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企業変革の難所を「社会心理学のサイエンス」で乗り切る⑤社会的証明

芹沢宗一郎 組織・リーダーシップ研究

17/10/20

「企業変革の難所を社会心理学のサイエンスで乗り越えよう」というシリーズでお話しています。これまで、第一の難所「なぜ、今会社が変わらないといけないのか」、第二の難所「なぜ、自分が変わらないといけないのか」の乗り越え方についてお話ししてきました。今日は、第三の難所「具体的にどう変わったらいいのか。どう行動したらいいのか」について考えていきます。

「変わる」ためには、これまでと違うこと、これまでと違う考え方をする必要があります。「違う行動」とは、具体的にどういう行動をしないといけないのでしょうか。この難所を乗り越えるために、2つの原理、「社会的証明」と「権威」をご紹介します。

まず「社会的証明」からお話しましょう。「社会的証明」とは、人は他人の行動を真似する傾向があるという人間の心理を指します。例えば、あるサービスや商品のクチコミサイトがありますが、多くの人が「この商品が良い」「これは好き」などと評価していると、その意見に影響されて自分も買いたくなってしまうということがあります。この人間の心理を「社会的証明」と言います。いわゆる「集団真理」のようなものです。スクランブル交差点で、信号が青に変わって一番に交差点の真ん中に行き、そこで空を見上げると他の人はどういう反応をするでしょうか。皆さん思わず一緒に空を見上げてしまうでしょう。これも実は「社会的証明」の1つだと言われています。何かを見ている人がいたら「何があるんだろう?」と自分も見てしまうでしょう。

企業変革を推進する際には、この心理を利用して小さくてもいいので早く成果を出してそれを組織内に共有することが大切だと言われています。「早く成果を共有する」というのは、まさに社会的証明の効果を期待してのことです。誰かが新しい動き方でうまくいった事例を組織の中に共有することによって、自分達も出来る、自分達もやりたいなという気持ちにさせることが狙いです。一方で、変革期には「早く」よい成果を共有しないとネガティブな情報の方が組織の中で流通するということが証明されています。そのため、そうならないように小さくてもいいのでポジティブな事例を共有すること、小さくてもいいので誰かが成功事例を作る必要があります。

さらに、「社会的証明」をより効果的に活用するための方法が様々な実験で明らかになっています。
たとえば、「自分と似ているタイプ」、「自分と類似性がある人」が実際に行った行動の方が、そうでない人が行った行動よりも「社会的証明」の影響を受けやすいと言われています。ですから、効果的に使うためには、その点も意識しながら手を打っていく必要があります。

次に、2つ目の原理「権威」についてお話しします。
これはどういうものかというと、人間は専門家の指示に従おうとする傾向があるということです。今の時代は変化が激しく、多様性も広がっていて、専門性も深くなっています。つまり、自分の知っていることが非常に少ない時代になっています。そうすると、人々は専門家の意見の影響を受けやすくなります。組織のメンバーの意識を変えていくために、この原理を利用する理由がここにあります。例えば、専門家の話を聞く場を設けたり、セミナーを開いたりすることで、社員1人1人の意識に働きかけることができます。これに関連する非常に興味深い実験もあります。専門家の中でもその専門領域において自信がありそうな人ほど影響力がありそうに思いますが、必ずしもそういう結果にはなっていません。今の時代は変化が激しく、「今正しいことが絶対ではない」という時代です。そのため、最も自信のありそうな物言いをする専門家よりは、自分自身も確信を持てていないということを正直に自分から言えるような専門家の方が、説得力があるという実験結果もあります。

では、今日のまとめです。
企業変革の難所の3つ目として、「自分はどう動いたらいいのか分からない」という問題があります。これを乗り越えるために「社会的証明」と「権威」という原理を活用してみようというお話でした。

分野: リーダーシップ |スピーカー: 芹沢宗一郎

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