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書籍「ファクトフルネス」から学ぶ世界を正しく見る習慣②

福田亮 組織行動とリーダーシップ

19/02/22

前回は、「ファクトフルネス」という本についてお話ししました。私達は思い込みで物事を考えがちですが、思い込みだけではなくてきちんと事実に目を向けて客観的に物事を捉えようという内容でした。今日は引き続き「ファクトフルネス」という本から、2つのパターンをご紹介します。

1つは「直線本能」についてです。
この本の中では、私たちは「物事は直線のようにひたすら増え続ける」という感覚を持ちすぎていないかということが書かれています。この本の中では、世界の人口を例に書かれています。日本の人口は減少していますが、世界的に見れば人口は76億にまで増加しています。では、世界の人口は今後も増え続けるでしょうか。人口が増えるということは、生まれてくる子どもの数が増えることが大前提になりますが、15歳未満の子どもは、現在世界に約20億人います。国連の予測では、2100年の子どもの数は約何人になるでしょう。
A、40億
B、30億
C、20億。

普通に考えると、「人口は増え続ける」という前提に立てば、40億人を選ぶと思いますが、実はこの正解は「C、20億」です。子どもの数は増えなくなってくると予測しているわけです。そして、当然人口もとある段階で横ばいになると予測しています。これにはいくつかの理由があります。多くの国が豊かになっていきますが、豊かになると子どもの死亡率が低下します。子どもを生活する上での社会資本としての労働力という捉え方をすると、その人達を安定して賄えるようになります。そのため、豊かになると子どもの数を制限する「少子化」の流れが必ず起こってきます。つまり、豊かになり、子どもの死亡率が低下すると子どもの数をコントロールする国が多くなり、ある段階では総人口とともに15歳未満の子どもも横ばいになるだろうと予測されています。豊かになると子どもの数は減少していくという非常に興味深いお話です。

このように、常に右肩上がりのグラフをイメージするのではなく、様々なパターンを知っておく必要があります。そこで、いくつか例をご紹介します。

例えば「冷蔵庫の普及率」です。これもずっと右肩上がりかというと違います。当然裕福になり、ある程度満たされてくれば最初は普及率が上昇しますが、どこかの段階では横ばいになり、最後はフラットになっていくS字カーブを描きます。
その他にも、虫歯率もS字型、コブ型を描きます。豊かになると甘いものを食べる機会が増加するため、虫歯率も増加します。しかしある程度豊かになるとまた落ちてくるというように、虫歯に対する教育や医術の普及によって虫歯率も変化します。

このように、情報を理解出来るかどうかもグラフの変化に大きく関わってきます。最近注目されているものとして「指数関数的成長」があります。これは、情報は倍々ではなく、指数関数のように急激に拡大していくという成長の仕方です。つまり、全てが直線なわけではないということです。情報に人間の判断や印象に影響を与えるものとして「恐怖本能」があります。

ここでクイズをしてみましょう。台風や震災などの自然災害が世界中で起きているますが、自然災害で毎年亡くなる人の数は過去100年でどう変化したと思いますか?

実は、半分以下になっています。もちろんこれは長い時間軸で考えているため、「半分」というと少し語弊があるかもしれませんが、基本的には「数」という意味では半分に減っています。災害が起こった後の対応は、情報が上手く伝わるかが大きいです。そのため、識字率や情報網、インフラの整備状況により二次災害、三次災害が極めて多くなるため、やはり国の発展によってこうしたインフラが整備され、被害が最小限に抑えられるようになってきています。自然災害の発生は避けられません。しかし、ただ単に怖い怖いと思うのではなくて、きちんとそうした事実に目を向けて、何が出来るのかということを考えていくということも大切です。

災害は、一つの事象のインパクトが強烈であるために、その事象の印象が全体の印象を左右しやすいという特徴があります。もちろん、一つ一つの災害の事実や、そこでの様々な方のご苦労を受け止めるべきだと思いますが、全体で見た時にどうなのかということを捉える必要もあります。恐ろしいものは見たくないけど見てしまうという心理が人間には働くため、そこは冷静になって「どうなっているのだろうか」「これからどうなるんだろうか」ということを抑えるというのは大事なことかもしれません。

では、今日のまとめです。
世界を見る目をぜひ「ファクトフルネス」から磨いていただきたいと思います。人間の感情がいかに事実を捻じ曲げているかということを学ぶ上では凄くいいことだと思います。思い込みで物事を見ず、事実にきちんと目を向けてみましょう。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ 組織行動 |スピーカー: 福田亮

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