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キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (51) プロダクト・ライフサイクル

永田晃也 技術経営、科学技術政策

18/04/03

今回のまとめ: プロダクト・ライフサイクルとは、ある製品に関連する企業の一連の活動、あるいは製品市場の成長過程を、人の一生の周期に見立てて表した語です。

本編
今回は、プロダクト・ライフサイクルというキーワードを取り上げます。
 ライフサイクルという語は、もともと人の一生の周期、つまり誕生から、幼年期、青年期、壮年期などを経て死に至るまでのプロセスで一巡する周期を意味する語として使われています。プロダクト・ライフサイクルという語は、プロダクト(製品)にも、そのような周期が存在するということを意味しているわけですが、その周期には2通りの捉え方があります。
 一つは、特定の製品について、企画段階から始まって、開発・設計、生産準備・調達、生産、販売、保守・サポート、回収・廃棄に至る全プロセスをライフサイクルとして捉えるものです。このように捉えられたプロダクト・ライフサイクルを構成する各フェーズは、いずれも企業が行う活動です。これをミクロなプロダクト・ライフサイクルと呼ぶことがあります。
 もう一つは、ある製品の販売が開始されてから終了に至るまでの期間をライフサイクルとして捉えるものです。この場合、一般的にライフサイクルを構成する段階は、導入期、成長期、成熟期、衰退期といった製品市場の状況が異なる時期に区分されます。こちらは、マクロなプロダクト・ライフサイクルと呼ぶことがあります。人の一生に見立てるという点では、こちらの捉え方の方が、ライフサイクルの語義に適っていると言えそうです。
 人の一生に見立てるということには、単なる言葉のあや以上の意味があります。人は、その成長の段階によって、必要とするものが異なるでしょう。例えば幼年期には温かい保護が必要ですし、青年期には様々な学習の機会が必要です。製品に関する活動のフェーズや、製品市場の発展段階をライフサイクルになぞらえることは、直面しているフェーズや段階によって企業の課題が異なるという洞察を与えます。実際、プロダクト・ライフサイクルの2通りの捉え方は、それぞれ時間軸を考慮した経営手法を発展させてきました。これらの捉え方に沿って見ておきたいと思います。

 まず、製品に関する企業の一連の活動をライフサイクルとして捉える見方ですが、こちらは「プロダクト・ライフサイクル・マネジメント」(PLM)と呼ばれる手法を生み出しました。PLMには、様々な定義の仕方がありますが、要するにプロダクト・ライフサイクルを構成する全てのフェーズを統合的に管理することを通じて、適切なタイミングで顧客ニーズに合致した製品を市場に投入し、あるいは製品市場からの撤退を決定することによって、製品ラインナップの最適化を目指す手法だと言ってよいでしょう。
ただ、この手法が広く注目されるようになった理由は、環境経営のための有用性にあったと思います。PLMは、製品が廃棄されるフェーズまでを射程に入れており、PLMに用いられる統合的なデータ管理システムは、フェーズごとの環境負荷を評価できるものだったからです。

次に、製品市場の成長過程をライフサイクルとして捉える見方ですが、こちらは市場の発展段階ごとに経営戦略のフォーカスが異なることを明らかにしてきました。
各期に沿って見ると、まず導入期はまだ需要の規模が大きくないため、投入コストがかかる一方で利益は上がらない時期ですから、市場を拡大させることが優先的な戦略課題になります。次の成長期には需要が急速に拡大し、売上や利益も大きく成長していきますが、新規参入も増加する時期であるため、自社製品を市場に浸透させることが課題になります。成熟期になると需要の拡大が止まり、売上は伸びなくなりますが、高い水準で利益を上げ続けることは可能な時期ですから、市場シェアを維持するための差別化戦略が課題になります。最後に衰退期には需要が減少し、売上や利益が減少していきますから、損益分岐点を見逃さず撤退戦略を採ることが課題になります。
前にイノベーションの普及についてお話した際に触れたように、このような時期ごとに、製品の購入を始める顧客の属性は大きく異なることが知られています。そこで、時期ごとの戦略課題の策定や実行は、顧客に何を訴求すべきかを決定するためのユーザー分析と結び付けて行われることになるのです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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