QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

SDGsと企業の社会的責任(CSR)

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/07/29

CSRとは企業の社会的責任のことで、簡単に言えば企業が経営活動において社会に迷惑を掛けないこと、社会からの期待に応えていくことである、とまとめられるということを先般話しました。今日は、昨今話題となっているこのSDGsがCSRとどのような関係にあるか、これについて話していきたいと思います。

このSDGsという言葉を最近本当によく聞くようになりました。子ども向けのニュースを解説する本などにもSDGs特集が組まれていたりします。しかし、SDGsをきちんと説明しなさい、と言われても出来ない方も多いかもしれません。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、この頭文字を取って「S」「D」「G」「s」です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。もう少し分かりやすい言葉で言うならば、「地球環境や人々の暮らし、経済活動などがこの先ずっと続くようにするために定められた国際的な目標」ということが出来ます。

SDGsは民間や特定の地域で定められたものではなく、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された国際的な目標です。ゆえに、全ての国連加盟国において達成を目指すべき行動目標と位置付けられています。

具体的には様々な目標が掲げられており、全ては紹介出来ませんが、持続可能な世界を実現するために社会・経済・環境・技術など幅広い分野において、目標が定められています。その数は約17です。いくつか例を挙げると、貧困や飢餓を無くすこと、質の高い教育が皆に行きわたること、女性の社会進出を促進し男女平等の社会を目指すこと、経済成長と生産的で働き甲斐のある雇用を確保すること、平和を実現すること、気候変動への対策、持続可能な産業化技術革新の促進などがあります。また、これらの目標を実現するためにより具体的な目標を定めた169のターゲットも示されています。詳細はSDGsで検索すると、様々なサイトで一覧と解説が表示されているので是非ご覧ください。

この目標の達成は、世界各国の政府や自治体、非政府組織、非営利団体だけではなく民間企業や個人などにも共通した目標とされています。やや誤解を恐れずに言えば、地球上の全人類(個人)にも達成が求められているということです。実際に17分野の目標を示すターゲットの中には育児や介護、家事という家庭内の無報酬労働を評価し責任を分担するなど、日常生活でも取り組めるものが多く存在しています。

CSRとこのSDGsはどちらも社会貢献の意味合いを持っていますので、なかなか分類は難しいと思います。ただし簡単に言えば、SDGsは企業がCSRにおいて今、具体的に何をすれば良いかを示す1つの指標であると捉えることができます。繰り返しになりますが、CSRとは企業が経営活動において社会に迷惑を掛けないこと、そして社会からの期待に応えていくこと、これを実践することだとまとめました。では、具体的には何をすれば社会の迷惑となり、何をすれば社会の期待に応えたことになるのでしょうか。よくよく突き詰めてみるとかなり難しいです。もちろん、企業自身が自問自答することは重要ですが、やはり社会の多くの人々が賛成した何らかの基準があると、よりCSRの合理性が高まるのです。実は、SDGsはこの基準としてかなり有用です。SDGsはグローバルな議論を通じて、全世界の組織や人々が社会のために取り組むべき目標を示しています。ゆえに、経営活動がこの目標に反しているのか、あるいは目標達成に貢献しているのかを軸に、企業は自社の活動が社会に迷惑となっているか、あるいは社会の期待に応えているかを具体的に判断することができるのです。これは企業のCSRの実践を具体的に考えるにあたって、とても心強いと思います。また、それだけではなく個々の企業におけるバラバラなCSRを、世界的な社会課題の解決に向けて統合するにあたっても大変有用であると思われます。CSR=企業の社会的責任を果たすために、具体的にSDGsの1つ1つの目標というのを確認していきながら、それを達成できるような取り組みを企業もしていくと良いということです。

実際に世界的にも、企業はSDGsを自分たちの会社のCSR活動に利用しており、かつその利用が増加しています。企業のCSR報告書を見てみるとSDGsの観点から自社のCSRを整理して見せているものが大変多く見受けられます。更にこの傾向は日本においても、海外においても同様に見られます。また、企業によってはSDGsに掲げられた目標から自社のCSR活動を再評価してみて、自社の取組が不十分な分野に対して新しいCSR活動を模索するという戦略を講じている事例もあります。今後は様々なSDGsを利用したCSR活動が増えていくと思われます。

今日のまとめ:
SDGsとは地球環境や人々の暮らし、経済活動などがこの先もずっと続くようにするために定められた国際的な目標と言えます。そして、SDGsは企業が自らのCSR活動において、何をすれば社会の迷惑となり、何をすれば社会の期待に応えた事になるのかを判断するにあたって、とても有用な判断基準となりえます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

トップページに戻る

  • RADIKO.JP