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話し合いの結果が、なぜ危険な意思決定になるのか?~集団極性化がもたらす弊害~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

18/12/10

今日は、話し合いの結果が何故か危険な結果をもたらしてしまうという集団極性化がもたらす弊害について話します。
3人集まれば文殊の知恵、または小学校ではみんなで話し合って決めることが大変に良いことと教わってきたと思います。確かに、みんなで話し合って決めることは民主主義の根本であり、疑いもなく重要なことであると私も思います。しかし、集団の意思決定に関する研究では、みんなで話し合って決めると危ない結果が出てしまう可能性があり、極端な答えが出てしまうという結果が示唆されています。

みんなで決めた場合、バランスの取れた意見になると私たちは考えがちです。ただし、集団の意思決定に関する社会科学の研究では、集団における意思決定は極端な方向にふれやすいという逆の結果が示されています。これを最初に発見したのはMITの大学院生だったジェームズ・ストーナーという人物です。彼は実験の中で、集団で理論して意思決定を行うと、個人が独立して意思決定を行う時よりも遥かに極端な選択をしてしまう傾向を発見しました。これはその後、社会心理学の実験でも度々確認されています。現在では、このような現象を「集団の意思決定が極端な方向性にむかってしまう」という意味を込めて「集団極性化」と定義されています。
しかし、みんなで話し合うのに、どうしてそのように極端な方向になってしまうのかが本当に不思議ですが、実は多くの要因からそれがもたらされることが分かっています。大きい要因は、2つにまとめることができます。
1つは集団で意思決定をする場合、他人を人間は説得しなければならないため、自分の意見の正しさやそれに対する自信を強くアピールする必要があるという点がその主因になっています。アピールをするために、人は自分の意見において有利な点をさらに強化して、逆に不利な点を隠してしまう傾向があります。私達のコミュニケーションでも人を説得する場合は、なるべく有利な点を使ってしまいます。相手が説得出来ないと、その傾向がさらに強くなります。結果として、不利な点をさらに隠してしまい極端な意見が形成されてしまいます。また、もし自分の意見に対して根強い反対意見を持つ相手がいる場合には、お互いのアピール合戦となってしまうので、ますますこの傾向が強化されると言われています。
もう1つの原因は、集団の中で1つの意見に定まってしまうと他の意見が排除されてしまう傾向がある点があげられます。これは心理学の用語で「同調圧力」という物ですが、集団は一度意見が定まってしまうと、新しい意見に対して「その意見は本当に意義がある意見なのか」という観点からではなくて「その意見は自分達の意見にあっているか」という観点から評価して決めてしまう傾向があります。これによって、自分たちの意見に合う意見だけが、集団の中で多く採用されてしまい、結果としてかなり極端な意見をもたらしてしまいます。会議の現場で、みんなの意見がまとまっている時に自分が反対意見を言いづらい、本当にこれが正しいのかがなかなか考えられなくなると思います。私達自身も「早く決めたい」という気持ちから、なかなか人の意見を聞かなくなるようなことはよくあります。ただ、この集団極性化は、様々な産業事故の背景要因としてあげられています。例えば、過去に2回発生したスペースシャトルの墜落事故も、その背景には高いリスクを受容してしまう極端な意思決定が、集団内で促進されてしまったことが指摘されています。この他にも、この集団極性化が事故の背景要因となった事例は枚挙にいとまがありません。

では、どのようにしたら、このような現象を防ぐことが出来ると思いますか。一言で言えば「多様性のある批判を促進する」という仕組み作りがかなり重要です。簡単に言えば、1つの方向性ではなく様々な方向性からそれが正しいか、色々な批判を受けるというところが、多様性のある批判と言えるかもしれません。
やはり様々な意見が出しやすい様な環境を作るということです。一度集団の中で、意見の方向性が決まってしまうと、その修正は先ほど話した通りなかなか難しいものです。また、意思決定の高速化が今求められている中において、批判意見を丁寧に吟味していくことは、これは時間的なコストも考えるとなかなか難しいと思います。だから、このような状況においても、本質を得た批判的意見が棄却されないために、事前に色々な方向性から批判を促進する丁寧な組織づくりの仕組みが求められます。私自身の調査においても、長年に渡って製品の安全性に高い評価を受けている企業の方に、高度な安全性を長く守っていく秘訣を伺った際に、組織内で口うるさい父や母みたいな存在を大切にすることという答えをいただきました。まさに、その企業の仕組みをよく見てみると、他の企業に比べ非常に多くの検査や監査の仕組みがあり、多くの人の視点から製品の安全性について意見が投じられる仕組みが整っていました。批判的な意見は確かに耳に痛いですが、その様な意見の中にこそ、企業を事故や不祥事から救うヒントがあるのかもしれないと私が考えます。

今日のまとめです。みんなで話し合って決めること、つまり集団の意思決定は、時に極端な意見を形成してしまう性質をもっています。これを「集団極性化」といい、産業事故をまねく1つの要因となっています。これを防ぐためには、多様性のある批判を促進するという仕組み作りが重要となります。皆さんの組織では、多様性のある批判を促進する仕組み作りは出来ているでしょうか。これを機会に一度見直してはいかがでしょうか。

分野: 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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