QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

タグ

QTnetモーニングビジネススクール > タグ一覧 > タグ経営リスクマネジメント

企業を脅かすコストダウンと企業を活かすコストダウン~東洋思想からの経営学~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

18/12/11

今日は、企業を脅かすコストダウンと企業を生かすコストダウンがどのように違うかを東洋思想の観点から考えてみたいと思います。 
最近、企業不祥事のニュース増えています。昨今の企業不祥事を見てみると、私は一つの傾向を感じることがあります。それは安全や品質管理に最低限必要な経費さえも節約してしまって、結果として事故や品質データの改ざんなどが発生してしまうという傾向です。一般的には費用の節約、俗に言いうコストダウンは企業にとって望ましいものと考えられてきました。しかし、昨今の企業不祥事の傾向は、行き過ぎたコストダウンが企業を滅ぼすことを案じています。
では、企業はどうすればいいでしょうか。私は日本においてコストダウンと類似した言葉として用いられる倹約という概念を大切にすることが1つのカギと考えています。倹約とコストダウンは、どのように違うかを今日はこの点について話していきたいと思います。

倹約とコストダウンは同じと思うかもしれませんが、実はその思想にはかなり根本的な違いがあります。日本においても節約や倹約など費用の削減、つまりコストダウンは商業における美徳の1つとされていました。つまり、素晴らしいことと認められていました。特に倹約という言葉は商業に限らず、江戸期の幕府や藩における財政政策にも用いられ、わが国においてコストダウンに近しい概念の1つと言えると思います。昨今、公開された「武士の家計簿」には、まさにこの倹約を扱った映画と思います。しかし、どちらも費用を節約するという点では同じですが、厳密に見てみると倹約とコストダウンには大きな違いがあることが分かります。
第一の違いは、倹約という言葉は、やみくもなコストダウンを求めていないという点です。むしろそれを危険なもの、道理に反するものとして禁止しています。例えば、江戸時代に身分の差を越えて多くの人から指示された石田梅岩という思想家は「道理に合わない節約つまりコストダウンは、かえって利己的な行為へと繋がり、社会にとって望ましくない」と述べています。彼はケチと倹約と対比させながら次のように説いてます。
まず、倹約では費用の節約を通じて人に迷惑かけることや不快な思いをさせないことが一番重要であるとしています。また、迷惑や不快をもたらすコストダウンはケチであり、これは道理に合わないと批判します。そして迷惑や不快を防ぐための消費は、それこそ重要であるといちづけます。だから、やや誤解を恐れずに言えば、倹約は出費削減の概念であるとともに、合理的な出費を求める概念でもあります。実際に倹約の第一ステップはコストダウンの目標額、つまりどれだけ使う額を下げるかを考えるのでなく、自分にとって不可欠な、あるいは相応な消費の量を知るところから始まります。
そして第二の違いは、倹約で得た利益をステークホルダーのために使うことが求められているという点です。先程話にでました石田梅岩は「倹約とは3つ要るところのものを2つで済ませ、残りの1つを社会のために使う姿勢と表現し、倹約は他者への愛が根本にある」とときます。愛が倹約と背景にあるというのは実に驚きです。
皆さんがご存知の二宮尊徳も同様のことを言ってます。尊徳は単なるケチと倹約の差を「節約を通じた得た利益を、私欲に使うかそれともステークホルダーのために使うかの違いである」と指摘し、後者こそ正しい倹約であるとしています。つまり、倹約とは従業員や顧客など企業の全てのステークホルダーにとってプラスであることが望まれています。ステークホルダー、つまり取引相手だけではなく、そこで働く人々または会社が位置している所の地域の住民など、企業活動によって影響を受けるすべての利害関係者といえるのかもしれません。だから、現場の負担だけが増すことや消費者の安全が犠牲になるコストダウンは、やはり倹約とは言えません。
まとめれば、合理的な投資を守りつつ、全てのステークホルダーにとってプラスとなるような配慮をもって行われるコストダウンこそ、倹約と言えます。ゆえに、もし石田梅岩が昨今の事故やずさんな品質管理をもたらすようなコストダウンを見たとしたら、おそらく他人に迷惑をかける節約、つまりそれはケチであり倹約ではないと厳しく非難すると私は思います。市場競争の激しさからコストダウンの要求が厳しい昨今のおいて、経営者が企業を脅かすコストダウンの罠に陥らないためにも、倹約の精神からわれわれが学ぶべきことは少なくないのではないかと私は思います。

本当に今、各企業が努力をしていると思います。そのコストダウンということを求められて、どのような所でその経費を削っていくかというそこに一生懸命なるがあまり、他社にとって自分の所以外関係者、従業員含めて、色々な人周りの人にとって不利益な事をもたらすような倹約というのは倹約ではないということです。だから、コストダウンを何のためにやっているかということを、やはり経営者は忘れたらいけないと思います。コストダウンが目的化しまうと、まさにこのような企業を脅かすコストダウンの罠に私は陥ると考えてます。

今日のまとめです。倹約とは合理的な投資を守りつつ、全てのステークホルダーにとってプラスとなるような配慮をもって行うコストダウンと言えます。そして、その根本には他社への愛がなければなりません。企業が自らを脅かすコストダウンの罠におちいらないためにも、自社のコストダウンが果たして倹約して成立しているかという点について企業は再点検を求められているのかもしれません。

分野: 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ