名なバブソン大学でも、夏休み期間を活用して同様のアクセラレーション・プログラムを実施している。同じく、学生が自らの経験を通じて学ぶことを重視しており、「ランチ&ラーン(昼食をとりながら互いの経験を共有しあう)」や、「ホットシート(個人が最もタフだった経験を他の参加者に語る)」が行われている。このプログラム参加を通じて、アントレプレナーとしてのマインドセットとスキルセットを獲得するのである。
 次回は、台湾の大学によるアクセラレーション・プログラムについて紹介したい。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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