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小規模工房で作られる国際高級時計

岩下仁 マーケティング

19/11/05

前回に引き続き、富裕層をターゲットにしたマーケティングについて話を進めています。これまで絵画や高級レストラン、民間のユニークな学童施設等を紹介してきました。今日は、今富裕層に密かにブームになっている、あるものをご紹介したいと思います。まずは、MASAHIRO KIKUNOやHAJIME ASAOKAを聞いたことがありますか。両方ともそのあるもののブランドの名前ですが、何のブランドだと思いますか? 聞き慣れない名前ですが、実は両方とも腕時計の高級ブランドなのです。腕時計の高級ブランドといったら、ロレックスやタグ・ホイヤー、またオメガやパテック・フィリップ等、ヨーロッパの有名ブランドを思い浮かべる人が多いと思います。実際に高級時計は海外ブランドの独壇場ではあるのですが、実は近年、日本産の高級時計に目が向けられているのです。

MASAHIRO KIKUNOとかHAJIME ASAOKAというのは、日本産の高級時計のブランドです。今日は、日本ブランドの、しかも大手メーカーではなく、1名から10名程度の小規模工房でごく少数作られる高級時計に注目が向けられているというお話をしたいと思います。小規模工房で作られる国産高級時計が誕生したのは10年ほど前と、割と最近のことです。その草分け的な存在が、最初に紹介したMASAHIRO KIKUNOとHAJIME ASAOKAの2つです。菊野昌宏さんが手掛けるMASAHIRO KIKUNOは江戸時代の和時計を現代風によみがえらせたデザインが特徴的で、浅岡肇さんが手掛けるHAJIME ASAOKAは歯車の一つにまでオリジナルにこだわって作られています。いずれの時計も一つ数百万円から1,000万円を超える高級品ですが、注文から4~5年待ちの人気ブランドになっています。

そしてその後、彼らをエポックメイキングとして独立系の時計職人の方々が誕生し始めています。例えば、牧原大造氏は2017年にDAIZOH MAKIHARAを創業。代表作は日本の伝統的なガラス細工職人とコラボレーションした「菊つなぎ紋 桜」で、558万円です。また、刀匠から時計職人に転じた中川友就氏は2018年にKIKUCHI NAKAGAWAというブランドを立ち上げています。代表作はMURAKUMOで、針一本を8時間かけて磨き上げており、鬼磨きと言われ人気を博しているそうです。

さて、この10年で小規模工房で作られる国産高級時計が普及した背景には、どのような要因があったのでしょうか。一つ目として、希少性の高さです。富裕層はロレックスなど海外の機械式時計ブランドは既に一通り持っていることが多く、次に買うものとして日本の器用な腕時計職人が作る、まるで芸術作品のような精緻な腕時計を強く欲するわけです。

二つ目に挙げられるのは、時計の部品を作る特殊機械の価格下落によって、これまで入手しづらかった部品を調達しやすくなった点です。例えば外装ケースに使うステンレス904Lですが、耐久性に優れているため既にロレックスが採用していました。しかし、このステンレス加工にはこれまで大規模な設備投資が必要だったため、資本力のある大手メーカーしか採用出来ませんでした。しかし現在、この加工に必要な微細加工機という特殊機械を碌々産業という機械メーカーが保有するようになったことで、彼らに委託することで1個からでも発注できるようになったのです。これで小規模メーカーも大型機器を保有することなく外注が出来るようになったというわけです。ちなみに碌々産業は、この微細加工機を海外メーカーから手の届く価格で購入したそうです。

三つ目の要因は、SNSの普及です。小規模の腕時計メーカーはこれまでは宣伝を百貨店や時計専門店など既存の流通に頼っていました。その為、どうしてもリベートや割引を求められてしまい、利益を圧迫していました。ところが今はInstagramやFacebookで自ら情報発信することで、興味を持って問い合わせてきた人に直接販売することが出来るようになったのです。

四つ目に、この10年間に本場スイスにある独立時計協会、通称AHCIの会員になった第一世代の時計職人達が丁度独立したことが大きいと思います。菊野氏も、日本ではAHCIの会員になった最初の世代の一人です。彼らのような第一世代がインターネットで積極的に製作過程を公開する等して、継続の参入を促しています。時計専門誌「時計Begin」の中里編集長によると第一世代に続く後継者はたくさんいるそうで、これからもまだまだ新しいブランドが誕生しそうです。

今日のまとめです。今回は、富裕層の間でブームになっている小規模工房で作られる国産高級時計について見てきました。これまでは高級時計というと、海外の有力ブランドが占めているわけですが、海外で学んだ時計職人の方々が独自ブランドを展開し始めることで、富裕層の密かなブームになっているようです。今後も小規模工房で作られる国産高級時計から目が離せません。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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