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アントレプレナーシップ教育者向けシンポジウム(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

19/09/06

【今回のまとめ】
・「creation=まず行動し、そこから学びながら作り上げる」という行動様式の重要性を理解させるために、バブソン大学では"Action trumps everything!(思い立ったら即行動!)"という一言が頻繁に使われる。

・今回も、前回に続いて米国バブソン大学のアントレプレナーシップ教育者向けシンポジウム(SEE)の様子を報告したい。
・SEE全体を通じて、「機会(事業機会)」という単語が頻発する。アントレプレナーシップ教育における最も重要なテーマの一つが「機会の発見」と「機会の評価」だが、その評価に関するディスカッションも行われた。
・アントレプレナーの存在意義は、まだ世の中に存在しない製品やサービスを市場にもたらし人々の生活にイノベーションを起こすことだが、その機会をどう評価すべきかで、様々な議論が巻き起こる。ベンチャーキャピタル(VC)が、1000に3つの大成功案件のために、リスクを取って投資を決定する際にも、その機会がもたらす価値や実現可能性について様々な側面からレビューされる。
・ここで重要なのは、アントレプレナーの提案を単なる「アイデア」から「事業機会」へと引き上げることだ。そのポイントが、次の8つの項目だ(著名VCであるクライナー・パーキンスのジョン・ドーアの提唱)。
1)顧客は誰か?
2)コアな顧客は誰か?
3)その顧客は何を気にしているのか?
4)あなた(起業家)はその問題を解決できるか?
5)顧客は、今現在抱えている問題について何と言っているか?
6)あなた(起業家)は、その問題をどのようなユニークな方法で解決できるか?
7)その問題を市場規模にすると、どのくらい大きいのか?
8)その問題解決に、人々は幾らくらい払っても良いと考えるのか?
・加えて、アントレプレナーがビジネスについて検討を始める初期段階では、上記の8つの項目のほとんどが単なる「想定(仮説)」に過ぎない。従って、起業家は「行動」によって想定(仮説)を「確実な情報」へと置き換えながら、ビジネスを作り上げる必要がある。それでも、新規に創業した会社の20%が1年で、34%が2年目で、50%が3年目で事業停止という状況に陥るという。それだけ「機会の評価」は難しいということだ。それでも挑戦の価値を見出して挑戦するのがアントレプレナーの存在意義だが、「想定(仮説)」を「確実な情報」へと置き換えるための「行動」が不可欠であることに学生に気づかせることが、アントレプレナーシップ教育の重要な要素なのである。
・前回話をした、「prediction=予測=データを収集し、分析し、戦略を立ててから行動する」という行動様式は、主として大企業が安定的に事業を継続するために必要な要素だ。対して「creation=創造=まず行動してみて、そこから学びながら作り上げる」という行動様式は、アントレプレナーが不確実でゴールもはっきりしない状況で、試行錯誤しながら徐々に正しいゴールを見出し、イノベーションを実現するときに有利に働く。バブソンでは、"Action trumps everything!(思い立ったら即行動!)"という一言を頻繁に目にする。重要なのは、predictionとcreationのどちらかが良いというものではなく、その特性の違いを理解し、置かれた環境でどちらの行動様式で動くほうが有利かを知るということだ。セッションでは、「環境に合わせて、言葉を選ぶようなものだ」と説明されていた。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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