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MaaS(マース)①

星野裕志 国際経営、国際物流

19/07/17

日頃車を運転されていますか? 確かに福岡市内は交通機関が便利ですから、自動車はあまり必要ないともいえます。それでは、こんなケースはいかがでしょうか。

最近九州大学のある福岡市西区にある伊都キャンパス、ソーシャルビジネス研究センターのある南区の大橋キャンパス、ビジネススクールの授業をする博多駅キャンパス、それから東区の大学でも教えているので、早良区にある自宅とのあいだで、毎日のように市内をぐるぐると回っています。普段は車なので楽ですが、現在修理に出しているので、この間の移動は大変です。

これらの移動は、地下鉄、JR、西鉄の電車とバス、昭和バス等の組み合わせになります。幸い交通系カードで、運賃の決済自体は簡単ですが、なかなか時間的にも無駄が多いと感じています。もっと効率的な移動はないのかなと考えることがあります。ということで、今日は新しい交通サービスについて、お話したいと思います。

複雑な移動の問題を解決してくれるような方法が必要です。大都市圏でも地方でも、交通手段として自家用車に依存しているところは多いと思います。それに対して、公共交通機関を利用した効率的な移動もそうですが、今後想定される高齢化や過疎化、渋滞などの環境配慮などの視点から、自家用車からの脱却にも繋がる方法が考案されています。

それが、MaaS(マース:Mobility as a Service)といわれる「サービスとしての人の移動」を意味する世界的に注目されている仕組みのことです。どのようなサービスかというと、ICTを活用することで、公共交通機関を中心に利用して、目的地まで自家用車と同じように効率的かつスムーズに移動するシステムです。

具体的には、鉄道、バス、タクシー、レンタカーという既存のサービスや、最近出てきたカーシェアリング、バイクシェア、配車サービスといった多様なサービスを組み合わせながら、必要なサービスを必要なときだけ利用して、ルートの検索、予約、決済機能をシームレスに行うことです。

確かにどこかに行く時に、交通のアプリで電車の時刻や乗り換えなどの経路を調べるということをしていますが、同時に予約ができて、支払いも同時にできるとなると本当に便利になります。最近のシェアリングエコノミーの浸透で、自動車を持たなくてももっとも良い交通の組み合わせによって、シームレスに最終目的地まで行くことができるとなると、様々な問題の解決にも繋がってきます。

もうこのような取り組みは現実的に動き出しています。国内でもトヨタとソフトバンクが組んで取り組みを始めたり、西鉄、小田急電鉄や、JR東日本といった電鉄会社が、アプリやプラットフォームの開発に着手すると言う動きが出てきています。

実際に、昨年11月から今年の春にかけて、西鉄とトヨタは福岡市周辺を対象としてMaaSの実証実験をされていたようですが、世界ではもっと先進的に実用化されているところもあります。世界では、フィンランドがMaaS発祥の地のひとつと言われ、ヘルシンキでは既に実用化されているので、その例をご紹介するとわかりやすいかもしれません。

たまたまゴールデンウイークにヘルシンキに行って、このシステムに遭遇し、早速にフィンランドの国土交通通信省を訪問して、この世界最先端の取り組みの資料をいただいてきました。

ヘルシンキの市内は、鉄道やトラムと呼ばれる路面電車やバスなどの公共交通機関が、とても充実していて、さらに島と市内を結ぶフェリーなども、市民の足になっています。そこにタクシー、レンタカー、カーシェア、シェアバイクまでを一元的に組み合わせて、「Whim(ウィム)」というサービスを提供しています。

しかし、選択肢がありすぎて、どう選んでよいのだか戸惑うかもしれません。それをこのシステムでは、最適なコースと方法を瞬時に提案してくれることになります。例えば、自宅からちょっと離れた鉄道の駅まではタクシー、鉄道で移動して、路面電車に乗り換え、最後は自転車で目的地へ。駐車場や乗り換えの無駄も気にすることなく、最適な移動ができるということになります。

このサービスの費用はアプリで簡単に決済するとしても、結構合わせると高額になるという問題が考えられます。そこがこの2016年に始まった「Whim」の優れているところですが、その都度の決済と共に、月間の定額パッケージのサービスがあります。

パッケージの一例ですが、1カ月に95ユーロ=11,500円を払うプランでは、月に鉄道は1,500キロまで、市内のトラムやバスは乗り放題、レンタカーは500キロまで、タクシーも100キロまで乗ることができる定額サービスです。より高額のタクシー、レンタカー、カーシェアやすべての交通機関が乗り放題のパッケージもあります。

考え方ですが、自家用車を購入する費用、駐車場、ガソリン、保険などの費用を考えると、このような選択も十分考えられるでしょうし、環境にも優しい選択と言えるのではないでしょうか。実際に導入してから、自家用車の利用が半減し、公共交通機関の利用がかなり増加しているようです。

今日のまとめです。世界的に注目されているMaaS(マース:Mobility as a Service)といわれる「サービスとしての人の移動」を意味する交通の仕組みをご紹介しました。ICTを活用することで、公共交通機関を中心に最適な方法を利用して、目的地まで効率的かつスムーズに移動するシステムです。公共交通の利用率の向上、環境にも優しいなど、多くの利点があり、今後日本国内を含めた早い段階での導入が期待されています。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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