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リバース・イノベーション①

星野裕志 国際経営、国際物流

17/06/21

皆さんはボルボとジャガーという車は、どこの国のメーカーかご存知でしょうか。
ボルボと言えばもともとスエーデンのメーカーですが、2010年に中国の大連の企業に買収されていますので、中国のメーカーと言えますし、英国のジャガーも同様にインドのTATAモータ―スに2008年に買収されていますので、今やインドのメーカーと言えます。

先日新聞を読んでいましたら、ボルボの最高級セダンのS90という車種を今後中国で生産して、海外に輸出するとの話でした。高級車の中国からの輸出はまだ珍しいと思いますが、受け入れられるのかなと考えていました。今日は開発途上国発の「リバース・イノベーション」について、お話をしたいと思います。

リバース・イノベーションとは、新興国市場で開発された製品が、先進国市場に投入されるということです。ダートマス大学のビジネス・スクールであるタック・スクールオブビジネスのゴビンダラジャンとトリンブルという教授が提唱した概念で、GEのヘルスケア部門の取り組みなどを事例として取り上げられています。

それは、GEがインドの農村部向けに開発した携帯型の心電計や中国農村部向けの超音波診断装置が、その後本国のアメリカに逆輸入されて、先進国でも新たな市場を開拓しています。

リバースというのは反対にということです。従来のイノベーションといえば先進国で開発された最新の技術を使った商品を世界で展開するということでした。ところが、そうした先進国の多国籍企業の商品は、品質や機能やデザインに優れているものの価格が高すぎて、開発途上国市場ではなかなか売れないという問題がありました。

やはり購買力の低い開発途上国で受け入れられるのは、機能がシンプルで低価格であることが必須ですので、それを開発途上国で開発し、開発途上国向けだけではなく先進国にも投入するという流れができつつあります。

報道にあったボルボS90の例は、リバース・イノベーションではなく、あくまでもスエーデンで開発された車種であり、その生産を中国で行うということですが、それでも顧客が中国製の高級車を受け入れるのかという問題があります。

やはり開発途上国で開発した製品が先進国市場で受け入れられるためには、いくつかのステップがあると思います。

まずは、価格競争力のある製品の提供であり、次にニッチの市場を狙うことかと思います。開発途上国で開発され、生産された製品であり、やはり先進国の企業の商品よりもかなり安く販売されることになります。現地の企業の製品であれば、信頼性やブランド力もありませんから。

ジャガーを買収したインドの自動車メーカーのTATAモータースが、2009年に11万ルピー=当時で約22万円の自動車であるTATAナノを売り出したことがあります。助手席側のバックミラーもない、エアバッグもない、ラジオもオプションだったようですが、開発途上国でバイクに代わる足と考えれば、それはそれでニーズもあると考えられますし、一時は海外に輸出もされていたようです。昨年に販売を終了しました。

次のステップで、ニッチの市場を狙うというのは、先進国の企業があまり進出していない分野や、あっても高価格商品を狙うということです。ハイアールという白物家電から始まった中国の家電メーカーありますが、ワインクーラーという分野で高い販売シェアを獲得していました。

ワインを冷やすワインクーラーですが、ワインを家庭で飲む人たちが増えることで、自宅でワインを冷やすという市場の拡大に、うまくのったということです。この会社はそれ以前には、アメリカの大学の寮の部屋には、必ずハイアールの小型冷蔵庫と言われるくらい低価格を武器に浸透していました。低価格の商品の投入ですね。

開発途上国発のイノベーションは、日本や先進国のメーカーにとってまだ脅威と言うレベルには達していませんが、今後は低価格やさまざまなイノベーションで、ライバルになってくるかもしれません。

今日はリバース・イノベーションという考え方をご紹介しました。従来のイノベーションといえば、先進国で開発された最新の技術を使った商品を世界で展開するということでしたが、この考えはそれとは逆に、新興国市場で開発された製品や技術が、先進国市場に投入されるということです。いろいろな課題もはらんでいますので、それについては明日お話いたします。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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