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管理職の報酬について(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/02/28

日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が、自らの役員報酬について金融商品取引法上の有価証券報告書への開示義務違反の容疑で逮捕されたことと関連して、役員の報酬の在り方が話題となっています。経済がグローバル化する中での経営層・管理職の報酬について、採り上げてみたいと思います。

 日本企業の経営層の報酬については、固定的な報酬の割合が高く業績に連動する部分が少ないことから、株主の代理人としての機能を果たすメカニズムが働きにくいとして、コーポレートガバナンスの観点から問題が指摘されてきました。この点については、徐々にではあれ改善が図られつつありますが、まだ十分とは言い難い状態です。

海外も含めて見た場合、一般に経営者・管理職の報酬は3つの部分からなっています。第一はサラリーと呼ばれるもので、毎月決まって支払われる給与にあたります。二番目は、ベネフィットと呼ばれるもので、退職金や福利厚生、さらに車の貸与などのperquisite(役得、特典)などが含まれます。このperquisiteの内容は国によって様々で、日本では従業員も同じように恩恵を受けているものが多くなっていますが、典型的な例としては社宅などがこれに当るといえましょう。海外では管理職以上に対して、車の貸与ばかりでなく、ガソリン代の支給なども行われています。そして、三番目が業績反映部分であり、海外で言うところのボーナスです。

日本でも昔からボーナス(賞与)という名目で報酬が支払われてきました。しかし、その導入当初はともかく、日本におけるボーナスは長い間、少なくとも働き手の観点からは「生活費の一部」として認識されてきており、それを反映してと思われますが、金額はそれ程業績に連動してきた訳ではありません。そのため、日本でいうところのボーナスもここでは固定的なサラリーに含めて考えた方が適切かもしれません。経営層や管理職に対する報酬ついても、こうした傾向を引きずっているため、業績連動割合が低くなっていると考えられます。これに対して海外では、報酬に業績を反映させることは、企業の戦略実行のための動機づけとして重要視され、積極的に活用されています。

この報酬の業績反映部分については、短期的視点を持つものと、長期的視点を持つものに2分されます。前者は、毎期の予算達成に努力するよう動機づけるためのもので、後者は、会社の中長期的な成長のための努力を促すためのものです。この2つのバランスを上手く取ることが重要ですが、今回は、前者の短期的な視点に基くボーナスについて、見ていきましょう。

業績反映型報酬の運用実績が豊富な海外企業では、活用するためのノウ・ハウとして、次のような仕組みを持つところが多くなっています。即ち、①企業全体で支払うボーナスの金額を企業の「利益」にスライドさせる、②しかし、そのままでは、業績不振時にもボーナスが出ることになるので、ボーナスが支払われる最低利益を、例えば一株当たり利益で決めておく。③更にその場合でも、業績がそれ程良くなくても企業の内部留保が積み上がるだけで黙っていても一株当たり利益が増えてしまうことから、そうした効果を無くすための調整を織り込む―――といったことです。

また、結果としてボーナスの金額の振れ幅があまりに大きくなると、期待しない弊害が生じる可能性もあることからそれ等を防ぐために、「持ち越し(carry over)」や、「分割払い(Deferred Compensation)」といった仕組みを採用しているところもあります。「持ち越し」とは、業績の良い年のボーナス全額をその年度に支払うのではなくて、一部を後の業績の悪い年、或いはそれ程良くない年の補てんに使う仕組みです。支払い総額は変わらない訳ですが、所得面での振れを抑えることができます。また、「分割払い」とは、読んで字の如く、その年度の業績に基づくボーナスを数年度に亘って分割して支払う仕組みです。これも支払総額は変わりませんが、平準化されることで所得の振れが小さくなり、同時に各年度大体の受取金額の予見可能性も高まり、税制面も含め受取側にメリットがある仕組みです。また、ボーナスの未払い部分が残ることで転職を防ぐ効果、「黄金の手錠(Golden hand-cuff)」もあります。逆に、こうした調整が過大となると、そもそも事業年度の業績と紐づけして動機づけしようという業績反映報酬のメリット、効果が薄れることになりますので、限度はあります。

 さらに、サラリーとボーナスの割合をどうすべきか、といった点や、ボーナスの基準として企業全体の業績と所属・統括する部門の業績のどちらを重んじるべきか、といった点については、その企業が単一産業企業か、複数の関係がない産業に跨るコングロマリット的な企業であるかという点や、所属・統括する事業本部が成長分野にあるのか、成熟分野にあるのかで異なってくるなど、これまで様々な知見が積み上げられて来ており、理論化されています。

日本企業はこれまで年功序列型の賃金体系を維持してきて来たわけですが、グローバル化やダイバーシフィケーションも本格化し、旧来の雇用慣行を何時までも引きずっている訳には行かなくなっています。これまで限定的にしか導入してこなかった業績連動型報酬ですが、本格的な活用に向けて、学ぶべきことは多いと思います。

まとめ:経営層や管理署の報酬のあり方、特に業績連動報酬については、海外では運用の成果として知見・理論が豊富に蓄積さており、参考にできるものは多いと思います。

分野: 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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