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中国の発展と対米覇権争い

村藤功 企業財務 M&A

19/01/16

今日は中国の発展と対米覇権争いという話をしたいと思います。中国に対するアメリカの見方がここのところ変わってきています。少し前まで、関与政策と言って、中国の発展を見守っていけば中国は次第に自由主義を導入して、欧米と同様な民主的な国家になると思われていました。ところが、ここのところ習近平政権が長期化してずっとトップに居そうな気配で、さらに、国家情報法という中国企業や中国人に国の情報収集に協力する義務を課す法律が施行されました。中国の国に言われたら、中国にいる民間企業でもアメリカにいる中国人でも「はーい」と言って、アメリカの秘密をゲットして中国政府に渡さなければいけないのです。これが法律として決められたので、日米の安全保障関係者はギョッとして怖くなったのです。中国人と中国企業が皆スパイになってしまったらちょっと冗談では済まないでしょう。

この間、ファーウェイの創業者の娘である副会長を、アメリカはカナダに逮捕させました。また、ソフトバンクグループの中で携帯電話事業をやっているソフトバンク社が上場したのですが、初値が公募価格を下回ったという事件が起こりました。一体何が起こっているのでしょうか?

アメリカがファーウェイやZTEといった中国企業を5社指定して、再来年位から政府はこれらの企業からもう調達してはいけないという法律を作ったのです。政府機関はファーウェイの基地局とか交換機とかを使って通信してはいけないというのです。ファーウェイのシステムの裏にバックドアを作ってそこから情報を取得して、国家情報法があるので、中国国家に協力をしている人がデータを盗み出すかもしれません。安全保障上の情報や先端技術情報を盗み出すという事が無いように、政府機関はファーウェイのシステムを使わないようにしました。

また、日本にも使うなと求めました。ソフトバンクは4Gの基地局で結構ファーウェイを使っていたので、「もっと沢山使った後に言われたら、もっと損をすることになる」と見て、現在使っている4G対応機器を他社製に交換し、5Gについてはファーウェイ製を使わないことにしました。現在の4G対応ファーウェイ製品をノキアやエリクソンの製品に交換しようとすると、1千億円位お金がかかると言われています。そのため、株式が上場しても少なくとも1千億は予定よりも価値が少なくなるため、株価が下がってしまったのです。そもそも、5Gでは中国がアメリカよりも圧倒的に進んでいます。中国にはファーウェイがあるのだけど、アメリカにはそういう企業がありません。ファーウェイは世界で一番Ph.D.を雇って研究開発にお金を使っている会社で、国際特許も世界一です。そういう意味では、既に幾つかの先端技術で中国はアメリカを抜いて一番になり始めているのです。

アメリカの疑惑は、ファーウェイのシステムのバックドアから中国人スパイが侵入することです。国家情報法上は中国人全てと中国企業全てが中国の国に対する義務を負うので、アメリカにいる中国企業もアメリカにいる中国人も中国国家に対する義務から、アメリカの機密情報を盗み出すかもしれないという懸念を抱いたわけです。それで日本にも使うなと言い、イギリスだとか、オーストラリア・ニュージーランド・カナダみたいな元イギリス諸国と、アメリカを併せて、ファイブ・アイズと呼んで情報をシェアして中国に対抗しようとしています。IoT(Internet of Things)とか言って、グローバルに世界のネットワークは繋がっていると言っても、本当は繋がらないことになるかもしれません。何故かと言うと、中国陣営対アメリカ・イギリス・元イギリス諸国陣営で、真っ二つに別れようとしているからです。また、皆、そもそも、顧客情報といった自分の会社の情報は、競争力を維持するために出しません。自分で自分の情報を抱えているわけです。IoTは全部自動的に繋がるわけではなくて、皆いろいろ抱えたり関係を切ったり、色々な戦いが起こっているわけです。

そういう意味では、アメリカが貿易赤字なので中国と貿易戦争をして、鉄だとかアルミについて最初は知財に関する戦いを、トランプ大統領とアメリカが仕掛けているように見えたわけです。しかし、本当はそれだけではないのです。中国の方も国家情報法というアメリカとかヨーロッパとか日本じゃ到底導入出来ない様な、全国民・全企業スパイ法みたいな法律を導入して、色々情報戦を仕掛けてきています。ただ証拠はありません。中国は、証拠は無いだろうと言っています。一方で、アメリカは、証拠は無くても世界中の国に対するスパイを、これまでずっとCIAにやらせていたので、中国もやっているに決まっていると思い込んでいます。単なるハイテク技術の開発競争ではなくて、技術とか安全保障情報の盗み合いみたいな裏の戦いも起こり始めています。その為、アメリカとしてはファーウェイが途轍もなく気に入らないわけですよ。とにかくもう国際特許なんかではアメリカの企業を遥かに凌いでいるので、イランと関係しているだろうといちゃもんを付けて、創業者の娘の副会長を捕まえたりとか、ファーウェイの製品を政府は使ってはダメという調達禁止令を出したりといった、戦いが始まったという事なのです。

今日のまとめです。中国は昔に比べれば少しゆっくりとした成長になりながらも、「中国製造2025」や「一帯一路」と言いながら、技術的進歩だとか地理的拡大を続けて経済成長を継続し、大国になりつつあります。アメリカは、時間の問題で中国も自由民主主義の国家になると一時は思っていました。しかし、ここのところ、どうも法治国家ではなく、スパイ国家になりそうに見えてきました。そのため、自分の技術が盗まれているという事で、対応策に出たのです。貿易戦争だとか技術の流出だとか安全保障の問題になっているのですが、結局これは世界の覇権を狙った米中の戦いなので、我々は「うーん」と言いながら眺めるしかないという状況です。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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