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ビジネスを学ぶ面白さ⑤標準化は人を自由にする

廣瀬 聡 企業家リーダーシップ

19/08/23

このシリーズでは経営を学ぶ面白さについてお話してきましたが、今回は一つ進んだ話として「標準化」についてお話をします。

私は、保険会社或いは日本最大のコールセンターのアウトソーシング会社等でオペレーションを標準化するという仕事に長年取り組んでいます。

正直に言うと、業務を標準化したりルール化したり制度化するということは、バラバラな組織をまとめていくときには一定の効果がありますが、場合によってはそれにより柔軟性を失い杓子定規になってしまったり、お客さまの意向に柔軟に対応出来なくなる、或いは仕事の中での自由が利かなくなったり、業務がやりにくくなりはしないだろうか、標準化はどこまでやるべきなのだろうというような限界ラインについて自問自答することがあります。こういう重要なテーマの時に大切なことは専門家の声を聴くことなので、実はトヨタの生産プロセスをよく把握されている方にインタビューをさせていただきました。これが実に驚くお話でした。

トヨタ自動車という会社はご存じの通り、世界の最先端の自動車会社ですけれども、実は標準化は「ずっと続けていくもの、終わりのないもの」という認識をしています。その背景には、「標準化」というのは様々なプロセスであり、型というものをある意味で見える化していく、その結果として、標準化は人を自由にする。標準化をすればするほど、人は自由になるというような哲学をトヨタ自動車の皆さんはお持ちでした。

これは私にとって目から鱗のお話でした。標準化することによって、人はまず型を早く学ぶことが出来ます。そのため、どういうふうに仕事を進めていけばいいのか、ある一定のレベルにまで早い段階で達することができます。そうすると、実際に仕事をしていく中で次に「こういう場合はどうすればいいんだろう」「こうしたらもっと良くなるのではないだろうか」と考え始めます。それを今度は更に新しい標準化のプロセスにルール化していくことによって、更にこの標準化のプロセスを進化させることができるのです。つまり、標準化という営みは、人をがんじがらめに縛るのではなく、人を早く進化させて、更なる進化・更なる発想を可能にさせるものと捉えていました。これをトヨタ自動車の方は、組織の中で完全に定着させていました。

これは正直に申し上げると、私自身がオペレーションを担当していた金融機関、外資系の会社、或いはコールセンターのオペレーションの会社では、標準化とは、オペレーションとは何を追求すべきかについてそこまで突き詰めて考えていませんでした。「ここまで標準化したからそれでいいよね、緩めてもいいよね」という発想でした。トヨタ自動車のすごいところは、この発想を製造工程だけではなくて、今度は思考の標準化といって、問題解決をするための姿勢そのものを標準化しようと考えているところです。考え方といっても、問題解決、課題解決の標準化というふうに説明した方がいいかもしれません。一見、これは人間を杓子定規にして金太郎飴のようにしてしまうのでないだろうかと思わせてしまいますが、実はそうではなく、これも根底にあるのは、課題解決の型、思考の型をつくることによって、人はそこから更により良いものをつくろう、更により新しい考え方をしていくような仕掛けをつくっていこうという発想でした。つまり、人間を自由にする、もっと言えば、人間を思考の面で進化させる仕掛けとして標準化という言葉を捉えていました。こういう発想をしているため、普通の製造業であるはずのトヨタ自動車は常に進化を続けていくのではないかと思います。

今自動車業界は、電気自動車や自動運転など様々なチャレンジに直面しているわけですが、トヨタ自動車の方は「我々トヨタは自動車をつくるのではありません。人をつくる会社です」とお話しされました。勿論、実際にこれが次の新しい時代の競争に勝ち残るかは誰も分かりませんが、ただ、もしこのような発想、「優秀な人をつくる」というような発想でこの会社がこれからも取り組むとすれば、きっと面白い時代が来るのではないかと思いますし、我々自身もそういったことから何か学びを得られるのではないかと思います。

では、今日のまとめです。
今「標準化」という言葉で捉えると、何だか閉塞感があるような、或いは行き着く先に限界があるかのように捉えがちですが、実はこの標準化という言葉一つにもとても深い意味合いや面白さがあります。この5回シリーズの中では経営に向き合う面白さをお話させていただきましたが、是非表面的に捉えるのではなく、一つ一つの言葉についてもその意味を考えながら経営の世界における自分のスキルを高めていっていただけると幸いです。

分野: 企業家リーダーシップ |スピーカー: 廣瀬 聡

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