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質問票の作成(1)

寺﨑新一郎 経営学/マーケティング

17/01/19


前回は「データの収集」をテーマに、具体的なデータの集め方について説明しました。データの収集法は電話法、郵送法、面接法、インターネット法と色々あったかと思います。それぞれメリットとデメリットがあり、どの方法が今回の調査に適しているか、当然ですが何を調べたいのか、調査目的や質問数、予算、調査の実施期間などを吟味して、データの収集法は決められます。

さて、今回のテーマは「質問票の作成」ということで、質問票調査で何がわかるのか、質問票を作る前に行うべきことについて説明したいと思います。質問票調査というのは、例えば新製品の顧客満足度を知りたいときなどに用いられます。消費者の声を知るには身近な人に聞いてみるのも悪い方法ではないですが、質問票を使えば同じ質問を多くの回答者に尋ねることが出来るため、分析に必要なデータを集めやすいというメリットがあります。加えて回答者は無記名で回答できるため、本音を引き出しやすいというのも良いですね。インタビュー調査であれば回答者はその新製品に不満を持っていても言いづらいこともあるかと思います。また、インタビューをする人自身が望ましい回答を得るために誘導しかねなかったりするというリスクもあり、それは使えないデータになります。質問票調査であれば本音を引き出しやすいですし、統計的に仮説を検証するための多くのデータを集めることができます。また、質問票のため臨機応変な質問を投げかけることは出来ませんが、分析用のデータを得るという目的であれば、質問票調査は大変有用な方法といえます。

次に質問票を作成する前に行うべきことについて説明したいと思います。それは調査全体の流れをしっかりと組立てることです。具体的には調査目的は何か、仮説は何か、誰に対して調査をするのか、といったことを整理することが大事です。まず調査目的ですが、端的に言うと何を知りたいのかをしっかり決めることです。例えば、新しい化粧水を開発しななければならなくなったとします。そうすると色々なことを調べる必要がありますよね。例えば消費者のニーズも知りたいですし、どのくらいの価格帯の商品が売れているのかということも知りたいと思います。このように、新しい化粧品を開発するために欲しいデータは色々ありますし、その中でも今回は何を知りたいのかを決める必要があります。目的が決まったとして、次にやるべきことは仮説を立てるということです。そもそもの話ですが、質問票は仮説を検証するためのデータを集めるために作成されます。仮説がしっかりしていないと、どのような質問を尋ねるべきかというのがあいまいになってしまいます。しかも集めたデータが統計的に検証できないという問題が起こってしまいます。質問票を作るということは、その質問票で集めたデータを使ってどういう分析をするのか、そこまで見込みを立てていないと、あまり意味のないものになってしまいます。例えば化粧水を開発するといった時に、「しっとり感が高まると満足感が高まる」という仮説があるとします。これは因果関係を示した仮説になりますよね。「しっとり感が高まる」というのが原因で、結果的に「満足度が高まる」という因果関係になっています。この仮説を検証するには、例えば新しく開発する化粧水の試作品を作って消費者に使ってもらいます。そしてその後で「しっとり感は高まりましたか」という質問と、「この商品に満足していますか」という質問に答えてもらい、それらのデータを分析するとよいでしょう。

他の仮説としては、「しっとり感は20代の女性と40代の女性で異なる」という仮説もあるかもしれません。この仮説は「しっとり感の平均値に差があるかどうか」ということを検証することになります。検証への具体的なプロセスですが、例えば試作品の化粧水を20代と40代の女性に使ってもらい、「しっとり感は高まりましたか」という質問を尋ねてみます。そして、そのスコアの平均値に差があるかどうかを確かめるというやり方が考えられます。

仮説や調査目的があいまいな場合、無為なデータを集めて、結局お金も時間も無駄になってしまうことになります。したがって、根気がいることですが、仮説や調査目的を一つ一つ丁寧に掘り下げることが重要です。

それでは今日のまとめです。
今回は「質問票の作成(1)」として、質問票調査で何がわかるのか、そして質問票を作成する前に行うべきことについて説明しました。質問票の作成に当たっては、調査目的をまず明確にすることが大事です。その後、仮説を構築し質問項目を用意することになります。質問項目は仮説に沿って設けられますが、予めどのような方法でその仮説を検証するのか目星を付けておくのがポイントでしたよね。ここまでしっかり準備をしておかないと、せっかく集めたデータが無為になってしまうので、とにかく丁寧に調査を進めていくことが大切です。

分野: ビジネス統計 |スピーカー: 寺﨑新一郎

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