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IASBの概念フレームワーク②

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

19/10/15

1 概念フレームワークの意義
 会計上の「概念フレームワーク」(CF)とは、財務諸表の作成と表示や財務報告の基礎をなす体系的な諸概念について記述したものである。国際会計基準審議会(IASB)の概念フレームワークは、IASBが理想とする会計の体系的な諸概念を示し、その主たる目的は、IASBが首尾一貫した個別の会計基準を開発する場合の基本的な諸概念や考え方を示すものである。それゆえ、これは、IASBの公表する会計基準であるすべての国際財務報告基準(IFRS)の基礎となるものである。
 このように、概念フレームワークは、首尾一貫性のある個別の会計基準を設定するための体系的な諸概念(「メタ基準」)であり、しばしば「会計上の憲法」と呼ばれることもある。

2 IFRSの重要性
 現代は、情報技術の急速な向上による世界的なインターネットやAIの急速な普及発展等により、企業の取引は、一層グローバル化してきており、21世紀の企業経営は、あらゆる面で、世界標準(GS)を念頭において行うことが必要となってきている。
 このような状況の下では、法律等と共に企業経営のソフト・インフラの一つである会計も、企業取引の実態を世界的に比較可能なものとして行えるようになるというニーズが一層高まってきている。そして、図表1のように、このような世界で比較可能な財務諸表の作成表示を行えるような高品質で透明性のある国際財務報告基準(IFRS)の設定を目的とする機関が国際会計基準審議会(IASB)である。なお、2000年までは、この前身である国際会計基準委員会(IASC)が国際会計基準(IAS)を公表していた。

図表1 組織と会計基準
IASB2-1.png

 しかも、このIFRSを全面適用せず、収斂アプローチ(CA)を採用するわが国のような国においては、例えば、IASBが2014年5月に公表したIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に相当する基準として、わが国のASBJが2018年3月に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を公表したように、この国際会計基準審議会(IASB)の作成するIFRSが、国内の会計基準設定に直接影響を及ぼしている。このような意味で、IFRSは21世紀では、世界共通の会計基準として大きな影響力を及ぼし、これを正しく対応していくことが企業経営等にとって必要不可欠なものとなってきている。

3 IFRSの内容
 IASBでは、図表2のように、一般に次の四つの新旧の会計基準及び解釈指針を総称したものを「IFRSs」と呼んでいる。ただし、一般には、このIFRSsを単に「IFRS」と略称されることが多い。

図表2 IFRSsの内容
IASB2-2.png
(注) IAS等は、新たなIFRSの公表に伴って廃止されたものもあるけれども、改訂を行いながら現在でも使用され続けているものも多い。

4 概念フレームワークの開発の概要
 1989年に国際会計基準委員会(IASC)は、会計基準の国際的調和化を図る上で、高品質で透明性があり、比較可能である財務諸表を作成・表示するために、それを作成する指針である会計基準の設定アプローチを、従来のピースミール・アプローチから理論的アプローチへ転換させた。これを可能にさせたのが、図表3のように、同年にIASCより公表された「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」(IASC[1989a])と公開草案32「財務諸表の比較可能性」(IASC[1989b])であり、後者については、その後比較可能性改善プロジェクトによってIASの改訂作業を行った。そして、1993年の11の基準書の一括改訂によって、このプロジェクトは終了した。

図表3 概念フレームワークの開発の概略
IASB2-3.png
(注) IASC:国際会計基準委員会、IASB:国際会計基準審議会、FASB:財務会計基準審議会
*:これは、1989年IASCの概念フレームワークの改訂版である。

5 改訂プロジェクトの目的
 前述の従来の概念フレームワークの問題点を解消するためのIASBの概念フレームワークの改訂「プロジェクトの目的は、より完全で明瞭な更新された概念のセットを提供することによって財務報告を改善することである」。このために、改訂プロジェクトでは、前述の三つの問題点として示されたものに対して、次のような対応を行っている。

① 「未規定事項」への対応
 新しい概念フレームワークでは、従来の概念フレームワークよりも完全である。というのは、従来の概念フレームワークでは扱っていないか又は詳細に扱っていない以下の領域を扱っているからである。
(ⅰ)測定
(ⅱ)財務業績(その他の包括利益の使用を含む)
(ⅲ)表示及び開示
(ⅳ)認識の中止
(ⅴ)報告企業

② 「ガイダンス不足」への対応
 新しい概念フレームワークでは、従来の概念フレームワークについて、次のような側面を明確化している。
(ⅰ)財務報告の目的を満たすために必要とされる情報には、企業の資源に係る経営者の受託責任の評価を助けるために使用できる情報が含まれている旨を明確化していること(「受託責任の明確化」)
(ⅱ)財務報告における慎重性及び実質優先の役割を説明していること(「慎重性及び実質優先の役割の説明」)
(ⅲ)測定の不確実性のレベルが高いと、財務情報の目的適合性を低下させる可能性がある旨を明確化していること(「測定の不確実性の高さによる目的適合性の低下」)
(ⅳ)例えば、認識及び測定に関する重要な決定が、財務業績及び財政状態の両方に関してもたらされる情報の性質の考慮によって導かれる旨を明確化していること(「情報の性質の考慮に基づく認識・測定に関する決定」)
(ⅴ)資産及び負債のより明確な定義、及びそれらの定義を補強するより広範なガイダンスを提供していること(「資産等の明確な定義とガイダンスの提供」)。

③ 「時代遅れ」への対応
 新しい概念フレームワークでは、従来の概念フレームワークの中で時代遅れになっている部分を見直している。例えば、資産及び負債の定義における蓋然性の役割を見直し、これを問題としないものとしている。
 以上がIASBの概念フレームワークの改訂プロジェクトが目指した事項である。

6 むすび
 概念フレームワークは個別会計基準を設定するためのメタ基準であり、かつわが国はIASBとコンバージェンスをしているので、わが国の現在の会計を理解するためには、IASBの概念フレームワークを理解する必要がある。

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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