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物流コスト②

星野裕志 国際経営、国際物流

17/08/09

昨日は、『物流コスト調査報告書』によれば、この10年間低下傾向にあった売上高に占める物流コスト比率が上昇して、4.97パーセントと話をしました。人件費の上昇が影響したのではないのかと指摘しました。

今日は日本の物流コストの話を続けたいと思います。日本ロジスティクスシステム協会では、毎年『物流コスト調査報告書』を発行されているので、比較をしながら定点観測ができます。昨年の日本の平均で言えば、100円の売上に対して、物流コストは4.97パーセント、つまり約5円だったということになります。

売上に占める約5パーセントが、物流コストというのは、一般的な企業の売上高経常利益率にほぼ等しいと言えます。物流コストを含めたコストを圧縮することで、さらに利益率を高めることができますし、商品の競争力を上げることができます。物流の分野には、まだその余地があると考えています。

例えば、5パーセントの内訳を見ると、その半分以上の2.77パーセントを輸送コストが占めています。輸送には、原材料の調達や社内での輸送と製品輸送が含まれていますが、やはり完成品を出荷するコストが圧倒的に高い比率を占めているので、ここが最大のターゲットになります。

具体的にはどのように、完成品の出荷に関わる輸送コストを下げることができるのかというと、多くの企業が努力していますが、貨物の積載率を高めることや輸送経路や配送頻度の見直し、あるいは物流拠点の見直しなどがあります。

積載率を高めることとは、トラック一台、コンテナ一個あたりで、少しでも多くの商品を積み込むことで、単位あたりの輸送コストを下がることが考えられます。例えば、トラックに1,000の商品を積むよりも、1,100個の商品を同時に輸送できれば、1個あたりの輸送コストを約1割下げることができますね。

あるいは、工場や配送センターから店舗への出荷の頻度や経路を見直すことで、コストを下げることなどです。コンビニエンスストアの配送の頻度と経路の見直しが、まさにそれですね。さらに地域において、物流拠点自体をどこに配置するのかによって、輸送効率を高めることも可能です。

他に物流において、輸送に次ぐコストと考えられるのは、保管の業務です。これが、0.98パーセント、約1パーセントを占めています。商品の在庫のために、物流倉庫を確保して機器を配置する費用、そこで雇用する人件費がありますし、それを管理する費用が発生します。

製造されてから販売される前の段階の商品が、一時的に倉庫に置かれるのが商品の在庫ですが、これには費用はかかっても、まったく利益を生みません。ですから、トヨタ自動車を筆頭に、少しでも無駄な在庫を減らして、さらに効率的に管理することに努力されることになります。

一方で、在庫を持たないと顧客からの要望に応えられなかったり、急な需要に応じることができなくて、ビジネスチャンスを逸する事にもなります。例えば、冷夏なのか猛暑なのかで、清涼飲料水やエアコンの売れ行きは明らかに変わってきますが、工場で生産して出荷までには時間を要します。そのために、一時的な保管が在庫になりますが、正確な予測に基づいて、適正な在庫量の見極めは、本当に難しいといえます。

最近は、ビール業界などでライバルの企業同士が、共同で商品の配送することも行われていますし、まさに大量輸送機関へのモーダル・シフトもありますが、まだまだ改善の方法はたくさんありそうです。

このようなコストを減らせれば、その分商品も安く提供できることにもなり、物流コストの削減は、企業の競争力を高めることのできる「宝の山」とも言われてきました。

今日は原材料の調達から生産、そして商品の出荷にいたるものの移動にかかわる物流コストの基本について、お話しをしてきました。最近は、人材の確保が物流コストを押し上げる要因になっていますが、今後自動化や省力化を含めて、改善に取り組むことで競争力を維持し、さらに高めることが求められています。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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