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トランプのショックと修正

村藤功 企業財務 M&A

16/12/09


アメリカ大統領選挙があり、皆がヒラリー氏になるかと思ったら、トランプ氏が大統領になりました。これを受けて世界の市場的にもショックを受けて株が一回下がりましたが戻ってきました。それから1回すごい円高になりましたが、それも円安に戻ってきました。トランプ氏が最初選挙で言っていたことを全部行ったら大変だと思っていましたが、結構修正しています。その意味ではどういうところを修正して、どういうところは選挙で言っていたままなのかということを知っておかないといけません。選挙について言うと、開票に時間が掛かって最終的な選挙人の数はやっと出たところですが、トランプ氏が306人選挙人を得て、ヒラリー氏が232人得ました。これからどうなるかというと、選挙人が州毎に集まり、州で勝利した候補に投票します。1月に上下両院合同会議で集計し、正副大統領を正式に選出します。そういう意味ではトランプ新大統領とペンス副大統領が就任するというのは来年の1月20日になります。まだ大統領ではありませんが、大統領になる前から我が国の安倍総理が会いに行くなど、色々なことが始まっています。トランプチームとしては4000人ある政治任用ポストをどういう人たちの体制でやっていくかという状況です。

政治的に任用するポストというのは4000人もいます。重要な色々なところのトップの人達を決めていかなければいけないというプロセスを今やっている最中です。大統領に次ぐ実質的な№2は、副大統領ではなく主席補佐官です。首席補佐官に共和党の全国委員長だったプリーバス(Reince Priebus)氏をするということを言ったのは良かったのですが、次に主席戦略官にスティーブン・バノン(Stephen Bannon)を起用すると言いました。スティーブン・バノンという人は少し問題のある人で、不法移民の強制送還やイスラム教徒の入国禁止等トランプ氏の過激発言に大きな影響を与えています。白人至上主義者と言われる人で、民主党的に言うと人種差別主義の極右であるということで人事の撤回を要求しているところです。他にもやや危ない人もいますが、割とまともな人が選ばれ始めました。上院議員のマコネル院内総務や下院議長のライアン(Paul Davis Ryan, Jr)氏あたりと、関係修復をすることにしました。とりあえず大統領と議会は仲良くやらないといけませんから。共和党との和解に伴い、4000人の人事の中に共和党の人材が山のように入り始めました。民主党のオバマ大統領やヒラリー氏などのことも、選挙中はめちゃくちゃに言っていましたが、とりあえずヒラリー氏が「負けました」と電話をしたり、オバマ大統領がトランプ氏に「あなたがうまくやってくれることがアメリカの為になります」と言ったりしたため関係は修復されました。とりあえずヒラリー氏もオバマ大統領も良い人ではないかとなり、選挙中は自分が勝ったらヒラリー氏を牢屋に放り込むというようなことを言っていたのをやめたのです。

また、トランプ氏は外交防衛関係あたりで、NATOや日米安保の悪口を言ったりしていました。さすがに共和党的に言うと、NATOは重要だろうということで、トランプ氏もNATOの悪口はかなり止めて、共和党と仲良くなるにつれてNATOの尊重と同盟関係の維持が前面に出てきました。安倍さんと会って、色々なことを言ったせいもあるのかもしれませんが、日米関係も「全部お金を払ってくれなかったら米軍は撤退だ」という選挙中の発言が無くなり、日米安保は重要だ、日本は大事だという話になっているようです。次に心配だった保護主義はどうなのかというと、これは少し微妙なところで、TPPはやはり恐れていたとおり大統領就任の当日、脱退すると言っています。TPPはアメリカが批准しないとそもそも発効しないような仕組みになっています。TPPはせっかく日本で批准してもどうも発効しない見通しになったというのが現状です。ナフタ(NAFTA:North American Free Trade Agreement)は北アメリカでアメリカがカナダやメキシコと結んでいる自由貿易協定です。メキシコはそれに乗って相当経済が成長しました。ところが、ナフタはアメリカの為にならないから再交渉だとトランプ氏が言っており、一番色々と言っているのはメキシコの話です。ナフタによってメキシコから色々なものが入ってきて、アメリカの工場がメキシコに移ってしまうのが困るというわけです。ここのところやっているのがエアコン大手のキャリアという会社です。これがメキシコに移ると1400人くらいアメリカの雇用がなくなるそうです。インディアナ州の話ですが、キャリアに会いに行って、1000人くらいは雇用を確保させたことでインディアナ州がなにかしてあげるような話になりそうです。少し心配なのは中国です。これが結構大変な話で、中国からの輸入には45%の輸入関税を課すということを選挙中に言っていましたが、45%も輸入関税を課すというのは、アメリカも中国も入っているWTO(World Trade Organization)の規則違反のため、そんなことを言ったら規則違反で訴えると中国は言っています。他の国としても45%の関税は無いだろうと思っているので、どうするつもりなのかという状況ですが、今のところ沈黙を保っていてよく分かりません。

違法移民、犯罪歴のある200万人はすぐ強制送還するし、1100万人の不法移民を全員強制送還させるという話に関しては犯罪歴のある200万人は帰すというのは言っているんですが、1100万人の不法移民を全員強制送還という話はどうも最近していません。これも20兆円くらいお金がかかる話なので、簡単ではないと思って黙っているのかなというところです。

あと財務も心配です。すでに連邦債務が20兆ドルくらいに膨らんでおり、法人税を35%から15%に減税すると言っているのですが、そうするとお金も入ってこなくなるので、どうするつもりなのかなと思っています。放っておけばアメリカの財務はさらに悪化する状況ということです。

それでは今日のまとめです。
11月8日にアメリカ大統領選挙が行われてトランプ氏が勝ち、1月に大統領に就任します。共和党幹部との関係やヒラリー氏、オバマ大統領との関係はすみやかに修復されました。NATOや日本との関係も共和党を入れる以上維持されて、中南米、イスラム教徒に対する差別主義的政策も現実的なものしか出来なくなるということだと思います。ただ、幹部人事や財務やTPP、ロシアとの外交、中東等の懸念材料は相当大きいと言えます。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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