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在庫(棚卸資産)について

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/08/14

よく、在庫セールだとか、在庫切れだとか、そういった場面に私たち消費者も遭遇することがあり、嬉しい話のこともあれば、がっかりさせられることもあります。製造業や流通業の企業の場合、仕入れから販売までの間に原材料だったり、生産の中間過程での仕掛品だったり、あとは販売するだけになっている製品だったり、状態の違いはあるにしても在庫を保有することは避けられません。今日は企業にとっての在庫を考えてみたいと思います。

まず、景気循環の面では、企業に在庫が積み上がる場合には2通りあって、それぞれ前向きな在庫と後向きな在庫と呼ばれます。この内、企業が、「これぐらいは売れるだろう」と思って生産したり仕入れたものが、思ったほど売れないで企業の中に滞留する、これが後向きな在庫と呼ばれるものです。産業や経済全体でこれが増加する場合には、企業活動が減速・停滞に向かいつつあることを示しており、不況に向かう前兆として警戒されます。一方、前向きな在庫というのはこの逆で、売上が伸びるという見通しの下に、欠品が生じないように企業が予め多めに生産したり、仕入れを行うことに伴う在庫増の現象で、景気拡大に向かう兆候として歓迎されます。景気が好況、不況と循環するのと並行して、こうした在庫水準も上下を繰り返すことから、在庫循環と呼んだりもします。

それでは、個々の企業にとっては、在庫が増えるとどのような影響があるでしょうか。
まず、最も基本的なことは、企業にとって在庫は直接的には運用収益がゼロの資産だということで、一方で、在庫を抱えるには資金調達コストがかかります。さらにかかるコストはそれだけではありません。保管のための費用もありますし、時間の経過と共に陳腐化して価値が減少したり、盗難のリスクもあります。つまり、在庫は直接的には収益ではなくて費用を生む資産な訳で、その意味では企業も抱えずに済めば済ませたいと考えているはずです。

ところが在庫には、持つことばかりでなく、持たないことによるコストもかかってきます。流通業で在庫を絞ると品切れのリスクが高くなり、せっかくの商機を逃してしまいかねません。また、製造業でも原材料の在庫を絞れば生産中断のリスクが高まります。一旦生産中断となれば人件費が無駄になるだけでなく、納期に間に合わなければ以後の取引にも影響が及びかねません。さらに、在庫を絞ろうと思えば、大量に仕入れた場合に期待できる割引を諦めねばならないとか、集中生産して生産コスト下げることも難しくなります。

つまり、企業は在庫について、持つことによるコストと持たないことによるコストのバランス、即ちトレード・オフを上手く裁くことが求められます。こうした問題を避けるために、比較的力のある企業が原材料や部品の仕入れに当って採り入れているのが、「ジャストインタイムシステム」と呼ばれるものです。これは、生産現場で極力部品や原材料の在庫を持つことを避け、生産の進捗により必要となる分だけサプライヤーに商品を納入させるシステムです。これであれば、原材料や部品在庫を持つことによるコストを極小化できますが、逆にサプライヤーにとっては、自社の生産をフレキシブルに調整できない場合、商品在庫を余分に抱えることになりかねません。従って、力のない企業には難しいシステムとも言えます。

こうした企業とサプライヤー間のゼロサムの問題を避けるためには、サプライヤーも含めたサプライチェーン全体で在庫を減らすことが必要になってきます。特に、流通する物品の価値が高ければ高い程、チェーン全体で抱える在庫のコストは大きくなります。こうしたことに対してチェーン全体での取組みとして、発注から納入までの期間を短くするために消費地に近い場所で生産を行い、物流にかかる時間を短くすることがあります。必ずしも高価な商品の場合ばかりでなく、競争的な市場や変化の激しい市場、陳腐化の速い商品などの場合に用いられる手段です。

もう一つ、極端に在庫を減らす方法として、注文生産が挙げられます。例えば、車で言えば、スペック、色などについての顧客の注文を受けてから生産することにすれば、ディーラーは完成品の在庫を持たずに済みます。しかしこの場合、注文から納車まで何週間も顧客に待ってもらわねばならず、人気のある車種であれば可能でしょうが、そうでなければ他の車種、場合によっては他メーカーの車に顧客が流れてしまう危険性が高くなります。そのため、実際は比較的売れ筋の色やスペックについては見込みで生産し、メーカーやディーラーが在庫として抱えて置く場合も多いのが実態です。

このように、在庫は経済全体では景気循環の中での方向性を示すサインという面を持つと共に、企業におけるその管理を巡っては、その企業の経営の巧拙を示す、基本的な活動ということができます。

まとめ:在庫は、経済や産業全体にとっては、その水準の変化が景気の方向性を先行的に示す重要な指標であると共に、個々の企業にとっての在庫管理は、持つことによるコストと持たざることによるコストの間のトレード・オフをどうバランスさせるかで、業績にも大きな影響を与えかねない重要な要素です。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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