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アメリカの保護主義と北朝鮮

村藤功 企業財務 M&A

18/07/05

今日はアメリカの保護主義と北朝鮮という話をしたいと思います。トランプ体制は、今、どうなっているか知っていますか? 首席補佐官や安保担当補佐官、国務長官とか、みんな変わってしまったのです。

首席補佐官はプリーバスさんだったのがケリーさんになりました。しかも、否定はしているのですが、ケリーさんも辞めるかもしれないという噂が飛び交っています。そして、安保担当がマクマスターさんからボルトン補佐官に変わり、国務長官はティラーソンさんが辞めさせられてポンペオさんに変わりましたね。

ロシアゲートに関して、モラー特別検察官が次はトランプを聴取すると言っています。6月に金正恩と会見したとか7月にプーチンと会見をしようと言っている理由は、聴取を避けようとしているからではないかと言う人もいます。ロシアゲートで大問題が起こるのを避けようとしているのではないかという説もあるほどなのです。

しかし、支持率がここのところ少し増えています。国内では40%が45%位になりました。北朝鮮と6月12日にシンガポールで会談をしたのですが、これに対して日本をはじめとするアメリカ以外の国では、CVIDはどうしたとか、大して何もしなかったじゃないかとか言われています。しかし、アメリカ国内ではすごくよい事をしたと見られており、海外での支持率は30%位ですが、国内支持率が妙に上がっているのです。

11月には中間選挙があります。これは恐らく民主党の勝ちだと言われています。11月が本選ですが3月から予備選挙があり、州毎に共和党代表や民主党代表を選ぶ選挙が始まっているのです。そこでなんとトランプ大統領のお友達がどんどん共和党から出てきている。トランプ大統領を批判すると落ちるというような事になっているのです。ですから、日本でトランプ大統領の事を色々言っているのと、アメリカで色々言っているのとではちょっとまた別の問題になります。

本当にモラー特別検察官からの聴取を避ける為なのかどうかは別として、北朝鮮とイランはならず者と言っていたのが、北朝鮮に対してはそんな事を言わずになんか握手しちゃって、体制は保証しますとか米韓軍事練習は止めますみたいな事を言っているわけです。イランに対してはまだならず者扱いが続いていて、5月に核合意から離脱して、イランからの原油は買うなと経済制裁を再開しようとしているところです。ところが中国とロシアは「えっ、そんな事を言ったって別にうちは関係が悪くないからイランから買うよ」みたいな事を言っており、どうなるのかよく分かりません。

最近の重大な問題は、アメリカが保護主義に走り始めた事です。元々、貿易赤字80兆円位あるのでこれを解消すると言っていたのだけど、そもそも世界中が保護主義に走っても良い事はありません。なぜ第二次大戦になったのかという理由の一つとして、みんなで保護主義に走ったからという事が言われています。第一次大戦後のアメリカで1929年のニューヨークの株式市場の暴落をきっかけに大恐慌になった後にスムート・ホーリー法が成立し、アメリカの関税を60%にしました。景気が悪いから海外の事なんかもうやってられるかという事で、海外から来る物をストップしようという事になったのです。

アメリカの製造業は一瞬息を吹き返すかに見えたのだけど、そっちが60%ならこっちもと言ってヨーロッパも報復関税をやり始めて、ヨーロッパに対するアメリカからの輸出は3年で半分になってしまったのです。失業率はアメリカもイギリスもどちらも20%位になり、それを背景として第二次大戦に至りました。これを反省として、WTOという自由貿易の機関が出来たわけですが、トランプ大統領はもうWTOなんか止めようかなみたいな事を言っており、極めて危ない状況になってきているのです。

それほど規模はまだ大きくはないのだけど、第二次大戦前の時と似たような性質の事が起きているのです。鉄鋼・アルミあたりは国によっては大変な事なのだけど、日本にとってはまだそんなに大変な話ではありませんでした。しかし、アメリカに対する日本の貿易黒字の8割位が自動車です。今度は自動車に対する関税を2.5%から25%に上げようとか言っており、日本もあまり黙ってはいられません。

カナダはアメリカのすぐ隣ですから、輸出の76%、輸入の52%がアメリカに対してです。7月からカナダも報復関税を発表し、1兆円以上と報復関税の中で最大です。報復しないともうカナダのトルドー首相の政治生命が危ういと言われています。メキシコも黙ってはいられないし、もうEUも黙っていられない。トランプ大統領がアメリカファーストと言って自分だけいい思いをしようという事にみんなで反発して、あらゆるところで報復を始めたという状況です。韓国はアメリカから脅されて米韓FTAという2国間協定を結ばされたのだけど、日本は急ぐ事はないでしょうと言って逃げていました。しかし、次は自動車という事になるともう大変です。日本と韓国は、アメリカに対する自動車の輸出がなければ、みんなやっていけない状況になっているわけです。

中国は最初、輸入を拡大してあげようかとトランプ大統領に言っていたのですが、そう言っているのに、アメリカは鉄鋼・アルミの関税を上げるだとか、知的財産権法に違反しているので関税を上げるぞとか言い出しました。知的財産権法に違反しているというのはもちろんないわけではないので、それだったらヨーロッパや日本も合意できるところがあるのですけど、結局はアメリカと中国という2つのスーパーパワーの戦いに今なってきているわけです。中国がハイテク分野で成長するのを阻止しようというアメリカの考えに対して、その中国は「中国製造2025」と言って、10個の重点分野について中国の補助金を突っ込んで発展させようとしています。アメリカはその補助金を出すなと言ったり、中国がアメリカの技術を盗んでいるから中国が25%以上出資しているような会社がアメリカに出資するのを阻止するという規制を作ろうとしたりしています。2つのスーパーパワーの戦いになってきており、ちょっと世界が危ない方向に向かっているという事です。

今日のまとめです。トランプ大統領はアメリカファーストと言っていたので、色々な所でエゴだと言われてしまい、国際社会からの信頼を失いつつあります。11月に中間選挙があるのですが、ここで民主党に負けてしまうと弾劾されてしまうかもしれません。そこで、とりあえず6月に金正恩との会談とか7月にプーチンとの会談とか言いながら、何とか国内のポイントを稼ごうとしているという状況です。アメリカが貿易戦争を始めて、中国だけでなくてEUやメキシコに波及してしまい、自動車を対象にすれば日本も黙っていられないという事で、国際貿易の縮小がとても心配な状況です。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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