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中長期計画、予算・報酬と事業環境(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/06/05

前回は、戦略実行のために中長期計画や予算といった経営上のツールを利用する場合、置かれている事業環境によって使い分けが必要という話をしました。今回は、同じように事業環境が異なる状況下で、単年度予算の策定と運用、そして報酬政策について、どのような使い分けが必要かについて話したいと思います。

前回もお話したように、設立間もない企業の場合とか、新たな成長市場に乗り出してシェアを高めようとする場合、或いは競争戦略として低価格ではなくて差別化を志向するような場合、さらに革新的な技術によって市場環境が激しく変化しつつあるといった場合には、不透明感が強く、先のことを見通すことが難しくなります。これに対して、成熟市場で事業を継続的に行う場合や競争戦略として低価格戦略を志向する場合などは、市場環境が概ね把握出来ており、予想を裏切るほどの大きな変化はそれほど生じないことから、予測可能性は高くなります。こうした違いがある場合に、予算の策定や運用、そして報酬政策にあたって、どのように違いを意識すべきでしょうか。

まず、変化が激しくて不確実性の高い事業環境の場合、予算の策定に当たって現場のマネジャーがシニア・マネジャーとよく相談すべきなのは、予算の内容そのものよりも方向性についてであって、予算の具体的な内容の決定については、シニア・マネジャーよりも、現場のマネジャーがより大きな影響力を持つべきです。何故ならば、そうした事業環境では、現場のマネジャーの方がより必要となる情報や知見を持っていることが多いからです。また、一旦予算を策定した後の見直しについても事業環境が異なれば異なった対応が必要になります。

やや話はそれますが、一般に、3年とか5年の中長期計画について、予算と同様に一旦策定したらそれを必達しなければならないと考える方が少なからずおられます。しかし、そもそも、3年とか5年先の市場の見通しの信頼性はそれ程高くないのに、そうした不確かな予測に基づく計画に縛られることが適切と言えるでしょうか。むしろ、環境変化があった場合には柔軟に戦略を見直し、中長期計画もそれを反映して見直すべきかもしれません。

これとは逆の話になるのですが、予算については、一般に1年間という限定された期間の計画なので必達すべきで、特別な事情が無い限り見直しを行わないのが基本になっています。しかし、不透明な事業環境にある場合には、逆に中長期の戦略に基づく中期計画を達成するためには、より長いスコープで意思決定をするために、逆に予算の見直しについてより柔軟に考えるべきということがあり得ます。

また、一般に予算は、ボスと部下が相談し、双方納得の上で策定するものであることから、部下が上司に対して行うコミットメント・約束という面を持っており、それ故に、ボスが部下のパフォーマンスを評価するための基準となり得ます。しかし、不確実性が高い事業環境の下では、成果を合理的に期待することが難しいことから予算の持つ評価の尺度としての機能が減殺されます。つまり、下振れが必ずしもそのまま部下のパフォーマンスが悪かったことを意味せず、同様に上振れしても、そのままパフォーマンスが良かったことの証拠にもなりません。従って、そうした事業環境ではパフォーマンスを評価する為の基準として予算を過剰に重視すべきではなくて、1年間の単なる行動計画としての正確が強まることになります。これに対して、予見可能性が高い事業環境においては、担当マネジャーの成果について合理的に期待することが可能なわけで、予算は評価の基準として重視されます。

このこととも関連して、次の報酬の決め方にも違いが生じます。業績連動型ボーナスの金額を決めるためには、どういうタイム・スパンの指標をどういうウェイト付けで用いるか。そして、客観的な要素と主観的な要素等のバランスをどうとるかがポイントとなります。その点、不透明感の強い事業環境で事業を担当するマネジャーの評価の場合、年度単位の予算では測れないような中長期的な視点を持つ必要があることから、長期的な指標に大きいウェイトがおかれるべきです。逆に、予見可能性が高い事業環境で事業を担当するマネジャーの場合には、短期的な指標に重点を置いて評価するということが考えられます。

次の客観的な要素と主観的な要素のバランスという点では、不確実性の高い事業環境の場合は成果の期待値としての基準値の信頼性が低いわけで、その分だけ客観的な指標だけでは正しく評価し難いことになります。その為、予見可能性の高い事業を行うマネジャーに比べて主観的な要素をより多く取り入れて報酬を決めてやるのが適切です。

このように、予算やそれを用いた評価方法、報酬の決め方についても、事業環境の如何によらず一律適用というのは必ずしも好ましいと言えず、置かれている事業環境を見定めたうえで、使い分けることが必要といえます。

今日のまとめです。不確実性の高い事業環境で事業を行う場合、予算策定にあたっては相対的に現場の声を重視すべきで、予算見直しに対しても、環境変化に応じて柔軟に臨むことが必要となってきます。また、担当マネジャーの評価にあたっては、予算というより長期的視点の尺度をより重視し、さらに、主観的な判断も加味することが必要になってくるといった違いが考えられます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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