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多角化戦略とマネジメント・コントロール

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/07/11

前回、企業の多角化戦略と組織・人材戦略の関係についてお話ししましたが、今回は、多角化戦略と中長期計画や予算、報酬(インセンティブ)などのマネジメント・コントロールのツールとの関係について考えます。

企業は戦略に沿った組織を構築したとしても、そこに首尾一貫したマネジメント・コントロールシステムが無ければ、効果的に戦略を実行することはできません。従って、戦略が異なればコントロールシステムもそれに合わせて設計されることが必要ですが、異なる多角化戦略を採用した場合についても当て嵌まります。

まず、企業がコングロマリット戦略を採って幅広い事業を行う場合、本社レベルのシニア・マネジャーは多岐に亘る各事業部の活動について、必ずしも十分な知識や経験を持ち合わせませんし、現場で何が起こりつつあるかの情報を逐次把握することも難しくなります。そのため、シニア・マネジャーは自らの持つ特定の事業に関する知識で、分野の異なる事業を適切にコントロールできると期待すべきではありません。また、評価を行うにあたっても、主観的な評価をするためにはそれに応じた非公式な情報を入手する必要がありますが、それが難しければ、客観的な基準に基づいて評価せざるを得ません。

単一市場戦略や関連複数市場戦略を採る企業の場合には、事業部は企業全体に通じるコア・コンピタンス(キャノンの場合の画像イメージ技術)を共有し、それをベースに活動しています。そのため、事業部間のコミュニケーション・チャンネル(通信回路)や事業部間でコンピタンスに関わる技術の移転ということが重要になります。これとは対照的にコングロマリット戦略を採る企業では、事業部間の相互依存性が少ないことから、コントロールシステムの上では、事業部間の協力促進から独自の道を行く起業家精神育成型にバランスを移すべきです。

また、中長期計画の策定に当たっては、事業部相互に依存性の少ないコングロマリット型では垂直的作成システム、つまり、事業部の策定した計画案を、直接シニアマネジメントが承認するようなプロセスを採るべきなのに対し、単一市場戦略、関連複数市場戦略を採る企業では、プラス水平的作成システムが望ましくなります。これは、シニアマネジメントのチェックの前に事業部門間の擦り合わせのプロセスを織り込むものです。

予算については、単一市場戦略企業では、シニア・マネジャーが現場の知識を十分に持っていてハンズ・オンでコントロールすることも可能なので、予算の役割は相対的に低くなります。つまり、予算に頼らなくともコントロールが可能ということです。これに対し、コングロマリット型ではその逆で、ハンズ・オンでコントロールすることは不可能なことから、予算などの公式的ツールに依存せざるを得ません。しかし、その予算の策定に当たっては、シニア・マネジャーよりも事業の知識を持つ部門マネジャーが強い影響力を持つべきです。

企業内取引、即ち事業部門相互間の取引は、コングロマリット戦略企業よりも単一市場戦略企業や関連複数市場戦略企業の方が多くなりがちですが、コングロマリット型企業では取引価格に市場価格を用いて外部からの購入も自由化とすべきなのに対し、単一市場型や関連複数市場型企業ではシナジーを重要視する観点から、外部調達は認めないことが多くなります。

業績連動報酬の採用については、コングロマリット型企業では個々の事業部門の詳細をシニア・、マネジャーが知るのは難しいので、客観的な財務指標により評価せざるを得ませんが、その際、企業全体の業績ではなくて当該事業部門の業績を重視すべきです。これに対し、単一市場型、関連複数市場型企業では、事業部門間で相互に影響を与え合う関係にあることから、その事業部の財務的な指標を厳格に用いて評価・計算するのが望ましいとは言えません。寧ろ当該事業部門の業績ばかりではなく、より大きな事業グループ、或いは企業全体の業績を勘案すべきです。各事業部門単独の業績を強調し過ぎると部門間の摩擦を招きますが、企業全体の業績を強調すれば、部門間の協調が強まることが期待されます。

このように、マネジメント・コントロールのデザインにあたっては、企業の多角化戦略の在り方に応じて、各ツールの基本的な用い方も変わってくるということを意識する必要があります。

まとめ:組織の構成員によって戦略が実行されるよう、組織内に作るシステム(仕組み)がマネジメント・コントロールシステムですが、戦略如何でその在り方は影響を受けます。企業が採用する多角化戦略の如何についても同様で、単一市場型、複数関連市場型、或いは複数の関係の薄い市場に跨り事業を行うコングロマリット型のどの戦略を採るかで、シニア・マネジャーが事業部門に関与する度合い、中長期計画の策定プロセス、予算の重要度及び作成方法、企業内取引や移転価格、業績連動報酬体系のあり方など、コントロールシステムの各ツールの基本的な条件が変わってきます。こうしたことを意識した上でシステムをデザインすることが望まれます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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