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幸福・成功のための哲学21一感謝①

岩崎勇 日本の会計、国際会計、税務会計、監査論、コーポレート・ガバナンス、西洋・東洋思想と倫理、経営哲学

19/08/07

 松下幸之助・稲盛和夫の哲学においては、「幸福」や「成功」が中心的なものとなっている。
 前者の幸福の例でいえば、例えば、松下幸之助では、「繁栄による平和と幸福」(PHP)の研究のために、周知のように、「PHP研究所」を設立し、様々な活動を行っている。ここでは、幸福とともに繁栄と平和とが掲げられている。他方、稲盛和夫では、京セラの経営理念として、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」として、物心両面の幸福を中心的なものとして考えている。

1 感謝の法則の意義
 人生の法則の第6は、「感謝の法則」である。これは、人生において生じるすべての事象を「当然・当たり前」と考えたり、「否定的」に考えるのではなく、肯定的に捉え、感謝の気持ちで、ポジティブに考えて行動すれば幸せとなれるということであり、幸せになるためには、必須なものである。

2 吾唯足知と感謝神経
 この感謝と密接に関連する満足にして、わが国には昔から「満足の哲学」がある。すなわち、石庭で有名な京都の龍安寺にあるつくばいに、「吾唯足知」(吾唯足るを知る)という有名な言葉がある。これは (西洋的な物質文明を基礎とする自らの生存水準を超えた生活の論理に基づく欲望を抑え) 、現在自分に与えられた状況に、東洋的な精神文明における心の豊かさである「あるある精神」を基礎として満足・感謝することによって、幸せになれる、ということである。すなわち、幸せのためには、現在自分の持っているものに満足し、それを楽しむ方が、自分の飽くなき欲望に従ってより多くのものを手に入れようとして苦しむよりも、より幸せになれる、ということである。言い換えれば、満足・感謝が幸せの大切な入り口の一つだからであり、満足・感謝と幸せは一つのコインの裏表である。
 しかし、残念ながらこの精神的豊かさは、現代の唯物論的で物質万能主義的な西洋文明の進展と反比例して、ますます衰弱化してきている。それゆえ、外面的で物的な欲求を追求するのではなく、もっと自己の内面的な豊かさを追求することが大切であろう。そして、心の豊かさがあれば、多くの感謝を感じられるようになる。
 前述のように、人は満足し、心地よいときに、幸せを感じるものなので、幸せになる秘訣の一つは、どんな小さなことにも感謝できることに気づき(「感謝への気づき」)、それに感謝する習慣や精神(「感謝神経」)を身につけて、できるだけの多く満足・感謝を日常的に感じることである。言い換えれば、謙虚さと素直さによって「感謝分岐点」を下げ、日常的にできるだけ多くの小さな楽しさや感謝を感じられるようになること(「感謝感度」を上げること)が、より多くの幸せを感じ、いつでも幸せでいるためのポイントである。反対に、謙虚さや素直さを忘れ、利己的な欲望に囚われて普段から不平不満ばかり言っている人は、幸せでない状況を自ら作り出し、幸せになることを自ら拒否している哀れで不幸な人である。このように、心の姿勢が、人を幸せにも不幸にもし、延いては人生の一切を支配し、創り出している。

3 関心領域と影響領域
(1) 関心領域と影響領域
 私達を取り巻く領域には、図表1のように、「自分が関心のある領域」(「関心領域」)と、「自分が影響を及ぼすことができる領域」(「影響領域」)の二つがある。

図表1 関心領域と影響領域
happiness21-1.png

 この場合、幸せとの関係において注意すべきことは、いかに自分の関心がある領域であっても、自分の影響を及ぼすことのできない領域のことは、全面的に受け入れることが大切である。これを受け入れないで、不平不満をいつも思ったり、言ったりしていると幸せにはなれない。他方、自分の影響を及ぼすことのできる領域のものごとであれば、より理想的な状況を導くために、積極的に努力をすることが大切である。
 なお、前述の不平不満をいう人の中には、「現状に満足してしまえば、進化も向上もないのではないか」ということを主張する人もいる。しかし、それは誤りである。なぜならば、図表2のように、現在の自己の状況に満足・感謝し、幸せを感じ、それをエネルギーとすると同時に、そのエネルギーで積極性を発揮して、現在不足しているものを補強するために進化向上も目指す、という両方の長所を最大限生かすことが、より望ましいからである。この両者を上手くバランスさせていくことが、幸せ上手になる一つの秘訣である。

図表2 満足と進化向上
happiness21-2.png

(2) 幸福への片道切符と笑門来福
 このように、誰でもが求めている幸せであるが、これを得る究極の方法はあるのか。
 答えは、Yesである。前述のように、幸せは極めて主観的なものなので、自分が幸せと感じたときが、幸せなのである。しかも、図表3のように、人間は謙虚に満足し、感謝し、楽しみ、喜びそして笑っているときに、必ず幸せを感じている。

図表3 幸福への片道切符
happiness21-3.png

 したがって、幸せをできるだけ多く日常的に感じるノウハウは、この満足、感謝、楽しみ、喜びと笑いという心地よい状態を、他人が与えてくれるのを待っているのではなく、できるだけ多く自分自身で作り出す努力をすることである。すなわち、簡単にいえば、「満足・感謝・楽しみ・喜び・笑いの習慣を身につけること」(「満足・感謝・楽しみ・喜び・笑いの習慣化」)であり、そのためには、どんな小さなことでも、その良い側面・明るい側面・積極的な側面に着目し、満足や感謝などの対象となることに気づき、それに感謝するように努力することである。そして、いつでも、このような心地よい状態を維持できるように、自己を上手く自律的にコントロールし、いつでも自分の機嫌を上手に取って行くことが、真の幸せ上手となるコツである。このように、「感謝と幸せとは同じコインの裏表」であり、感謝を感じられるほど、幸せになれるという関係にある。
 このように、どのような小さなことにも反射的に「ありがたい!」「良かった!」と感謝する感謝神経を身につけて、物事の良い側面に着目し、ドーパミンの作用によるポジティブな快感を感じ、幸せに向かって常に努力するということが、真の幸せにつながってくる。しかも、笑いや楽しいということだけで、安らいだ癒(いや)しの境地となり、その結果、免疫力が高まり、心身の健康をもたらしてくれる。このように、幸せは他者から与えられるものではなく、自分から作り出すものである。人生は幸せな方が心穏やかで、平安である。お金は1円もかからない。このような習慣を身につけることによって、生き方一つで、人間は自由自在に幸せになれる、ということが真理なのである。内心の心地よい状態の表れである自然な微笑みが美しい人でありたいものである。
 このような心掛けによって、自己の住む世界を明るいものに変え、「笑門来福」を実現することができる。なお、「笑い」は、他の動物にはない、人間にだけ与えられた特権であり、ネガティブな感情から解放してくれる解毒剤であり、健康や幸せのための特効薬でもある。これを大いに活用して、幸せになりたいものである。そして、実際、笑顔をするだけで、緊張が緩み、一瞬にして幸せになれる。

3 むすび
 成功・幸福のための哲学においては、成功し、幸福に生きるために、「感謝」で生きることが大切である。

分野: コーポレートガバナンス 財務会計 |スピーカー: 岩崎勇

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