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SCM(1):ブルウィップ効果

目代武史 企業戦略、生産管理

18/01/24

 今日はサプライチェーン・マネジメントについてお話したいと思います。これまで工場内での生産管理についてお話してきましたが、生産管理というのは生産の良い流れを作ることが中心的な役割でした。今回は企業の垣根を越えた生産の良い流れ作りについて考えていきたいと思います。
 良い流れを作るという点では、工場内の管理もサプライチェーン全体の管理も共通したものがありますが、企業の垣根を越えるがゆえに固有の難しさもあります。そこで今日は、サプライチェーンに関わる問題としてブルウィップ効果を紹介したいと思います。

 サプライチェーンは、直訳すると供給の連鎖ということで、原材料や部品の生産や仕入れ、製品の生産、市場での販売まで含めた物作りの上流から下流に至る流れ全体を意味します。サプライチェーンには原材料メーカーや部品メーカー、完成品メーカー、商社、卸売業者、小売業者、物流業者など様々な企業が関わってきます。サプライチェーン・マネジメントは、この上流から下流までの流れを企業の垣根を越えて一元的に管理する仕組みや管理活動のことを指します。
 サプライチェーン・マネジメントには、いわゆるブルウィップ効果という課題が出てきます。ブルというのは牛のことです。それにウィップというのは鞭のことです。長い牛革の鞭を打つと先端が大きくしなります。サプライチェーンでも同じことが起こるということが知られています。

 サプライチェーンでは、物の生産が上流の原材料から部品生産、完成品を経て、卸売、小売という最下流の市場に届けられていきます。これを逆に見ますと、お客さんからの注文は、小売、店舗、卸売、完成品メーカー、部品メーカー、原材料メーカーという具合にサプライチェーンを反対向きに遡っていきます。一番下流に位置するお客さんからの注文は日々変化しますが、店舗やメーカーはこのような変動に応えるために需要を予測しながらメーカーへの発注量や工場の生産量を調整していきます。
 この時に需要が増えると予想されると、店舗の側では卸売への発注量を増やします。卸売業者は、小売業からの実際の注文に少し余裕を持たせてメーカーに発注を出します。この発注を受けたメーカーは卸売からの注文に対して少し余裕を持たせて生産計画を立てて、部品メーカーに発注します。このようにサプライチェーンの各段階で、実際の注文に少し上乗せする形で発注量が決められていくことがよくあります。増えていくと鞭を振ったようにどんどん上流に行くほど発注量が大きくぶれていくわけです。これをブルウィップ効果と言います。

 ブルウィップ効果が大きくなるのは、第一に、発注が需要予測に基づいてなされる場合です。第二に、需要予測の誤差が大きい場合、さらに第三に、発注をかけても納品までに時間がかかる場合には、品切れのリスクが増えるので余裕をもって多めに発注をするということがよく生じます。逆に、需要が減少する局面では、このサプライチェーンの各段階で過剰在庫を抑える為に川上への発注量を極端に絞るということが起きます。このように最終顧客からの発注が少し増減するだけで、サプライチェーンの各段階で発注量の変動が増幅されながら伝わっていくことを、鞭を振る様子に例えてブルウィップ効果と言います。
 ブルウィップ効果はないに越したことはありません。ブルウィップ効果があると極端に生産が増えたり逆に減ったりして生産管理が非常に難しくなります。生産活動が不安定になると、生産効率も落ち、コストアップにつながる可能性が出てきます。

 今日のまとめです。サプライチェーン・マネジメントとは原材料、部品の仕入れから製品の生産、流通、販売までの供給の連鎖を企業の垣根を越えて一元管理する仕組みのことを言います。サプライチェーン・マネジメントは企業の垣根を越えた生産の流れ作りであるがゆえの難しさがあります。その代表例がブルウィップ効果というものです。サプライチェーンを需要情報が遡る過程で発注の増減が増幅される効果のことです。ブルウィップ効果が発生すると完成品や原材料の生産段階で注文量が大きく変動し、安定的で効率的な生産管理を妨げる原因となります。このブルウィップ効果をいかに抑えるかが効果的なサプライチェーン・マネジメントの重要課題の一つと言えます。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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