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多角化戦略と組織・人材戦略

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/07/10

以前のこの時間で、「中長期計画、予算・報酬と事業環境」というテーマで、不透明性が高くて予見可能性が低いといった、それぞれ異なる事業環境の下で戦略を実行する際、中長期計画や予算、報酬制度といったマネジメント・コントロールのツールを如何に活用すべきかについて話をしました。今回と次回の2回は、企業によって異なる多角化戦略の下での、組織・人材戦略とマネジメント・コントロールの在り方ついて考えてみます。

企業の事業戦略の第一歩として、どういう事業を行うのか、どの市場で戦うのかという、事業ドメインの選択(ドメイン戦略)を行わねばなりません。企業の中には、単一の市場のみで勝負しようとする「単一市場戦略」をとる企業もあれば、関連する複数の市場において事業を行う「関連複数市場戦略」をとる企業もあり、更には、相互にあまり関連しない複数の市場で事業を行う「コングロマリット戦略」を採るところもあります。「単一市場戦略」と「コングロマリット戦略」を多角化戦略の2つの極と考えれば、「関連複数市場戦略」をとる企業を始め、全ての企業の多角化戦略はそれらを結ぶ直線上のどこかに位置することになります。このように多角化戦略に違いがある場合、その企業の組織・人材戦略にはどのような影響が及ぶでしょうか。

単一市場戦略を採る企業の例を挙げれば、多くの石油会社や電力会社などが含まれるでしょう。中には関連事業を手掛けているところもありますが、その本業に対する規模は小さいのが一般的です。関連複数事業戦略を採る企業は多いですが、流通業に属するセブン・アンド・アイやイオンなどが例として挙げられます。中にはスーパーだけでなくコンビニ、モール運営、更には百貨店など、大きく流通分野として括られる様々の事業を手掛けている(銀行なども作っており、それは流通業とは言い難いが、ここでは捨象する)ところもあります。最後のコングロマリット戦略企業の例としては、一頃のGE(General Electric)や,
日本では総合商社やヤマハなどが挙げられるでしょう。

企業が戦略を実行する上では組織の在り方が大きな影響を持ち得ます。逆な言い方をすれば、企業は戦略を実行するためにそれに適合した組織を構築するべきです。その際、最も基本的な組織の構造として、「機能型組織」と「事業部組織」の二つの形態がありますが、機能型組織では、企業が有する各機能、例えば製造や販売、開発や調査研究などの各機能が、それぞれ現場からシニア・マネジャーまで独立した系統を持ち、機能間の調整はシニア・マネジャー層で行われます。これに対して事業部組織では、単一の事業を行う複数の事業部に分かれ、それぞれが製造や販売などの機能を持つので、各機能間の調整は現場に近い事業部内で行われます。

それでは先に見た多角化戦略とこうした組織戦略はどう関係するでしょうか。まず、単一市場戦略企業の場合、基本的には事業部組織より機能型組織を採り易いと思われます。というのは、企業のコア・コンピタンス(中核的強み)に沿って一貫した機能別市場戦略を構築することが合理的となるからです。これに対して関連複数事業戦略企業の場合は、シナジーを生かしつつも現場に近いところで意思決定を行う事業部制を採っているケースが多くなります。さらに、コングロマリット型企業となると、同じ事業部制でもそれぞれの事業部の独立性が高くそれぞれコア・コンピタンスも異なることから、企業トップの役割は事業ポートフォリオ管理(特に資金配分)に近くなり、持ち株会社的形態を採ることも多くなります。また、単一市場戦略企業による機能型組織では、各機能についての知見を持つ人がそれぞれのシニア・マネジャーとなるケースが多いですが、コングロマリット戦略企業の場合は、シニアマネジメントが各事業についての専門的知見を持たないケースが多く、ファイナンス畑出身者が多くなる傾向にあります。

また、単一市場戦略からコングロマリット戦略に移行するに従って、事業を担当するマネジャーの裁量性が増しますが、それには2つの理由があります。第一の理由は、多角化傾向が強まるとシニア・マネジャーが各事業についての知見を持たないことが多くなるので、現場に近いマネジャーよりも事業上の意思決定を適切に下すことが難しくなります。第二には、多角化傾向が強まると、事業間の相互依存性が下がって独立性が高まることから、事業間の調整のためにシニア・マネジャーが介入する余地も少なくなります。逆に相互依存性が高い場合はそれだけシニア・マネジャーの介入を招くことになり、事業担当のマネジャーの裁量性は限られることになります。

シニア・マネジャーによる事業への介入が減る結果、コングロマリット型企業では本社業務のスタッフの人数も相対的に少なくなります。そして事業部間の関連性が薄いことから、企業内からのシニア・マネジャーへのプロモーションや、事業部を跨る人事異動なども少なくなります。こうしたことから、コングロマリット型企業では単一事業企業などに比べて、単一の凝縮化した強力な「企業文化」を持つのが難しくなります。

企業が多角化による成長をもくろむ場合(M&Aなども含めて)、このような事業多角化戦略に即した組織戦略の構築が重要といえます。

まとめ:企業が多角化を志し、複数の関係の薄い市場に跨って事業を行うコングロマリット戦略を取る場合、単一市場戦略や関連複数市場戦略を取る場合とは、担当事業部門の独立性やシニア・マネジャーの専門領域、本社機能の規模、企業文化の持ちやすさなどの点で条件が変わってくることを意識した上で、組織戦略を構築することが望まれます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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