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リーダーシップの変化の背景・VUCAとは?

福田亮 組織行動とリーダーシップ

18/02/23

前回から続けて「リーダーシップ」についてお話しています。
前回は、時代と共にリーダーシップのあり方も変化してきているということ、しかし、依然として今までのリーダーシップのイメージが非常に強いということ。その中で、今若い世代が特にリーダーになりたくない、なれるかなという不安を感じるのは当然のことであるというお話でした。

今日は、リーダーシップの捉え方が変わってきている背景にある「時代の変化」をいくつかのキーワードで紹介していきます。

最初のキーワードは「VUCA(ブカ)」です。これは、時代が混迷を極めているということをアルファベットの頭文字で捉えています。

・Vは"Volatility"の「不安定」です。経済のある世の中は、右肩上がりで伸びていく良い状態がある程度続いて、また悪くなっていくという一定の循環を示すという考え方がありますが、昨今は上がったと思ったらすぐ落ちるというように、なかなか見通しが立ちづらい状況が続いています。

・Uは"Uncertainty"の「不確実」です。これもVと似ていますが、確実だと思っていたものでも一年後には不確実になってしまうというように、「確実」と言えるものが何かわからない状態ということです。

・Cが"Complexity"の「複雑」です。複雑性が非常に高まっています。グローバル化が進むにつれ、あらゆることが繋がり複雑になります。例えるなら、今まで一次方程式や二次方程式で解けたものが、三次、四次方程式が必要になるほどに物事が複雑に絡み合っているということです。

・Aが"Ambiguity"の「曖昧さ/両義性」です。当然人との交流など色々な方が交わるようになると、唯一絶対の「正しい」判断基準はなくなります。つまり、ある物の見方も、ある一面から見ると正しいけれども、別の面から見れば違うということもあります。社会の様々な対立は、こういったところから生じてきます。一方からだけでなく、あらゆる面から物事を見極めなければなりません。

この頭文字からとったVUCAというキーワードは軍事用語に由来しています。このキーワードが伝えようとしていることは、これらによってリーダーシップが発揮しにくくなっているということです。つまり、意思決定や判断が極めて難しい時代になっているその理由を示しています。私はコロンビア・エグゼクティブスクールでこのキーワードを教わりましたが、その時に「 VUCAでない時代は実は経験則だとか理屈で8割くらいは見えてきた」と言われました。ただし、このVUCAの時代というのは、経験則で理解できるものが、4割、場合によっては3割しか「正しさ」がわからなくなってくる。経験則だけではもう正しい意思決定ができない訳です。

前回も申し上げましたけれど、「リーダー」というのは、一定の経験を積んだ中で、組織で上がってくる人です。そのため、その経験則が通じないとなると判断・意思決定が非常に難しくなってきます。その意思決定が上手くいかなかったり、先送りしたりといった状態が続くと、当然ながら組織の状態は芳しくありませんね。変化に適応しないといけない中で何もしないという状態になるわけです。そうなると、リーダーに対する信頼性は次第に低下していきます。これは、企業も勿論ですけれども国、或いは交易機関、あらゆるところでこのリーダーシップの問題が強くなってきている一つの理由です。

もう一つは、このVUCAの背景にもありますが「テクノロジーの進化」によってフォロワー(普通の人)の影響力の増大が関係しています。特に「ソーシャル・ネットワーク」、「シェアリング」がこの2000年代後半くらいから(Facebookは2006年以降)急速に社会に浸透してきましたが、その中で、リーダー以上にフォロワーの影響力が非常に強くなってきているのです。例えば、「保育園落ちた、日本死ね」という一人の主婦のツイッターでのつぶやきが大きな影響力を及ぼし国が対応を迫られたことなどは典型的です。今や誰もが発信出来る世の中になっています。誰もが感じたことを発信できるし、それがまた多くの人に評価され伝播されていく。色々な人が誰にもとらわれず自分の感覚で発信する中で、世の中の空気が形成される時代になってきました。先ほどの"Ambiguity(両義性)"の話ではないですけれど、様々な視点でのオピニオンを受け入れて判断することが極めて重要になっているのです。

このような流れの中で、リーダーが強くてフォロワーが弱いという関係性も変わってきているのではないか、その中でフォロワーシップの重要性が高まっているっていのではないか?という考えがリーダーシップの一つの潮流になっています。昨今「サーバント・リーダーシップ」という概念がありますが、リーダーはサーバントのように従業員を支える、つまり「フォロワーを重んじる考え」が生まれてきています。これだけ時代が多様化し、不透明になっているため、リーダーシップのあり方が難しくなってきているということの表れでしょう。

では、今日のまとめです。
今日は3つのポイントからお話しました。まず、状況が刻々変わっているという"VUCA"について。そして、「リーダーの信頼性」の話、「リーダー・フォロワーの関係性」についてのお話でした。フォロワーの台頭が、実は最近の若者が「自分はリーダーになれるのかな」という不安を感じることに繋がっているのです。

分野: リーダーシップ 組織行動 |スピーカー: 福田亮

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