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ポジティブな不安定さを作りだそう

荒木博行 戦略思考

17/02/27

  変化に強い組織の特徴は何か?どうしたら変化に強い組織を醸成できるのか?
これは、私がビジネススクールで担当している「経営戦略」という科目でよく議論になるポイントです。
ある組織では変化を察知してからの行動が極めてスピーディーで、変化を先んじて取りこんでいく。一方で、ある組織では変化の必要性は至る所で語られるもののそれが実行に至ることはなく、最終的に変化の波にのまれていく・・・。
ではこの2つの組織の違いはどこにあるのでしょうか?議論の結果として浮かび上がってくる共通項は、「不安定さとポジティブさが同居している組織」です。「不安定」と「ポジティブ」というのは一見すると相反する概念ですが、それが同時に存在している、というのがポイントです。

  では、なぜ相反する概念が同時に存在し得るのか?それを紐解いていくと、「仕掛ける」というキーワードが見えてきます。意図を持って新たなことを仕掛けていくから、結果的にやることが変わっていく=不安定になる。そして、同時に、こちらが仕掛けていくからこそ、仕事が楽しくなる=ポジティブになる、ということです。
この手の組織のメンバーに今どういう状態か尋ねてみると、「やることがころころ変わって大変です」とか、「組織が落ち着きません」といった不安定さがありつつも、それをポジティブに捉えた回答が返ってきます。その背景には、先に書いた通り、「仕掛けている」という側面があるからなのですね。この手の組織は、変化が日常イベントになっているので、何かを変えていくことに何の抵抗もありません。むしろ安定的な状態が続くと不安になる。このように「不安定をポジティブにとらえられている組織」というのは、変化の時代において健全さの証とも言えるでしょう。

  一方で、「仕掛けられた不安定さ」というのは、組織の中にネガティブな感情を生み出します。やはり、主導権を誰かに握られてしまっているので、変化に振り回されている感がある。こうなると、組織は安定を求め始めます。「不安定×ネガティブ」という組織は、根底に「安定志向」を強く求める慣性があります。したがって、トップリーダーが変化の掛け声をかけても、いざというところで「正直もうこれ以上は勘弁してください・・・」という本音が出て、動きが鈍くなる傾向にあります。
同様に、「安定×ポジティブ」という組織においても、「何も変わらないからハッピー」ということに慣れきってしまっているために、変化の必要性をどれだけ語っても、「理屈は分かるけど体がついていかない」という状況になります。「硬直化」と言ってもいいかもしれません。「入社してからずっと同じ仕事をしています」という人は、同じ仕事をひたすらやり続けているがゆえに、ビジネスには直結しない意味のない細かな違いに拘ったりします。そういうメンバーが多い組織の危険性は、言うまでもないでしょう。スポーツに例えれば、長らく運動もせず、ストレッチすらしていないような状態です。そういう人に対していきなりダッシュしろ(=環境変化に合わせて仕事を変えろ)と言っても、肉離れを起こしたり転倒したりして体を痛めてしまいます。

  冒頭に申し上げた、「不安定×ポジティブ」というのは、例えるならば常にストレッチしている状態とも言えるでしょう。日頃からストレッチをしているからこそ、いざという時にすぐにダッシュができるのです。
こういうことを考えると、組織において、「変化に先んじて意図を持って仕掛けていく」、という行動の習慣がいかに大切かが分かります。リーダーとしては、どんな些細なことでもいいので、仕掛けることの楽しさ、というものが教えられるといいですね。

分野: リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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