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高級チョコレート・ブランドのマーケティング戦略

岩下仁 マーケティング

19/09/10

ここ何回かにわたって、アートや高級車、高級レストランといった富裕層をターゲットにしたマーケティングのお話をしてきました。今回も、富裕層をターゲットにした商品の1つである、高級チョコレートのお話をしたいと思います。その中でも今回スポットを当てるのは、ベルギー発祥のチョコレート「ゴディバ」です。今では、ジャン=ポール・エヴァンとかピエールマルコリーニとか、様々な海外の高級チョコレートが販売されています。しかし、やはり高級チョコレートの先駆けというと、日本ではゴディバという印象がありますよね。

日本でゴディバが最初に発売されたのは1972年です。ショーケースに入って、1粒ずつ選んで買うスタイルや値段から、かなり高級なチョコレートといった感じでした。以前は、他にこういったチョコレートはあまり無かったので、高級チョコレート=ゴディバというイメージの人も多かったのではないかと思います。しかし、日本ではゴディバだけで無く、海外からの輸入チョコレートや、日本初のブランドチョコレートもあって、市場は飽和状態なのです。しかしそんな中、ゴディバ日本法人であるゴディバジャパンの売上は絶好調で、2017年の売上は378億円とこの7年間で何と約3倍にまで膨らんでいます。そこで今回は、高級チョコレートブランドの先駆けであるゴディバジャパンがそこまで売上を伸ばしたマーケティングの秘密について探っていきたいと思います。

1つ目の秘密ですが、常に変革を行う企業文化です。単に高級チョコレートを箱に入れて売るのでは無く、売り方自体で様々な工夫を凝らしています。例えば、2017年よりチョコレートパティシエがお菓子を作っている姿をガラス越しに見ることが出来る、アトリエ型店舗を展開しています。こういった作業風景を直接見ることが出来る店舗は、西部池袋本店内を含め国内には3店舗あります。美味しそうなので、ついつい見入って購入してしまったというお客さんも多いそうで、実際にこれら3つの店舗の売上は好調に推移しているようです。そうやって作っている所を見られるというのは楽しく、消費者に受けて、つい店舗に入ってしまうといったことがあると思います。今日の高級ブランドは、単にブランド作りを行うだけでは消費者の支持は得られません。むしろ、こういった歩みよった結果として現れているという風に思います。

2つ目の秘密は、販売経路を広げたことです。通常高級ブランドでは直営店の他、デパートやホテルなど販路を限定していることが多いのですが、ゴディバでは通常とは逆の戦略を取っています。デパートあるいはホテルに販路を限定することは、供給量を一定に保てるのでブランドイメージを維持出来ます。一方で、売上は限界がありますよね。そこで2010年からコンビニエンスストアでの販売を開始し、ポプラやニューデイズ、2018年からはデイリーヤマザキでも取扱いを開始しています。さらに最近では、ローソンと組んでゴディバブランドのアイスクリームも共同開発しています。昔はデパートや直営店でしか手に入らなかったゴディバのチョコレートが、今では近所のコンビニでも購入出来るようになったわけです。

やはり家の近くのコンビニなどということで、非常に身近な物になってきているということが言えます。多くのチャネルで商品を扱うことをマルチチャネルと言いますが、高級ブランドをマルチチャネルで扱うと通常は値崩れを起こしてしまいます。結果として、数量の伸び以上に単価が下がるので、売上は落ちます。しかし何と、ゴディバでは全てのチャネルで増収だったのです。と言うのもゴディバでは現則値引きはしないと決めており、コンビニやスーパーであっても決して値引きをしないのです。これによってコンビニによる販路拡大で生じるブランドイメージの低下を防いだわけです。コンビニのような一般チャネルで高級ブランドを売る場合には、コンビニ側のリクエストで値引きされて売るか、コンビニ用の質を落とした商品が売られたりしますが、高級価格での販売を維持したのです。実際に、コンビニで売られているゴディバの「キャラメルサレ」というアイスクリームの価格は税抜きで400円と、決して安くはありません。このように価格を徹底して管理することで、高級ブランドというブランドイメージが崩れるのを防いでいるのです。またコンビニ販売ということで、ターゲットは富裕層だけでなく一般層にも広がっています。ゴディバは一般層が給料日、あるいは自分へのご褒美といったちょっと特別なシーンでゴディバを購入してもらうことを想定して、高級なブランドイメージはそのままにコンビニでの販売を成功させたのです。

ゴディバの他にも高級アイスクリームの有名ブランドが幾つかある中で、ゴディバが選ばれる理由が幾つかあります。その中でゴディバが選ばれやすいのは、元々チョコレートブランドで培われてきたブランド力があるからです。チョコレートブランドとして確固たる地位がありますので、消費者が幾つかの高級アイスクリームの中で迷った時に、「ゴディバブランドが付いているなら美味しいはず」と買いやすくしているのです。このことを専門用語では、ブランド拡張と言っています。正にゴディバは高級チョコレートブランドを高級アイスクリームブランドへと拡張したと言えるでしょう。今までゴディバの確固たる地位があったからこそ、コンビニで売っても売上もきちんと延ばすこともできたということですね。

今日のまとめです。今回は高級チョコレートであるゴディバの飛躍の秘密について見てきました。直近の7年間で売上高が3倍になっていますが、その背景には高級ブランドの枠に囚われず、作業風景を見ることが出来るアトリエ販売やコンビニエンスストアへの販路拡大など、他社には無いユニークなマーケティングの工夫がなされてきたことが分かります。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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