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イノベーションの専門家が集うISPIM(その3)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

18/07/26

【今回のまとめ】
・今年の12月3~5日に、ISPIM FUKUOKAが開催される。実務家やアカデミシャンがバランスよく集ってイノベーションにについて議論するISPIMに、ぜひ多くの産学官の方々に参加頂きたい。

・実は、ISPIMが今年の12月3~5日に福岡で開催されることになっている。「イノベーションを通じた課題解決」というテーマが設定されているが、そのプログラムの特徴について紹介したい。
・自分が2017年3月のISPIM Torontoに参加する直前に、ISPIMの事務局から、「2018年12月のISPIMを福岡で開催したいと考えているのだが、トロントで意見交換できないか」という主旨のメールがあった。現地でいろいろと聞いてみると、日本での開催は初めてだが、東京や京都・大阪などの都市ではなく、イノベーションに積極的に挑戦していて、都市としても魅力がある福岡で開催してはどうかとのアイデアがあるとのことだった。
・その後、無事福岡での開催が正式決定したのだが、プログラムの特徴として、以下の3つのテーマが設定され、基調講演やパネルディスカッションが行われることになっている。
(1)高齢化社会への対応
(2)エネルギー移行
(3)スタートアップ・エコシステムの形成
・高齢化社会への対応は、日本のみならず中国や韓国・シンガポールなどアジア全体に共通する課題となっている。ISPIM事務局の人に、「日本では、2014年に初めて、赤ちゃん向けのオムツよりも、高齢者向けのオムツの売上が上回った」という事実を伝えたところ、目を丸くして驚いていた。高齢化に伴う社会課題は、イノベーションのドライバーでもあり、様々な製品やサービスの創出につながる可能性がある。
・実際、イノベーティブな製品で有名なスリーエム社は、数年前に「住友スリーエム」から「スリーエム・ジャパン」へと社名変更した。従来、住友電工が保有していた25%の株式をスリーエムが取得したことによるのだが、米国スリーエム本社は、そのために約900億円(!)を投じたことで話題となった。GDPが伸びず、人口減少へと転じ、高齢化が急速に進むこの日本にスリーエムが巨額の投資を行った理由は、日本が課題先進国(高齢化、自然災害の多さ、等々)である一方、イノベーションを生むための重要な資源(技術力や優れた人材)を有しているからである。
・福岡市では、「福岡100」というイニシアチブが策定され、高齢化社会をイノベーティブなアイデアやソリューションで乗り越えるため、多様な取り組みが始まっている。
・二点目のエネルギー移行は、東日本大震災以降、我が国の重要課題となっているが、世界的にも再生可能エネルギーへの移行が進む中で、今後のエネルギー移行をイノベーションの観点からどのように捉え、進めるべきかを議論することになっている。
・九州大学は、全学的な研究教育基盤である「エネルギー研究教育機構」を設立するなど、エネルギー分野で多くの研究教育資源を有している。当日は基調講演などで九大関係者の登壇も予定されている。
・三点目のスタートアップ・エコシステムの形成は、世界的にもスタートアップに注目が集まる中で、東京でも大阪でもない福岡が、如何にしてスタートアップのムーブメントを興し、他にはない環境づくりを進めているかという点に着目し、世界の他都市と比較しながらスタートアップを促進する環境づくりについて議論が行われることになっている。
・過去にない破壊的なイノベーションの担い手としてスタートアップの存在は極めて重要だが、そのようなスタートアップを多く生み、成長させるためには、エコシステムの存在が欠かせない。現状の福岡が、世界の他都市と比較してどの程度魅力的なエコシステムが形成されているか、あるいは先行する世界の他都市をベンチマークするうえでも、今回のISPIMは福岡にとって重要な意味を持つと思われる。

・第1回目で述べたように、ISPIMの重要な特徴は、実務家とアカデミシャンの両方がバランスよく参加し、イノベーションという共通テーマについて知識や経験を共有し議論し合う点だ。自分の考えやマインドセットを広げるために、イノベーションに取組む多くの産学官関係者にISPIM FUKUOKAに参加して頂きたい。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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