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日本発着の観光客の動向②

星野裕志 国際経営、国際物流

18/07/13

前回は、私が参加している国立台湾師範大学との共同研究のプロジェクトについて紹介しました。台湾と日本の双方向の観光促進の研究に取り組んでいますが、その中から日本政府の取り組んでいる日本へのインバウンドの観光客の誘致について取り上げてお話をしました。

外国人旅行者が増えることで、大きな経済効果が期待できます。
日本政府は、東京オリンピックが開催される2020年に向けて、インバウンドの観光客を昨年の2,869万人から4千万人に引き上げることを目標としています。
4千万人というととてつもない数字にも聞こえますが、世界で最も観光客が集まるフランスには、2016年に年間8,260万人、2位のアメリカには7,747万人、3位のスペインに7,555万人来訪したとすれば、可能性はゼロではないとも言えます。

フランスとスペインは、陸続きで自由に移動できますし、バカンスなどで訪問される人も多いというのは、重要なポイントかもしれません。一方で、アジアの国では、中国が世界でも4位、トルコが6位、タイが10位と考えれば、右肩上がりで増加する海外旅行者の目的地は、まさに世界中と言えるのではないでしょうか。

ただ、2020年までに4千万人となれば、昨年からの3年だけで、さらに1千万人以上の増加を見込んでいるということになります。

世界で来訪者の大きい上位の国々には、すでに国内に受け入れ態勢ができていることを思えば、日本は京都などで既に町の収容能力を超えた来訪者があるとか、宿泊施設が不足して、急速に進む民泊の問題とか、懸念すべき点も少なからずあります。インバウンド客の増加には、経済効果といったプラスの面と共に、課題もあるということです。

今回は、続けて日本人の観光客、つまり日本発の海外旅行のお話をしたいと思います。前回は、台湾から昨年456万人の観光客が日本を訪問し、日本からの台湾訪問は190万人ということをご紹介しました。人数だけをとると、台湾からは倍以上で、いわば貿易で言えば、台湾からの輸出超過の状態とお話しました。

さらに、台湾の人口が2,355万人、日本が1億2,600万人ということを考えれば、ほとんど一方通行とも言えます。日本からの海外旅行の出国者数は、2000年の1,782万人から昨年の1,789万人とほとんど横ばいで変化していません。

同じ期間の2000年と昨年までの間に、海外からのインバウンド客が、476万人から2,869万人とちょうど6倍に増加していることを思うと、日本人の海外旅行は全く成長していないだけでなく、とても低調と言えるのではないでしょうか。
では、日本人旅行者は、海外旅行をあまりしていないということでしょうか。日本人旅行者は海外のどこに行っているのでしょう。

実は、面白いのは、日本人観光客の旅行先は、アメリカ、中国、韓国、台湾の順で、ほぼ例年変わらず、また台湾が特に減っているわけでもないのです。

台湾で観光局や旅行社でインタビューしたときに、日本人のパスポートの取得率の低さを皆さんが揃って指摘をされたので、本当なのかなと思って、帰ってから調べてみました。

そうしたところ、パスポートの有効期限が10年間になった1996年の日本のパスポート発行数は、624万冊だったのですが、その20年後の2016年は、年間で374万冊でした。つまり日本人は、20年で6割の人しかパスポートを取得しなくなっており、海外にもあまり行かなくなっているのでしょう。

日本発着の観光という点からは、海外からのインバウンド客は急激に増えて、それをさらに増加させようとしていて、海外に向かう日本人観光客は低調ということになります。前回も、観光においても貿易と同様に、双方向性や互恵性が重要ということをお話しました。一人勝ちでは、長続きしないということです。

例えばクルーズ船であれば、博多港が寄港数日本一なのは喜ばしいことですが、博多港から乗船する日本人が非常に少ないことを心配しています。博多港に来る外国人と博多港から利用する日本人がいて、持続的に船会社は博多港を寄港地とするのだと思います。完全に一方通行であれば、飽きられた時に寄港地を簡単に変えます。

同じく航空会社の視点で見れば、台湾からでもどこからでも利用客は多くても、日本人の乗客が少ないとバランスが悪く、安定的な収益に繋がりません。そうなると増便や成長もなかなか困難になりため、一方的ではいけません。

日本人の留学生数を見ても、ピークの2003年ごろから6割近くに減少しており、内向き傾向が顕著ですが、一般的にも、もはやあまり海外に関心を示さなくなっているとすれば、由々しきことだと思います。

それでは、今日のまとめです。
昨日のインバウンド客に加えて、今日は日本人観光客の動向についてお話ししました。日本としては国際観光収支の大幅な黒字で良いのでしょうが、持続的な観光の成長のためには、やはり双方向性や互恵性が重要だと思います。言うまでもなく、日本人も海外に行く事で、得られることはとても多いと思います。

分野: 国際ロジスティクス |スピーカー: 星野裕志

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