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シェアリング・サービスについて考える(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/12/13

前回は、スマホの登場がシェアリング・サービスの普及に重要な意味をもったこと、そして、このことはより大きな社会や経済の変化にも繋がり得るということをお話ししました。今回は、規制との関係について考えて見たいと思います。

ここまでの話では、シェアリング・サービスを仲介者、或いはプラットフォームの提供者とする狭い定義を前提にしてきましたが、その限りにおいては新しいビジネス・モデルといえるかと思います。それ故に、前回代表例として採り上げた、AIRBnBやUBERなどの場合、個人が飽くまで副業として、主に別の目的で保有している自宅や自家用車を用いて行うサービスである間は、必ずしも「競合」といったことを重視して考えるのではなくて、利用者やサービス提供者の安心・安全が確保され、そして納税の義務が果たされるための最低限の規制で十分かもしれません。

しかし、実際のシェアリング・サービスは、狭義の定義からは変質を遂げたものもあり、また、より多彩に広がっています。例えば、プラットフォーム提供者自身が、サービスの仲介ではなくて資産を保有したり人を雇用してサービスを提供するようなケースや、AIRBnBを通じて部屋を提供するひとが、その目的で自宅以外に専用の施設を確保するようなケース、そして、UBERのドライバーをしている人が本職を止めてUBERを本業にしてしまうようなケース、また、物品を共有したり貸借するのではなくて、中古品の売買を仲介するのようケースなど様々です。

これ等の何処までをシェアリング・サービスに含めるかという議論はともかくとして、これ等の中には、狭義の定義に当て嵌まらないだけではなくて、既存のビジネス・モデルとの本質的な差があまりないサービスも多く含まれています。そうなると、規制の面では、「最低限」という訳には行かず、競合や外部不経済に対応することが必要だという議論になります。

UBERについては、日本では自家用車等で有料で人を運ぼうという行為自身が「白タク」ということで禁止されてきたため、基本的には本業で参入できていませんが、米国では、契約ドライバーが専業化したことを背景に、その処遇が大きな問題となっています。運転毎の定額料金だけではなくて、UBERはドライバーの所得についても注意を払わなくなっており、また、実際にイギリスでは契約ドライバーを従業員と見做して処遇することを命じる判決が下されるなど、規制は強化の方向にあります。

また、使用しない自動車保有者と、借りたい人の間の仲介を行うのではなくて、自ら車を保有して利用者に車の貸し出しを行うカーシェアリングの場合、メンバー制を採っているかいないか、利用時間や借出場所・返却場所などの想定されるサービス内容の点で多少の違いがあっても、レンタカーを提供するのと本質的な違いはありません。となれば、レンタカーと同様の規制の対象になり得る訳です。

AIRBnBについても、自宅等の空き部屋ではなくて専用に確保した施設に有料で泊めようとすれば、ゴミ出しで近隣にかける迷惑といった外部不経済を抑止するための規制が必要になりますし、規模にもよるでしょうが、旅館やホテル、簡易宿泊所といった既存の業者のビジネス・モデルとの差が縮まり、両者の間に規制の差があれば、その合理性が問われるようになるでしょう。

このAIRBnBを利用した宿泊、所謂「民泊」については、2020年の東京オリンピックや、更なる増加を狙うインバウンド観光客のために、宿泊施設を確保する有力な手段としての期待が高まりましたが、これを規制する法律、所謂「民泊法」ができた結果、登録宿泊所の数は限られ、「民泊」利用者の数も激減したことは残念な話です。そもそも、このAIRBnBのビジネス・モデルについては、自宅に知らない人を泊めることで得られる新たな「繋がり」が創業者にとっての理念的な推進力になっていた訳ですが、今回の民泊法では、旅館・ホテル類似の民泊ビジネス・モデルを警戒するあまり、この「繋がり」をもたらす原点の「民泊」(自宅の空き部屋の提供)の広がりを抑えてしまった可能性がありそうです。

既存のビジネス・モデルに対する規制との整合性を採るとの観点から、それと類似する、或いは競合するビジネス・モデルを持つシェアリング・サービスを規制するということは、合理的に見えますが、一方で、過剰な規制に繋がるリスクも孕んでいます。原点に帰って、規制の有無を再検討することが必要でしょう。また、前回も述べたように、シェアリング・サービスが大きな社会・経済変革をもたらす可能性を秘めているとするならば、既存秩序を前提として規制を考えるという姿勢は、社会・経済の進化にとって、望ましいとは言えないでしょう。


まとめ:狭義のシェアリング・サービスは新しいビジネス・モデルと言えますが、そこから派生する多くのシェアリング・サービスの中には、既存のビジネス・モデルと類似し、競合するものも含まれています。これらに対する規制の視点としては、「同等の規制」ということではなくて、規制の必要性についての原点に立ち返っての検討、社会・経済の変革の推進力と見做す観点、などが求められるのではないでしょうか?

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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