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価値相関図

目代武史 企業戦略、生産管理

18/07/10

 企業戦略を策定する上で外部環境分析を行いますが、今日は少し新しい分析の枠組みを紹介したいと思います。
 前回までハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱しているファイブフォースモデルについて紹介してきました。業界には5つの競争圧力が働いていて、その圧力が強ければ強いほど競争が厳しくなり、企業にとっては収益が上げにくくなるというものでした。その5つの競争圧力としては、業界内の既存企業間の競争関係、新規参入業者の脅威、供給業者や買い手の交渉力、代替品の脅威があげられます。この枠組みの基本的な考え方は、5つの要因がこの業界において生み出される収益を奪い合うという発想です。誰かが得をすれば他の誰かが損をするゼロサムというわけです。

 これに対して異を唱える研究者もいます。例えば、ニューヨーク大学のアダム・ブランデンバーガー教授やイーエル大学のバリーネイルバフ教授がそうです。彼らは1990年代に出版したコーペティション(co-opetition)経営という書籍の中で、価値相関図というモデルを提案しました。価値相関図でブランデンバーガーとネイルバフは、企業をとりまく主なプレイヤーとして顧客、競合他社、供給企業をあげています。ここまではポーターのファイブフォースとほぼ同じです。彼らは、さらに補完的企業というものを追加しました。
 このモデルは、ポーターのファイブフォースとよく似ていますが、背後にある発想は大きく違っています。ファイブフォースモデルの場合には、業界に関わるプレイヤーが互いに同じパイを奪い合うゼロサム関係を想定していました。それに対して価値相関図では、プレイヤー同士が競争もするが協力もするという発想があります。業界が生み出す価値そのものを大きくしようと考えるのがこの価値相関図の発想です。
 例えば、シリアル業界を見てみると、主なプレイヤーとしてはケロッグやカルビー、日清という会社が思い浮かぶと思います。これをもしファイブフォースで分析すれば、ケロッグ、カルビー、日清がどう戦っているかということや原材料のオーツ麦の供給業者の力関係がどれくらい強いか、代替品として普通のご飯や牛丼との関係はどうかという分析になると思います。
 価値相関図で考えるとどうでしょうか。シリアルというのは最近伸びてきている市場です。特にグラノーラはここ数年ヒットしていて、市場的には年間250億円くらいの規模になっています。ただ朝食市場全体で見ると、とても小さい売り上げしかありません。朝食市場は17兆円くらいあると推定されていますが、シリアル業界という小さい枠組みの中で互いに激しく競争するよりも、朝食市場の中でシリアルの存在感をまず向上させた方がよりよい市場環境になるのではないかというわけです。その為には、ケロッグやカルビーなどの競合企業が小さなパイを奪い合うよりも、お互いに協力出来る事は何かないかということを考えるというのが価値相関図の考え方です。
 もう1つ事例を考えてみたいと思います。コインパーキング業界です。コインパーキングにとって競争相手になるのは、他のコインパーキングや立体駐車場などの有料駐車場です。コインパーキングが提供する価値は、街中で一時的に車を停められる場所を提供することです。ところが、近くにコンビニがあったら思わず停めてしまう人がいるかもしれません。スーパーも同じです。場合によっては路上駐車をしてしまう人もいるかもしれません。一時的に車を置きたいというニーズに対して色々な代替的な手段があるわけです。公共交通機関の利用も、コインパーキング業者からすると脅威です。
 そこで、お互いに協力できる相手、つまり補完企業がないかということを考えます。例えば警察です。路上駐車を厳しく取り締まってくれれば、ドライバーはコインパーキングをもっと使うようになります。コンビニやスーパーも長時間の無断駐車に厳しく臨むようになれば、やはりコインパーキングの利用が増える可能性があります。つまり、コインパーキング業者にとっては、そのような周辺の商業施設や警察などのプレイヤーとの協力関係が非常に重要になるわけです。単にコインパーキング事業の中で価値を奪い合うのではなく、価値を大きくする相手を探そうというのが価値相関図の考え方です。

 今日のまとめ:今回は事業環境を分析するモデルとして価値相関図を紹介しました。ポイントは業界に関わるプレイヤーと協力関係を築く事で、パイ自体を大きくすることです。競合企業同士で協力して市場を大きくするケースもありますし、補完的業者との協力関係を構築するケースもあります。ブランデンバーガー教授とネイルバフ教授はこれをコーペティション(コンペティション(competition)とコーポレーション(cooperation)を合わせた造語)と呼び、競争と協調を両立させることの重要性を説きました。

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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