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老後にかかるお金

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

18/01/09

今回は、普通のサラリーマンの老後にかかるお金の話をします。

老後資金は、夫婦二人で1億円だとよく言われます。そんなにかかるのかと思う人も多いと思いますが、それは間違いではありません。60歳女性の平均余命は29年ですから、平均より少し長く92歳まで32年間生きるとします。夫婦で毎月25万円かかるとして、60歳から92歳まで暮らせば9600万円必要です。万が一の時のために400万円手元に置いておくとすれば、1億円になります。みなさんの多くは1億円も持っていないと思いますので、不安に思っているかも知れませんが、大丈夫です。今の高齢者の多くは何とか暮らしています。彼らが現役サラリーマンだったときに1億円持っていたはずはありません。それを考えれば、普通の現役サラリーマンは、心配することは無いのです。サラリーマンは年金が比較的充実し、退職金も出ますので、現役時代の終わり頃で金融資産と負債が見合っていれば、最低限の一安心だと考えて良いです。定年の直前に、住宅ローンの残りが金融資産額の範囲内ならば大丈夫です。

60歳で定年退職し、退職金を受け取ります。統計によれば、退職金は2000万円程度受け取れるとされていますので、現役時代に資産と負債が見合っていたならば、2000万円の金融資産を持っていることになります。退職金2000万円というのは少し甘すぎるような気がしますが、ここでは親からの遺産も少しはもらえて、退職金と遺産との合計で2000万円と考えることにします。標準的なサラリーマンは、65歳から年金が受け取れます。退職後も65歳までは何とか働いて生活費を稼いでください。幸い、少子高齢化による労働力不足ですので高齢者でも比較的容易に仕事が見つかると思います。

65歳からは、標準的なサラリーマン夫婦は、2人合計で毎月22万円程度の年金が受け取れるので、年金だけでも何とか暮らせると思いますが、毎月3万円ずつ不足する分だけ老後の蓄えを取り崩していくとして、92歳までで1000万円ほどになります。万が一の場合に備えて手元に数百万円持っておくとすると、合計必要資金は1500万円程度と思います。少子高齢化で将来の年金支給額が減額されていく可能性が高いことを考えると、今少し余裕を持って2000万円くらい用意したいです。

今ひとつ、年金の受取開始を70歳まで待つという選択肢もあります。65歳から70歳までの生活費は、毎月25万円とすると1500万円必要です。70歳時点で手元に残っている500万円は、万が一の時のために保持しておいてください。年金の受取開始を70歳まで待つと、毎回の受取額が42%増えますので、22万円の1.42倍あれば余裕です。もっとも、これも将来の年金減額に備えて、受け取った年金の一部を貯金しておくといったことは心掛けたいです。

退職金をもらったら、老後のために運用しようと考える人も多いと思いますので、老後資金の運用に関する心構えについても、御話しします。老後資産を運用する際には、リスクを避ける事が重要です。儲けようと思えば、リスクを覚悟しなければなりませんが、大事な老後資産の運用に失敗すれば悲惨な老後が待っています。それなら全額を現金か銀行預金で持っていれば良いかというと、そのようなことはありません。現金や預金は減りませんが、インフレになると目減りします。預金の金額自体は減らなくても、インフレになると同じ金額で買える物が減るので、老後の生活水準が落ちてしまいます。一方、株や米ドルは値下がりリスクがありますが、インフレには強い資産とされています。物価が2倍になれば株価やドルが2倍になるというほどはっきりした関係ではありませんが、インフレになった時には株や米ドルも値上がりしている可能性が高いということは言えそうです。このような時には、現金も株もドルも少しずつ持つという分散投資が「安全かつ安心」です。どれか1つだけを大量に持っていると大損するリスクを抱えますが、3つに分けて持っていると3つとも値下がりして大損するという可能性が小さいです。また、タイミングも重要です。多額の株やドルを1度に買うと、たまたまその日が高値だったという可能性がありますので、時間をかけて少しずつ買っていくという「時間分散投資」が安心と思います。

株式投資などに不慣れな場合は、とりあえず毎月一定額の投資信託をコツコツ購入していくということで良いと思います。投資信託にも色々ありますが、1番わかりやすいのは、日経平均株価に連動するものやアメリカの株価に連動するものなどと思います。初心者は儲けようと思って欲を出すと損しますので、くれぐれも欲を出さずに淡々と投資を続けて下さい。初心者ほど株価が上がると買いたくなり、下がると売りたくなり、結局高値で買って安値で売る人が多いので気をつけて下さい。その際、投資優遇税制があるので、これも活用出来れば良いです。NISAやiDeCoといった所が代表的ですので、投資を始める前に調べてみるといいと思います。

今日のまとめです。老後の生活資金は夫婦合わせて1億円必用だと言われていますが、普通のサラリーマンは、退職直前に住宅ローンが残ります。金融資産残高が多ければ、とりあえず何とかなりそうだと考えて良いと思います。

分野: |スピーカー: 塚崎公義

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