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垂直統合

目代武史 企業戦略、生産管理

18/07/20

 今回は垂直統合についてお話したいと思います。
 ビジネスの流れを上流から下流に流れていく川の流れのように考えて頂くと、上流は研究開発や素材、部品に始まって、川中で製品の組み立て、下流は販売、物流、アフターサービスというように縦に流れていきます。垂直統合とは、そのビジネスの領域を、上流の方に向かって広げていったり、下流の方に広げていったりするということを意味します。ビジネスの範囲が垂直方向に広がっているというイメージから垂直統合と言います。
 例えば、自動車の組み立てのような完成品の組み立てをやっている会社が、その上流の部品の生産や素材の生産を事業化したり、逆に下流の販売やアフターサービス、自動車ローンのようなものを自社で行うようにしたりすること垂直統合ということになります。
 身近な例としては、ユニクロを擁するファーストリテイリングという会社をあげる事が出来ます。90年代以降ユニクロは、SPAと言われる業態をとってきました。SPAは製造小売と訳されていますが、要はカジュアルウェアの小売業でありながら生産も手掛けるという形態です。つまり、ユニクロは生産も手掛けるようになっていたということです。厳密に言うと、ユニクロ自身が工場を建てて運営をしているのではなく、中国などの協力工場に生産委託をしているのですが、同社から匠と呼ばれる熟練の生産管理者を派遣して委託工場の品質指導などを行っているという形をとっています。これも実質的に生産に関与しているという点で垂直統合の1つの形だと言えると思います。
 もう1つハイブリッド車の例を挙げたいと思います。ハイブリッド車の性能やコストを左右する重要な部品にバッテリーがあります。トヨタは1996年にパナソニックと合弁会社を作り、電気自動車用のニッケル水素電池の開発と量産をする会社を作っています。トヨタは車の組み立てをするだけではなく、自らハイブリッド車や電気自動車の成功の鍵を握ると言われるバッテリーの開発や製造に乗り出したわけです。そのような形で重要な部品を自ら手掛ける事で技術ノウハウを蓄積したりバッテリーの安定調達化を図ったりしているのです。

 では何故企業は、垂直統合を図ろうとするのでしょうか。今ではユニクロをはじめとして、GAPやH&M、ZARAなど多くのファストファッションブランドがSPAを導入しています。SPAつまり小売業が生産機能を垂直統合する以前はどういうことになっていたかと言うと、小売業はどのような服が欲しいかを卸売業者に伝えて、それがメーカーに伝わって商品のデザインや生産量が決まっていました。そこでは互いに有利な条件を引き出すために、駆け引きや交渉が必要でした。そうすると、時間がかかるのはもちろん、小売側のニーズが正確にメーカーに伝わらなかったり、逆に小売側も商品が欠品するのは嫌なので少し多めに商品を発注して余ったら返品したりするといったことが頻繁に起こっていました。売り手と買い手が別会社としてそれぞれの利益を最大化しようとして駆け引きをしていくと交渉に時間がかかっていって、時には騙し騙されるようなことも起こってしまいます。
 そこでSPAという業態では自ら工場を建設したりメーカーを買収したりして、生産機能を内部に取り込んでしまいます。それによって小売というビジネスと製造というビジネスが1つの企業の中に取り込まれていきます。それにより情報の質や量が改善するとともに組織としての命令系統を通じて生産量や納品の条件などを決めていく事が出来るわけです。
 さらに、外部の業者と取引する場合には、相手がきちんと契約を履行するかどうかを監視しなければなりません。このように、経済取引を成立させたり、取引を維持したりするためにかかる各種の手間の事を経済学では取引コストと言います。垂直統合は市場を通じた取引で交渉の為に手間暇かけていたり、裏切りのリスクを被ったりする場合に、そのようなリスクを回避するために組織の中に取り込むことで取引コストを節減しようという動機があると考えます。

 今日のまとめ:垂直統合は経営戦略の重要な要素の1つです。価値連鎖に沿って事業の範囲を上流や下流に広げる事を垂直統合と言います。企業が垂直統合を図る理由の1つは、いわゆるスマイルカーブ現象が存在する場合に、川上もしくは川下の高い付加価値を取り込むケースが1つです。もう1つの理由は市場を通じた取引では取引を成立させる為に各種の調査コストや裏切りを抑制する為の監視コストなどである取引コストを節減するためです。すなわち、垂直統合を図ることによって外部取引であったものを内部業務に置き換えることで取引コストを節減しようというわけです。しかし企業が何故垂直統合するかについては実は別の理論的な説明もあります。これについては次回以降にご紹介していきたいと思います。

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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