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トランプ体制の動揺

村藤功 企業財務 M&A

17/09/27

今日はトランプ体制の動揺の話をしたいと思います。以前に、トランプ体制がなかなか出来上がらないという話をしました。議会で承認を貰わないといけない人事の指名をまだ半分もしていないし、議会の承認に至ってはまだ10%もしていません。人事が全然進まないのに、最初に任命した人たちがすごい勢いで辞めるという状況です。一番最初に、首席補佐官にプリーバス氏を指名し、首席戦略官にバノン氏を指名しました。首席補佐官ってアメリカのNo.2ですよ。そのプリーバス氏が辞めて今はジョン・ケリー氏に替わりました。バノン氏が差別主義とか保護主義とかアメリカ・ファーストの色々なアイデアを吹き込んでいるのではないのかという疑惑があり、あまりにバノン氏と他の人がもめるので、ついにバノン氏は首席戦略官を辞めることになりました。

スパイサー報道官が頑張っていたのですけれど、ある日、スカラムチ広報部長というポジションが出来てしまいました。スパイサー氏は「俺はどうなる」と言って、怒って辞めてしまった。この様に、とても重要な人たちがトランプ体制の出来上がる前に辞めていきます。コーン国家経済会議委員長とかセッションズ司法長官とか、プライス厚生長官はまだいるのですけれど、時間の問題で辞めちゃうのではないかみたいな話が流れ始めています。トランプ体制は出来上がらない内に終わるんじゃないかという疑いがちょっと最近出てきています。

これほど要人が決まらずに辞めていっている状況では、政治は上手く回りません。回る前に終わってしまうのでは、ということですね。そもそも、選挙の時に言っていた法人税を35%から15%に下げますとか、オバマケアやめますとか、これらがなかなか進んでいないわけです。35%から15%に下げると政府の税収が少なくなるので、財源を確保しないといけない。ところが、共和党が主張していた輸出するときにお金を取る案は、輸出企業に大反対されて駄目になってしまった。

オバマケアで、保険加入義務を殆どのアメリカ人に課して、保険に皆入れと言っても、日本の様に政府の保険に入るのではなく、政府の保険でも民間の保険でもいいという制度です。貧しい人には補助金を支払うという、加入義務と補助金がセットになっていて、すごくお金がかかる政策です。民主党は元々それでいいと言っていたのですが、共和党は怒っていたのです。加入義務を外し補助金は削減するというふうに言って、国が負担するお金は少なくするという代替案をトランプ大統領が出したのですが、共和党には全て無くせという人たちが結構います。しかし、民主党はオバマケアを継続したいということで、議会の承認が得られない状況です。オバマケアも輸出時の税金も駄目だということになると財源がないので、法人税を15%に下げるのは無理で20%台に下げるのがやっとで、一番中心となる経済政策が実行できないという状況です。

トランプ大統領の差別主義は皆分かっていたのですけれど、今回騒ぎになっているのは人種差別です。アメリカは人種差別がとても大変な問題になる国です。2015年にチャールストンの黒人教会で銃乱射事件があって黒人が9人射殺されました。その後、シャーロッツビルで白人至上主義団体がデモをやっているところで白人至上主義者に対する反対派と衝突があり、白人至上主義団体側の車が反対派に突入して女性が一人死亡するという事件があったのです。これに対して、トランプ大統領は両方悪いみたいなこと言ったもので、これに対してアメリカ中が怒ってしまって、民間企業やトランプの顧問だとか、共和党とか軍まで「トランプ許せん」と大合唱です。

この状況の中でこの間、最高裁判事を一人任命出来たので、最高裁が高裁の入国制限差止処分を解除することになりました。トランプ大統領の大統領令がとりあえず有効になったのです。ただし、最高裁が言っている事は今とりあえず解除するけれど、12月に口頭弁論を開いて落ち着いて考えましょうということで、12月に何が起こるか分かりません。

ところで、ダッカ(DACA)って知っていますか? これは違法に入ってきた人たちの子ども達はどうするのかという問題です。結構沢山いるんですよ。違法に入ってきた人たちの子どもも全部強制送還しろということになると、80万人くらいが対象でGDPはアメリカ全体で50兆円くらい減るというふうに言われているくらい大変なことです。そこで、オバマ大統領は大統領令で強制送還しなくてよいとしていたわけです。

トランプ大統領は、これを来年の3月以降に撤廃すると言ったのです。議会で何か法律・制度を作らないと撤廃してしまうよと言っているので、今度は議会の問題になっています。そうすると、議会がいいよと言えばアメリカから出て行けということになってしまいます。共和党の一部は違法な人たちの子どもは違法であるとして、出ていけと言っているので、そうすると80万人が強制送還、GDPが50兆円無くなるという大変なことになるわけです。

それから、環境問題も6月にパリ協定から離脱だと言って、8月に離脱通知を送ってしまったのです。ところが、パリ協定は元々通知を送ってもすぐにはやめられない仕組みになっていて、2020年11月まではやめられません。それで皆がびっくりした事は、アメリカのCO2削減目標を下げてくれれば、パリ協定からの離脱をやめるかもみたいな話になってきて、よく分からないなという状況です。

今日のまとめです。トランプ体制が動揺してきたという話ですけれど、最初に国家安全保障担当のフリン補佐官とかコミーFBI長官がいなくなったと思ったら、一番の中心だったプリーバス首席補佐官とか、バノン首席戦略官、スパイサー報道官もいなくなってしまったのです。そのような状況では人事や外交はなかなか進まないですね。公約していたオバマケアの撤廃や法人税の15%への引き下げも進んでいません。パリ協定からの離脱でEUの信頼が失われて、EUは自分で守るみたいな話になりはじめています。トランプ大統領が差別主義や保護主義であるは割と分かっていたのですが、アメリカにとって人種差別は差別主義の中でも特別なものです。大企業や共和党だけでなく軍も怒るという状況なので、本当にトランプ政権は体制が出来るまで続くのかという疑惑が最近生じ始めているという状況です。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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