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MaaS(マース)②

星野裕志 国際経営、国際物流

19/07/18

昨日は世界的に注目されているMaaS(マース)といわれる新しい交通の仕組みを紹介しました。ICTを活用することで、公共交通機関を中心に最適な移動方法を利用して、目的地まで効率的かつスムーズに移動するシステムが求められています。福岡でも実証実験が始まり、フィンランドのヘルシンキでは、既に実用化されているとのことでした。

ヘルシンキの市内は、鉄道やトラムと呼ばれる路面電車やバス、さらに島と市内を結ぶフェリーなどが、公共交通機関として市民の足になっています。それに加えて、タクシー、レンタカー、カーシェア、シェアバイクまでを一元的に組み合わせて、「Whim(ウィム)」というサービスが提供されています。

基本に複数の交通手段を活用するマルチモーダルと言う考え方と、昨今急成長しているシェアリング・エコノミーが、うまくシステムとして組み合わされているように思います。

必ずしも、大都市の市民の足として有効ということになるともいえません。ヘルシンキは首都とはいっても、人口は60万人くらいですし、首都圏として周辺を合わせても、130万人くらいのようです。

MaaSには、主に2種類の導入の可能性があると考えられています。一つ目は、大都市圏向けのMetro-MaaSと呼ばれるM型タイプです、もう一つが地方向けのローカルのL型タイプです。

それぞれに解決すべき課題や求められているものは異なるといえます。前者のM型タイプであれば、大都市の鉄道駅を中心に様々な交通機関の連携性を高めることにより、最終目的地までスムーズに達することができます。その結果交通の混雑や、駐車場不足などの問題も解決されることになります。

一方の地方向けのMaaSであれば、住宅や郊外型の店舗が鉄道駅から遠くに立地しており、過疎化や高齢化も進む中で、なかなかアクセスが困難なところも出てきています。最近問題になっている高齢者の運転も、なかなか他の交通手段がないために免許を返上できないと言う問題も存在します。

これらを様々な交通機関を連携させることで、それぞれの地域の課題が解消することになり、一方で既存の公共交通機関も利用者が増加し、利用率が上がることで、存続も可能になると言うことになります。

大都市でも地方でも、それぞれの人の移動に関する様々な課題解決に繋がる可能性があるわけです。MaaSをヘルシンキで展開するWhim の今年3月の調査によると、このシステムのユーザは、一般の人たちの平均の3倍公共交通機関とタクシーを組み合わせて使っていると言うことです。

また、家から最寄り駅の間の最初の1マイル、もしくは最寄駅から家までの最後の1マイルについて、公共交通機関と自転車やタクシーの組み合わせが使われていると言う結果が出ています。

まさにこのシステムの導入で、多様な交通機関の組み合わせが利用されており、利便性が高くなっていると言うことになります。

今まで歩かざるを得なかったところについても、交通が利用できると言うのも面白い効果です。そのように考えると、大都市や地方以外に観光地等での活用も、大いに期待できるのではないかと思います。最近九州の離島の連携プロジェクトで、長崎県や鹿児島県の離島に行くことが多いですが、島の中ではなかなか移動の手段がなく、レンタカーを使って観光名所を回ることが一般的かと思います。

そうなると免許がないと、なかなかバスなどの公共交通やタクシーで、全てをカバーするのが難しいと言う状況はあります。このような場合に島へのアクセスから始まって、島内のいくつかの交通機関の組み合わせと言うのも、利便性を高めるのではないかと考えます。

観光客にとっては、観光バスなどに乗らなくても、自分の行きたいところにいけるということにもなります。観光客といえば、最近の海外からのインバウンド客にとっても、MaaSは有効のように思えます。最近は、中国や韓国において、キャッシュレス化が急速に進行しており、旅行先などでも、現地の通貨を携帯することが少なくなってきています。

その点日本では、まだまだキャッシュレス化がそれほど浸透していないために、日本に旅行するためには、外国人観光客はあえて日本円に交換せざるをえないと言うことが生じています。少なくとも、交通に関しては、MaaSのようなシステムを利用することで、全ての交通機関のサービスが企業を超えて統合され、決済が一元的に行われるとなると、その問題は解消されます。

日本政府の推進するインバウンド客の増加には、その障害となる通貨の問題や決済の問題を早急に解決するべき課題だと思いますので、MaaSはその有効な解決法にもなります。

MaaSの普及で、とても便利になると思います。実際に今でも交通機関のアプリを使って、目的地までの経路の検索をしていますよね。また、タクシーに来てもらうのも、登録してある住所に説明しなくても来ていただけます。さらに、最近は、車や自転車のシェアが手軽にできるようになっています。そう考えると、このようないくつもの便利なサービスが、一元化されることにより、アプリで最適なパターンが提示されて、それぞれの予約ができて、決済も済ませられるのならば、本当に良いことだと思います。

今日のまとめです。昨日に続いて、多様な交通手段を活用するマルチモーダルとシェアリング・エコノミーが、うまくシステムとして組み合わされているMaaSの利便性についてお話をしました。このシステムは、大都市でも、地方に行っても、観光地でも、有効に機能しそうです。MaaSによって、自分の住んでいる場所であっても、出張や旅行の訪問先であっても、交通機関の選択肢があることで、利便性も効率性も高まり、また自動車を所有する必要もなくなってくるかもしれませんね。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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